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第二十一話 目覚め~友情、そして衝撃の真実~

「・・・んん、ん~」




 俺は目覚めた。俺の眼に映っているのは素っ気ない白色で塗られたどこにでもある天井。そして俺の右には大きい窓。それにかかる純白のカーテン。あれ、前にもこんな光景をみたような・・・




ふと、誰かの気配を感じた。俺がそちらに視線を移すと、そこには伊集院さんがイスに座りながら眠っていた。すうすうとかわいい寝息を立てて。



手にはページが開いたままの本、そしてしおりがはさまれている。どうやら本を読んでいる途中で眠ってしまったようだ。



「伊集院さん?」




俺は伊集院さんに声をかけた。起こすのは悪いと思ったが、このまま寝ていれば風邪をひきそうだった。それに結構無理な体勢で寝ているし、体にもよくないと思った。



「・・・んん」



伊集院さんが目を覚ます。そしてゆっくりと重いまぶたを開けてこちらに視線をむける。




「・・・あ、起きたの?」




伊集院さんは大きくあくびした後、ぐ~と背伸びしてからそう俺に声をかける。




「ああ。なんだかすごく体が重いな。俺、どれくらい寝てたの?」



伊集院さんに尋ねる。起きたには起きたがものすごく体が重い。まるで体に鉛が付いているようだ。




「・・・8時間42分53秒」




「え、あ、そう・・・」




突然時間を聞いて秒まで答えられるといささか対応しにくい。しかしそこまで詳しくわかるとは。伊集院さんらしいといえばらしいけどさすがにそれは・・・




いや待てよ。もしかして伊集院さんは・・・




「もしかしてずっと俺を看てたの?」



俺は伊集院さんに聞いてみた。




「そうだけど。なにか悪かった?」




伊集院さんがきょとんとした顔で俺に答える。しかしまさか本当に8時間も俺の傍にいてくれてたとは。しかもおそらくずっとあのイスに座りながら。俺は申し訳ないような感じがしてきた。



「あの、伊集院さん・・・」




「今みんなを呼んでくる」




俺の話を聞く前に伊集院さんはそう言ってこの部屋を出て行った。





 俺はこの部屋で一人きりになった。丁度いい、少し今の状況を把握する必要がある。



そう思って俺は少しずつ記憶を辿っていく。




「たしか・・・俺は玲達をかばって・・・」




俺は自分の体に目をむける。そして胸を手でさする。




「傷がない・・・」




俺の体には傷一つ付いていなかった。確かにアビシオンの攻撃を俺は受けたはずだ。だが俺の体にはその傷跡がない。




ふと、俺は部屋にある一冊の本に目が行く。伊集院さんが置いていった本だ。その本には赤いしおりが挟まっている。しかしその本の表紙は結構しわしわになっており、ところどころの絵がはげている。かなり読み込んでいる本のようだ。



そんな本の題名に、俺は目を奪われていた。




「一人ぼっちの天使」




本にはそう書かれていた。




「天使・・・」




俺はその文字で思い出した。俺は意識の無い中で、天使に出会ったんだ。




その時の記憶が鮮明に俺の頭の中で映し出される。




「本当の俺自身、か・・・」




その時に天使に言われた言葉。その言葉が俺の記憶の中に特に鮮明に残っている。本当の俺自身。それを探すのが俺の使命であると、天使は俺に告げた。本当の俺自身、それは一体なんなんだろうか?



そうこう考えている時に、部屋のドアが開く。



「蓮、大丈夫か!!」



初めに健の声が聞こえた。そしてその後にみんなが続く。




「何時間も意識を失っていたんですから大丈夫なわけないじゃないですか」




「・・・・・・」




あいかわらず伊集院さんは無言だ。いつもどうりの光景、だと思ったがなにかが足りない。



「・・・・・・」



「玲、さっきからどうしたんだ?」




そうだ、玲の声が足りていないんだ。いつもなら健が話した次に声を上げるのに、今の玲はずっとうつむいたままだった。どうしたのだろう。俺が寝ている間に何かあったのだろうか。



そんなことを考えていると、健が俺に近づいてくる。




「ごめん!!!」




いきなりの健の最初の一言。それは俺に対する謝罪の言葉だった。しかし健が俺に謝罪することなんてあったか?




「どうしたんだよ突然?」




俺はずっと俺に頭を下げている健に声をかける。




「本当にごめん!!」



それでも健は顔を上げない。ずっと俺に頭を下げている。俺はそんな健が見たくなくて、もう一度健に喋りかける。



「だからなんなんだよ急に」




するとようやく健が顔を上げた。そしてすぐに話しだす。




「俺はお前に最悪なことを言った。そしてお前を犠牲にしてしまった」




そう言って健は顔を赤くする。目にはうっすらと涙が浮かんでいる。




「最悪なことってなんだ??」




俺は健に聞き返す。




「俺はお前を俺達とは違う世界に住む奴だだなんて言ってしまった。ランクで区別されるのが嫌だったのに、俺がお前をランクで区別してしまった。そして傷つけてしまった。俺は最低だ。最低なドラゴンだ。許してくれなんていわない。ただ俺はお前に謝りたい。ただの俺の自己満足かもしれない。だけどお前に謝りたかったんだ」



そう言って健は肩を震わせる。健の言っているのは俺が健達をかばう前のことを言っているようだ。たしかに俺はあの時疎外感を覚えた。だけどそんなことはどうでもよかった。ただあいつらを守りたい、それだけをあの時考えていた。ランクのことなんてどうでもいい。むしろそのことで健達が傷ついていたことに気付けなかった自分が歯がゆかった。




俺は一度息をはいてから健にもう一度声をかける。




「気にしてないよ。なにも。それにこうしてまた健と話せたことが俺は一番嬉しいよ。あの時もしお前たちまで犠牲になっていたら俺はもう一生立ち直れなかっただろうしな」



そう言って俺は健に笑顔を見せる。




「それじゃあ・・・俺はまたお前と一緒にいていいのか?お前のことを裏切ったこの俺が、お前の傍にいていいのか??」





「良いにきまってるだろ。それにいつお前が俺を裏切ったんだ?こちらこそこれからも頼んだぜ、親友!」



そういって俺は健の肩を叩いた。健の肩の震えが少しずつ大きくなっていく。そして大粒の涙をこぼす。だけどそれはさっきとは違い嬉し涙だった。目から涙が次々とこぼれるが、健の顔は、澄み切った笑顔だった。




「ありがとう・・・ありがとう蓮・・・」




健はそう言って手で自分の涙を拭うと、また笑顔を俺に見せた。いつもの健だった。





そしてこの感動的な場面で素晴らしく、そして計ったようなタイミングで工藤が口を挟む。




「いやあ~よかったよかった。友情を回復できてなによりです」




まあいつものことではあるけど、さすがにこの場面で工藤の声は聞きたくなかった。素直にこの場の空気に浸っていたかった。さすがは工藤。これはあっぱれというしかない。




「そんな中悪いのですが・・・」




そう言って工藤がみんなに話しかける。




「ようやく尻尾がつかめました」




工藤はそう言って、さきほどとは一転して鋭い目つきになる。




「尻尾ってなんの?」




「今それを説明します」




そう言って工藤は机の近くにあったイスに座る。みんなの視線が工藤に集まる。




そして一呼吸置いてから工藤が話し出す。




「荒木先生がアビシオンであるということが判明しました」





その工藤の一言に、この部屋の空気が一転して張りつめた。








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