第百六十六話 聖なる焔~この世界で、一緒に生きていこう~
今回は少し長く&遅くなりました。スイマセン><
後少し急いだので誤字も結構あるかも・・・
ピキーン・・・
お前、アホだな。
「くそ・・・いっそのこと紋章の力でこの場を全部無効化させるか?でもそれじゃあなんの意味にもならないか!」
パキーンッ、ヒュルヒュルヒュル・・・
これだけの闇を、一人だけで背負い続けていたなんて。もう凄いとか通り越してアホとしか言いようがない。ほかにも色々と、それこそ無数に方法があったはずだ。今よりずっと、何百倍も良い方法が。今の状況は、その無数の方法の中でも最も悪い、底辺に近い方法だと思う。
こうして健の闇そのものと戦ってそれがわかった。普通はこうはならない。みんなどうかしたら適当にごまかして妥協して適度に保っているというのに、健の場合はなにもかも素直に、あくまで直線的に全てを受け入れ、抱き、溜めこんできた。そんなことしたら、いつか大変なことになるってことぐらいわかるはずだ。そして多分、そのことは健自身が一番よくわかっていることだと思う。
「うぉああああ!!!」
そうまでしてやらなければならないことがあった。そうまでして守らなければならないものがあった。だから健はこの方法を取った。どうなるかも含めて、なにもかもをわかったうえでこの道を選んだ。普通ならそうはならない。それほどまでの決心に至る、存在に出会う事は究めて少ないから。というよりほぼない。
バキーン!!
だけど健は出会った。柳原 玲という存在に。全てを犠牲にしてまで関わっていたい存在。それが全ての始まりであり、今へと繋がる架橋だ。
本当に・・・アホだなお前は。だけどもしそうなるなら、俺も充分すぎるほどにアホってことになるな。
自分を犠牲にしてまで誰かを助ける。誰かのために自分を犠牲にする。一見勇敢なことに見えるが実際は本当にバカなことだ。誰かを助けたいという想いは誰しもが抱く思いだが、なんにせよいくら助けたいといってもその存在より確実に僅かでも自分を優先させるはずだ。それは全然悪いことじゃないよ?むしろそれが普通で本来はそうあるべきなんだと思う。
だけど俺達は違う。俺達は完全に自分よりも相手を優先する。自分が危険にさらされるとわかっていても、そんなこと気にせず相手のことだけを考える。それは勇敢とか正義とかそんなもの通り越して、いわゆる「無謀」ってやつだ。カッコよくもなんともない。むしろカッコ悪いかな(笑)
だけどさ
キュキイ・・・
その相手が無事で、これから先もまた一緒に居れる。傍に居れる。それだけでもう充分に、幸せなんだ。その幸せ以外になんにも要らない。それ以下もそれ以上も必要ない。それだけで俺達は救われるんだ。
つくづく単純な奴だなあと思うよ。だけど・・・、それもまた良いなあと思う。端からみればおかしなことかもしれないが、俺はそれを誇りに思っている。
単純でバカでアホな俺と健。もしかしたら、だからこそ出会い惹かれ合い親友という名の絆を築けたのかもしれない。あの御崎山学園登校初日、後ろから近づいてきた健を見て俺は微かに感じていたのかもしれない。
なんとなく、同じ匂いのする奴だなあ、と。こうなることも、もしかしたら必然だったのかもしれないな。
「くそっ、威力が半端じゃねえ・・・。このまま耐え続けるのは結構キツイぜ」
お前がどう考えているのかは知らないが、俺からしたらお前はめちゃくちゃ凄い奴なんだけどな。今まで何度となくお前が誰かを助ける場面を見てきた。そしてどんなに辛く苦しんでいても、最後にはその存在に笑顔を与えていた。
俺は素直に、純粋にお前のことを凄い奴だと思っていたよ。誰かに笑顔を与える、それは簡単そうで難しいこと。相手が苦しんでいる時ならなおさらだ。一体どれだけの存在がお前に救われただろう。数え出したらきりがないだろうな。今までの長い年月の中で、お前は認めなかったかもしれないが確かに救われていた存在は一杯いたんだよ。
「・・・どこかで勝負をかけるしかないか」
だからさ、健。
「一点集中・・・次の攻撃の隙に全てをかける!」
もう、自分を責めるな。誰もそんなこと望んでない。そして本当の望みは、お前がお前として生きてくれることだ。確かに過去は変えられない。どんなに酷い過去でもそれが歩いてきた道であることに間違いはない。それはもう充分すぎるぐらいにわかってる。それでも、それでも・・・
誰かに笑顔を与えられるお前が、本当の意味で笑えなくてどうする。過去を重んじることは確かに大切なことだ。だけど後ろばっかりみてどうするんだ。恐れるな、お前は前を向ける。それを許さない奴なんてこの世界には居ない。もしも居たとしても、俺達がその存在を葬ってやる。
しっかり生きろ健、この世界で、共に。お前だけが刻める時を、一緒に奏でよう。だから帰ってこい健。もしもお前一人じゃ大変なら、俺も手助けするから。
闇を、乗り越えるんだ!!
