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第三十三話 つながるカケラ~そして合わさる時、閃光は走る~

「ふう・・・」



 俺は部室のイスにドスンと音を立てて腰をおろす。やれやれ、今日の昼休みはひどい目に遭った。



部室には、もう既にほかのメンバーが俺より先に来ており、なんでかは知らないが、ほかのメンバーは日直だった俺をわざわざ待っててくれてた。やれやれ、ただでさえブルーな気持ちだってのに、ドアを開けた瞬間目に入る物は工藤のいつもどうりの笑顔。俺はさらにブルーな気持ちになっていた。頼む工藤、ドアの向いに陣取るのはやめてくれ。じゃないと俺のテンションがどんどん下がってく・・・



「いや~しかし、今日も一之瀬さんがやらかしてくれたそうですね」



工藤がニコニコした顔で話す。まあこいつはいつでもニコニコしてんだが、その話の口調で俺のしでかした騒動をおもしろがってるのがわかる。嫌な奴だ。



「しかたねえだろ。あのままじゃあ篠宮さんが可哀相だったし」



 あれだけ先輩に囲まれたら、その迫力に篠宮さんじゃなくても戸惑うものだ。それに篠宮さんはどちらかというと控えめな方だし、あのまま放置していたらあることないこと押し付けられそうだったし。少しぐらいはおせっかいを焼いてもいいだろう。そもそもこうなったのも俺の責任でもあるし。



「しかしまあ、あの千堂にかみつくとはね~。さすが蓮、お前は立派なトラブルメーカーだぜ」



健がイスに背中をもたれながら言う。なにがトラブルメーカーだ。俺だって普通に暮らせることを祈ってるさ。ただ俺の目の前にそのトラブルの元が次々と現れるんだから仕方ないんだよ。俺がトラブルを起こしてるんじゃない、トラブルの方が勝手に俺に近づいてくるんだ。




・・・とまあ自分に対する言い訳はそれぐらいにしておこう。実際そうでもしないとやってられないからな、こんな生活。




とりあえず今の疑問はあの千堂についてだ。




 今のところわかってるのは、ファンクラブの会長であり、次期生徒会長(あくまで候補だが)であり、千堂グループとかいうもののご令嬢であり、そして玲の幼馴染み、というところか。




ふむ、情報が幅広すぎてわかんねー(笑)全く千堂という存在の人柄がつかめない。そのためには、その中の情報について、よく知る必要があるか。



まあとりあえず、その千堂グループとかいうものについて尋ねてみるか。



同級生らしき人物から「様」扱いされるぐらいだから相当なものなのだろう。とりあえずはそこから聞いてみるか。



「あのさ、千堂グループってそんなに凄いの??」



俺は素直に自分の疑問を投げかけてみる。



「おや、これは驚きですね。この世界に千堂グループの名を知らない人がいるとは」



あきらかにバカにするような口調で工藤が俺に話す。くそっでも仕方ない。知らないものは事実なんだからここは我慢だ。そういえばこの世界にはそういう言葉があったな。え~と前の国語の時間に習ったんだけど、聞くのは百閒にしかず。あれ?なんか違うな。聞くのは油をそそぐ・・・え~いわからん!もういい!!とにかくこのことを聞かなきゃ始まらねえんだ!!



「すんませんね。どうにも学校外の情報には疎い者なんで」




「ふむ、まあいいでしょう。私がご説明しましょう」




そう言って、工藤は部室にあるホワイトボードを取り出し、マジックペンでなにやら書き出す。



「この世界のあらゆる面で中心的存在であるのがこの千堂グループです。たとえば、このペンやホワイトボードなどの日用品もそうですし、車や鉄道、建設業、飛行機会社、そして宇宙産業などなど、まあいってみればあらゆる面でこの千堂グループの系列の会社が関わっており、いわゆるトップ企業ということですね。その力はこの国の政界にも影響を及ぼし、政界の裏に千堂あり、といわれるぐらいに、言ってみればこの国の裏番長的存在なんですよ」



そう言って工藤はペンを置く。俺はただ工藤の書いた中心に千堂と書かれた円から色々なものにそこから線が伸びている絵を見つめていた。え~と要するに、この千堂グループとかいうのは、この国の裏番長的な存在であり、あらゆる面でその千堂グループが関わっている、ということか。




「ちなみにこの学校をつくったのも、あの千堂先輩のお父さんでそのお父さんは千堂グループの最高責任者であり、この学校の理事長でもあるのよ」




「へえ・・・て、えええー!!!」




このクソでかい学校を建てたのがあいつのお父さん!?



