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第十五話 ファーストコンタクト~募る疑問と新情報~

 今日から、数学の荒木先生の調査、というより監視が始まった。


とりあえず今は荒木先生の一日の行動パターンを分析するということから始めている。クラスも丁度いい具合に二つに分かれているから、俺、玲、健と工藤、伊集院さんの二つのグループに分かれて調査することになった。俺たちは荒木先生本人を、そしてあっちはそれに関する聞き込みだ。



「しっかしこんないい先生が魔族とは思えないけどな~」



健が愚痴をこぼす。確かに今朝からの行動を見てもなんら異常はない。登校途中でも生徒から挨拶(女子が非常に多い)があれば普通に返すし、授業中でも時折ジョークを交えながら授業を進めてそれでいて教え方もうまい・・・なんかむしろ良いところばっかりなんだけど。



「こんな一般の生徒が大勢いる中でそんな魔力を使うわけないでしょ。今はこうして地道に下調べをして、それからの対策でしょ」



「そんなことわかってるよ。でも面倒くせ~な~。なあ蓮?」




「まあ確かにな。今んところな~んにも起きないしな」



「ちょっと蓮君までどうしたのよ?」




後ろの席にいる二人としゃべっていると、荒木先生がこちらに視線を向けていることに気付く。



「こら、そこの三人。授業中にぺちゃくちゃ喋らない」



途端に注意をされる。まあさっきから授業そっちのけで喋ってたから当然のことなんだけど。



「そんなに喋りたいなら問題を解いてもらおうか。じゃあ一之瀬、P23の問5を解いてみろ」



いきなり問題を当てられる。しかしさっきまで喋ってて授業を聞いていなかったから問題がわからない・・・と思ったがあれなんでだろ?解けるぞこれ。



「え~と答えはx=7、y=12です」



「ほう、正解だ。やるじゃないか」



オオ~と教室から歓声があがる。なんでかはわからないけど人間界の勉強ってのは意外と理解できる。



「さすが蓮。秀才だねえ~」



「ホント。普段から勉強してるの?」



「いや別に・・・」



基本的に学校以外で勉強なんてしていない。まあドラゴンだしいくら勉強したって、その先を目指すってことはないから意味もないし。わかるものは仕方がないって感じだ。



キーンコーンカーンコーン



授業の終業のチャイムだ。



「じゃあ今日はここまで。問6,7を宿題にだしとくから忘れずにやっておくように」



その瞬間え~という声が沸き起こる。



「大丈夫、お前らならちゃちゃっと終わるから。あ、後、一之瀬ちょっと職員室に来てくれ」



「え、あ、はい」



突然の呼び出し。



「なんだなんだ?お前なんかやらかしたのか?」



「いや別にそんな覚えはないけど」



実際全く記憶にない。そもそも荒木先生とほとんど喋ったこともないし。何で呼び出しを食らったのかは全くわからない。



「まあとりあえず行ってくるわ」



そう言って俺は職員室を目指した。




 

 この学校は相当な進学校でもあるから先生方も結構厳しい人が多い。それゆえにそういう先生方に比べると気さくな荒木先生は人気があるんだろう。



とはいえ職員室はめちゃくちゃ入りにくい。なんか中から変なオーラを感じる。でも入らないと話は始まらない。俺は意を決して職員室のドアを開ける。



「失礼します。一年A組一之瀬です。荒木先生に用があって来ました」



「おうこっちだ」



俺は声がした方向に視線を向ける。



そこにはこちらに手を振って合図している荒木先生がいた。それにその周りには、何人かの女子生徒の姿もある。



「ほら、お前たち用事が済んだらとっとと自分の教室に帰った帰った」



女子生徒「え~別にいいじゃないですか~」


      「もっと荒木先生とお話した~い」



・・・なんか悪い気がしてきた。それにそこにいる女子生徒もこちらに「空気読んでよ」みたいな視線を送ってくる。ふう~なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ?



「な~に言ってんだ。それに今から話をするのはあの一之瀬だぞ?」



女子生徒「え、一之瀬ってあの?」


      「確かあの三年の不良を瞬殺したっていう・・・」


      「まじで?じゃあこれやばいじゃん」



そして



女子生徒「じゃあ荒木先生またね~」



女子生徒たちはそそくさと職員室を後にした。



「いや~お前の名前は使えるな」



荒木先生が俺に声をかける。



「なんてったって入学してすぐに三年の不良共を倒してしまうんだからな」




「いやあれは・・・」




あれは間違いなく事故です。あの不良達には悪いことしたな~と思う。だけどあれから俺の前にはあらわれていない。それどころかあれから普通になったとかいう噂もある。結局よかったんだろうか。いやでもそのせいで学校内を歩く時、なんか変な視線を送られるし。あれはちょっと耐えがたい。前なんてちょっとぶつかっただけで「申し訳ございませんでした!許してください!!」って頭を下げられたぐらいだし。



「まあお前の評判は俺もよく耳に入ってくるよ。でもその割には、勉強はできるよな~お前。前の小テストだってお前がトップだったし」




「はあ・・・」




「まあ今回呼び出したのはその件なんだけどな。お前せっかくいい才能をもってるんだからその才能を無駄にしないようにな。最近、なんか授業中結構喋ってるし。え~と相川と柳原だったか。あの二人と仲が良いのは結構なことだがもう少し授業に集中してみたらどうだ??」





「あ、はい以後気をつけます」




しっかし真面目だ。生徒一人に対してこんなに気にかけてくれるとは。こんなに生徒を大切にしてたらそりゃあ人気もでるだろうな。一部の先生は成績のことしか考えていない先生もいるし。それに比べて荒木先生は生徒を一番に思っている。本当に良い先生だ。こんな人が魔族だなんてあの情報はなにかの間違いなんじゃないか、と思うぐらいだ。



「まあ話はそれだけだ。もう自分の教室にもどっていいぞ」



「はい、失礼します」




そして俺は職員室を後にした。





 それから今日の授業が終わるまで、荒木先生を観察していたが、なにもおかしいところはなかった。それどころかむしろすごい良い人に見えてきた。



「結局今日はなにもなかったな」



「そうね、まあそう簡単にはいかないわよね」



そして俺達は、部室に向かった。




ガチャリ



 部室のドアを開ける。



そこにはもう工藤と伊集院さんがいた。



「やあ、どうも。そちらはなにかありましたか?」



工藤が問いかける。



「いや、な~んにもなかったぜ」




「そうね、特にこれといってなにもなかったわね」



玲と健が答える。たしかに今日一日観察しても全くなにも情報は得られなかった。



「そっちはどうなんだ??」



健が工藤に問いかける。



「そうですねえ。こちらもこれといってなにも情報は得られなかったのですが、ですがさきほどおもしろい情報が情報部からはいりまして」



「おもしろい情報?」



「はい。今それをお話ししたいと思います」




「なんだなんだ?」




「いいから席に着きなさい」




そして俺達は全員席に着いた。






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