「憎い・・・憎い憎い憎いーーーーーーー!!!」
シュイインン・・・ブウォウウウウウ!!!
健の体から激しく、急激に黒き霧が噴出する。放たれた霧は無数の、まるで蛇のようにうねり天井にまで広がっていく。いつぞやの、エフィーの持っていたあの羽衣のように。
でも、それでも目の前に居るのは相川 健人そのものだ。何も考えずに、ただ見るだけでそれがわかる。前の女子生徒が襲われた時は、もう人とは思えないほどおぞましい姿と化していたが、確かに黒き闇をまとっているが「原型」は保ち続けている。
あの中で確かに、健は自らの闇と戦っている、抗っている。あいつを救ってやりたい。だけど闇を乗り越えるのは自分自身だ。他人が無理やりにできることではない。だから、だから俺は・・・
ダダダダッ!
その時、止まりかけた歯車をまた蘇らせるように足音がこの場に届く。待っていた、その音が届くのを。さすがにそううまくはいかないか、このままやるしかないかと思っていたが、なんてナイスタイミングなんだこんちくしょう!
「健、蓮君!!」
真打ち登場・・・ってか。ようやく役者が揃ったな。
「っ・・・!」
黒き霧に包まれた健がその声に反応する。その表情には相変わらず怒りと憎しみの色しか現れていなかったが、それでも確かにその声に反応した。もう充分だ、それだけでお前が確かにそこに居ることがわかる。
「・・・くっ、うぁあああああ!!!」
(来るな・・・)
ギュッ
多分今健の中は想像もできないほどに混乱しているだろう。闇に引きずり込もうとするターゲットの力、それに必死に抗おうとする健の意志。今までは呑まれてしまうぐらいに健が劣勢に立たされていたが、今の声で、玲の声で状況は反転する。・・・これは好機だ、今以上のチャンスなんてあるものか。
「これは・・・一体どういうことなの!?なんで健と蓮君が戦っているのよ!!」
混乱しているのは玲も同じだった。そりゃあまあこんな光景予想もしていなかっただろうな。俺と健が刃を交えるなんて、本当なら起こり得ないものだから。
だけど混乱しようが悲しもうがそれはなんだっていいんだ。そこに君が居てくれるだけで、ほかには何も要らない・・・ってこれなんか告白の時とかに使いそうなセリフだな。
「工藤、ここは任せてくれ。俺が死なない限り、お前達は手を出すな」
「・・・わかりました。まあ、最初っから手を出すつもりはありませんけどね」
そしてこんな時でも相変わらずの工藤。でも今はそれが、どれだけ有難いことだろうか。いつもは嫌みにしかならないが、今は最高に助かる言葉だ。
「蓮君・・・健・・・」
「悪い玲。俺と健・・・こんなバカな俺達だけど見守って居てくれ。それだけで俺達は・・・」
俺はこの刃に魔力を込めることはできない。それこそもう一人の俺、フェンリルの力か紋章の力がなければなにもできない。だけど・・・魔力は込められなくても想いは込められる。気持ちを、この刃に込めることはできる。
・・・なんてな。
「俺達は、救われるから!!」
ダッ
「うぉおおおおおおお!!!」
特攻あるのみ。完全に捨て身攻撃だ。守りなんかどうでもいい。今はただ、健に思いっきりぶつかるんだ!!
「お前が・・・お前が居るから俺はーーーっ!!!」
シュウン・・・ヒュルヒュルヒュルッ!!
無数の黒き刃達はまるで槍のように変化し、ただ一点・・・俺だけに狙いを定めて襲いかかってくる。それぞれにホーミング機能でもついてるのか?的確に俺の動きを捉えなおかつそれぞれがそれぞれの意志で俺に襲ってくる。
「くそっ!」
ピキーンパキーン、ギギャア!!