なんだか一番わかりやすい例えだ。この学校を建てたのが千堂グループ。それだけで充分そのグループの凄さがわかるな。この学校の凄さはもう充分知ってるし。思っていた以上に、千堂グループの存在は大きいものだったらしい。




「まあでも、当の本人はそのことを言われるのがあんまり気に入らないらしいわね」




「へえ~」




そういえばあの時も、とりまきに千堂グループの名を出されることを嫌っていたみたいだし。それは本当のことなんだろう。あんなに本気で怒るのは、相当そのことをコンプレックスにしている証拠だ。



「まあ、金持ちの奴だけが抱える悩み、ってやつだな」



そう言って健は自分の前にあるコップのお茶をすする。千堂グループがすごいのはわかった。だけど、もうひとつ気になることがある。



「そういえば、あの千堂先輩と玲って小学校が同じだったんだよな。それにしてはなんか感じが変だったけどなんかあったの??」




俺がそう言った瞬間




(あ、あれ?)




突然部屋の空気が変わった。一転してなんか気まずい雰囲気になる。あれ、もしかして聞いちゃいけなかった?



「それは・・・」



玲がしゃべりだした瞬間



「まあいいじゃないですか。人にはそれぞれ事情というものがあるわけですし」



突然工藤が口を挟む。



「あなたにもあるでしょ。そういう言いたくない事情というのは」




「まあ、そうだけど・・・」



確かに、工藤の言うとおり言いたくないことを無理やり聞くのはよくないな。それに別に必ずしもそのことを俺が知らなきゃいけない、という感じでもなさそうだしな。



「それはいいとして。一之瀬さん、あなたに一つ忠告しておきます」



突然工藤が目つきを鋭くして俺に言う。



「な、なんだよ・・・」




「あの千堂 由佳里という人物に、あなたはあまり関わらない方がいいですよ。まあ無理にとは言いませんが」




突然の工藤の忠告。それはあの千堂に俺はあまり関わらない方がいいという忠告。しかし突然そんなことを言われても、なにがなんだかわからない。だがしかし、それを聞くのはなんだか許されないような雰囲気が工藤から漂っていた。ここは素直に従ったほうがよさそうだ。



「わかったよ。なんでかは聞かないが、どっちにしたってあんなことがあったんだ。あっちも俺に近づくことはないだろうよ」



そう言って俺はやかんに手を伸ばす。



「そうですか。それはよかったです。では話は変わるんですが、これ、あなたに必要な物なんじゃないですか?」



俺は工藤が手に持つものを見て、やかんに伸ばす手が止まる。




「それは・・・」




工藤が手に持つもの、それは・・・



「ええ、なにかのカケラのようなんですが。これと同じようなものを、一之瀬さんが持っていたような気がしたもので」




工藤がもつもの、それは青白くこちらを惑わすような怪しい光とオーラを放つ一つのカケラ。そう、ウィスパーを倒した時にもあったカケラ。「ソラノカケラ」だ。



「お前、それをどこで・・・」



俺は思わずそのカケラを見て工藤に尋ねる。




「これですか?これはあのアビシオンとかいうターゲットが消滅したところに落ちていたんです。しかし一之瀬さんはあの後意識を失ってしまったので、自分がそれを拾ってあなたに後ほど渡そうと思っていたんですが・・・」




そう言って工藤はそのカケラを俺に手渡す。カケラは俺の手の中で青白く、そして不気味に光り続けている。



「なんなんだ、それ?」



健が不思議そうに俺の持つカケラを見つめる。そうか、健達はこのカケラのことを知らないのか。



てっきりみんなこのカケラのことを知っているものとばかり思っていたが、みんなの反応を見る限り、どうやらそうではないらしい。



「なんだか不思議な光ね。でもなんだか少し不気味な気もするけど。それに形も変だし」




その時、俺は玲の言葉であることを思いつく。




「玲、そこにある箱をとってくれないか?」




「え、ああ別に良いけど・・・」



そう言って玲は俺のイスの後ろにある、黒色の四角い箱を取って俺に手渡す。




「・・・やっぱり」




俺はその箱を開けて、自分の思っていたことが現実であることを確信する。前のウィスパーを倒した時に現れたカケラを、俺はその黒い箱に大切にしまっていた。この箱は、この世界に来る前に親父から手渡されたもので、手に入れたカケラはこの箱に入れるように言われていた。それがなぜだかは知らないけど。



「どうしたの?蓮君」



そう言って玲は俺の持つ黒い箱を覗く。




「これは・・・それと同じカケラ・・・?」




「そうなんだ。これはあのウィスパーを倒した時に手に入れたカケラなんだ。そしてこのカケラ・・・こうしてみると・・・」




俺はそのカケラを片方の手で取り、先ほど工藤に手渡されたカケラをもう片方で取って近づける。




「・・・まさか!?」




「そう。このカケラ、こうすると一つのカケラとしてつながるんだよ」



互いに青白い光を放つ二つのカケラ。そのどちらのカケラも、特殊な形をしていたが、その二つのカケラの両片を合わせると、なんとピッタリと合わさったのだ。




そして俺が二つのカケラをつなげた瞬間




「!?これは・・・」




突如強い閃光がこのカケラから走り、そして・・・




「蓮君!?」




その光は俺を包み込み、そして俺は意識を失った。








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