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第十四話 活動初日~意外な情報と決意~

 俺は今、文科系の部が集まっている棟目指して歩いている。



今日からDSK研究部としての活動が始まるのだ。



とはいったものの、一体何をするのか全くわからない。今はただ、DSK研究部を目指して歩くだけだ。もし行かなかったらそれこそめんどくさい事になりそうだし。



「え~と確かここだっけ・・・」



部屋のドアにはDSK研究部という名札が掲げられている。しかしDSK研究部って本当に怪しい名前だな。健が考えたとはいえこれはちょっと・・・あれだな。



部の名前なら変えればいいように思えるが、健が勝手にもう部登録を済ましてしまったようで、いまさら変えるのも面倒だということでそのままになっている。



 しかし、部登録の時どうやって部のことを説明したのだろうか。


俺達ドラゴンは、自分の正体を人間たちに知られてはいけない。もしばれれば、すぐに噂となって広まり、騒ぎになって任務に支障をきたす、ということだそうだ。まあ親父の話なんだけど。



「まあ、とりあえず入るか」



俺はドアを開けた。




 もう部屋には俺以外のドラゴン全員が集まっていた。



「遅いぞ蓮!」



「なにいってんのよ、蓮君は日直だったんだから仕方ないでしょ」



「まあまあ、せっかく集まったんだしそうカッカしなくても」



今日もいつもと変わらず淡々と会話が進む。まあ伊集院さんは相変わらず本を読んでいるだけで会話には参加していないのだけど。



「さて、では始めましょうか」



工藤がそう言って、話を始めだす。俺も急いで席に着いた。



「さっそくというか、まあ偶然にも、この集りの初日から有力な情報が情報部から寄せられています」



情報部ってなんなんだ?そんなのどこにあるんだろうか。まあ気になるところではあったが今それを聞いている暇はなさそうだ。



「情報によるとこの学校自体にも、何体かの魔族が紛れ込んでいるようです」



「え?」



話のしょっぱなから衝撃的な発言だ。この学校に魔族が紛れ込んでる。そんなことがありうるのか?もし魔族がいればここにいるだれかが気付くはずだけど。



「なんで魔族が紛れ込んでることに今まで気付かなかったのかという顔をしてますね」



「へ?」



いきなり俺の心の中を読まれる。こいつは読心術でも身につけているのか。さすがにこうも正確に当てられると少し気味が悪い。



「魔族たちは、私たちと同じように魔力を抑制しているのですよ。私たちが魔族の気配を感じるというのはその魔力を感じるということです。すなわちその魔力が抑制され確認することができなければ、魔族の存在も感知できないってことです」



「はあ・・・」



いきなり長ったらしく説明されても頭に入ってこない。まあとりあえずわかったのは、魔族たちが魔力を隠しているから見つからないってことか。そういえば確かにこの学校に入学した時も、玲が初対面なのに俺のことがわかったのは俺から魔力が放たれていたからだっけ。



そうこうしているうちに工藤が話を続ける。



「そこで今回情報が入ったのは、この学校の教師である荒木 一則先生にターゲットの疑いがあるということです」



「荒木 一則先生・・・」



荒木 一則先生というのはこの学校で数学の授業を受け持っている先生だ。俺自身も数学の授業はこの先生から教えを受けている。荒木先生は、歳も結構若く、気さくな人で教えも結構うまいという評判だ。それにスポーツも万能で、体育の授業もたまに受け持っているらしい。それゆえに、女子からの支持が物凄く、とても人気がある先生だ。その荒木先生がターゲットというのはいささか信じがたい。



「その情報は正確なのか?」



「いえ、確実というわけではありません。ですが情報部の調べによると、彼から本当に僅かですが、魔力の痕跡が確認されたということです」



「その魔力の痕跡ってどれくらい?」



「そうですねえ、人間たちに比べてほんのちょっとだけ魔力があるかなって感じです。まあ誤差の範囲といわれれば否定はできませんが」



「それだけ?」



「はい、それだけです」



その情報部がどうやって調べたのかはわからないが、それだけで疑うというのはどうにも納得がいかない。そんな僅かな痕跡なら、その情報部の調査のミスということも考えられる。大体魔族が潜入するならもっと目立たない人になりきるような気がする。荒木先生のような人気者だと目立ちすぎるような気がするんだが・・・



「ですが、そう報告があった以上、こちらも調査をしなければなりません。現状、我々は情報部の情報を頼る以外、こちらが魔族を確認するのは難しいですから」



「じゃあ前のあの時は?」



前に襲撃してきたウィスパーに対してはみんな瞬時にその気配を感知していた。



「あれは特殊な例です。あれはあっちからもろにこっちを襲ってきたんですから、魔力もなにも隠していません。ですから感知できたのです。さきほどもいいましたが魔力を隠された以上、こちらはなにも感知することができないんですよ」



確かに、あの時はモロに襲撃してきた。だが、今回はもうすでにこちらの領域に侵入している。だからわからない。だがそうするとどうやってそれを確認するんだ??



「じゃあどうやって調査するんだ??」



工藤に問いかける。



「そうですねえ、まずは彼の行動パターンを調べることが先決ですね。それから彼を監視し、僅かでも魔力を感じればそれに対処する、という感じですかね」



なんだそりゃ、それじゃあ刑事が犯人を捕まえるために監視しているようなものじゃないか。それをあの荒木先生に対してするのはいささか失礼、というか気付かれるような気がするんだけど。それにもし違ったらこちらの正体がばれてしまうことにもなりかねないし。



「本当にするのか??」



「当然です」



工藤はきっぱりと答えた。ここまできっぱりといわれるとこちらはなにも言えなくなる。



「一つ一之瀬さんに忠告しておきますが、少し前に戦ったウィスパーとやらはターゲットの中でも一番力が弱いターゲットだと思います。ですが今回は、ほぼ完全に魔力の気配を消している。つまり相当手慣れているターゲットです。油断すればこちらがやられますよ?」



あのウィスパーはターゲットの中で一番弱い・・・



俺はその言葉が頭に響いていた。



俺からすればウィスパーはめちゃくちゃ強かった。ほかの取り巻きとは比べ物にならないくらいの魔力の持ち主だった。現に、俺は全く歯が立たなかった。あいつを倒したのはもう一人の俺、つまり今の俺では敵わない相手だった。それよりも強いとなったらどんだけ強いんだか・・・



俺は想像するだけでも恐怖を感じた。



「では、今日はこの辺で。明日からよろしくお願いします」



「しゃあねえな、めんどいけどやるか!」



「そうね。それが私たちの使命なんだし、それに私たちがやらなくて誰がやるって話よ」



「・・・・・・」



そして今日の部活は終わった。



 

 明日から荒木先生の監視が始まる。俺はどうも乗り気になれなかったが、もし彼が魔族だったら、俺は全力でそいつを止めなければならない。でなければまた人間たちを危険にさらすことになる。



ふと、俺は篠宮さんの笑顔を思い出した。




「あの笑顔を、俺が守らなければ・・・」




これは遊びじゃない。油断すればすぐに死が待っている。それは誰にとっても同じことだ。結界で身動きができない人間たちはなおさら危険だ。玲のいったとおり、俺達がやらなくて誰がやるんだという話だ。



「よし、やるか!!」



そう自分に言い聞かせ俺はこの教室を後にした。










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