俺はそれを自らの漆黒の剣で弾き返す。もうここまで来たら動体視力なんて関係ない。というより相手の動きを考えている時間がない。全ては感覚、何も考えずにただ無心に徹し、この廊下における全ての事柄を把握する。自分でもなにやってんのかわからない。後から考えればどんだけ凄いことしてたのかわかっちまうだろうな。
もう、理屈とか考える必要もない域で、俺達は戦っている。それだけはわかる。
「くっ・・・そうさ。俺がお前達に出会ったからお前と玲の間にあったものが崩れたんだ。玲が虎族から脱退することになったのも俺のせいだ。申し訳ないと心から思うよ。だけどさ・・・」
パキーン・・・
「お前は、お前自身はそれだけが全てだったのか?お前の中の玲との繋がりは、本当にそんなものでしかなかったのか?お前は自分で言ったよなあ、自分は監視という任務として玲と出会った。全部偽りから始まったんだって」
ピシュッ
「でもお前は思ったんだろ?玲と一緒に居たいって。一つの存在として玲に関わりたいって。それでいいじゃないか。それのなにがいけないんだ。最初がどんなだったかなんて知ったことじゃない。どんな過去であれお前がそう思ったのは事実だろ?なのになんで自分で自分を邪魔してんだ。誰もそれを邪魔しようとは思わないのに。誰もがそれを望んでいるのに。どうしてなんだ健!」
「くっ・・・!」
「なぜ虎族の連中なんかの指示に従っている。なぜそんなものに固執する。お前は一体誰だ!!今こうして俺と戦っているのは、一体誰なんだ!?」
「うるさいうるさいうるさいうるさいーーーっ!!!」
ギュワアアア!!!
健の叫びに反応して黒き槍はうねりながら天井に集まる。全ての憎しみと怒りをそこに集めて、全てを刃へと変えてその一点に集める。
「貴様になにがわかる!!俺がどれだけ苦しんで辛い想いをしてきたかなんて貴様なんかにわかるはずがない。勝手にわかったようなふりしやがって・・・知った口を、利くなーーーーっ!!!」
「ああ知らないさ。だから知りたいんだ。お前が抱えているものをな。なに一人で背負いこんでんだよ。一人でなにもかもを背負い込むことの苦しさは、お前が一番よく知ってんだろ!!」
「目を覚ませ健。お前の居場所はそんな暗いところじゃない。お前はお前の足で歩け、そして・・・俺達の元へ帰ってこい!!」
「・・・っ、うわあああああああっ!!!!」
シュィィィィン・・・ブワァアア!!
その瞬間天井に集められた黒き霧は炸裂した。幾重にも分裂して一斉に俺へと襲いかかってくる。それは闇の抗い。健の中を闇で満たせていたのに、急激に健の中に光が芽生えたことにより必死にそれを潰そうとしていた。健が頑張っている。健が必死に打ち勝とうとしている。それはもうあのターゲットでさえ敵わない強き力で。壊れ始めている、ターゲットが増幅させた闇そのものが。
勝て。お前はもう闇に抗うことができる。自分の闇に恐れ苦しみ続けていた自分とおさらばできる。もう我慢することはない。生きろ、ただひたすらに自分として生きていくんだ!
「うぉおおおお!!!」
ヒュルヒュルヒュル!!
俺は健に真っ向から突っ込んだ。黒き槍が容赦なく襲いかかってくる。その全てを漆黒の剣で切り裂いていく。切り裂かれた刃の破片が飛び散り肩や腕や脚、そして頬をかすめ赤い血を刻み飛び散っていく。だがもうそんなことどうでもいい。どんなに傷ついたっていい、あいつの、相川 健人のところまで辿りつければそれでいい。
「斬る。敵すもの全てをこの手で斬る!!」
ピキーン、ピキーン、ピキイインン!!
俺は限界を超えた。本来不可能なことをやってのけた。常識、理屈、理論、その全てを覆した。もちろん自分じゃ気付ていないだろうけど。だけどそれは確かに、なにもかもを超越していた。
ただ健を助けたい。それだけの想いが黒き刃を斬る。
「でやああああああっ!!!」
バキーン・・・!!
そして最後の刃を、俺はなんの躊躇もなく切り裂いた。
「お前は・・・相川 健人だろうがあああ!!!」
「・・・ハッ!?」
その瞬間、全てが真っ白になった。
いや、もしかしたらそれが光というやつだったのかもしれない。突然差し込んだその白き光は、埋もれていた俺の意識を呼び覚ました。
「俺・・・なにやってんだろ」
自分のやってきたこと全てがバカバカしく思えた。勝手に近づいて、勝手に傷ついて、勝手に誰かを傷つけて。なにがしたいんだろう俺は。そしてどうして俺はそんなことをしていたんだろう。
償い?慰め?逃避?それとも嫉妬か?それらしい理由はいくらでも見つかるけど、どれもこれもとってつけたような理由だ。あってもなくても、困らない理由。
フワァアア・・・
その瞬間目の前にあらゆる光景がコマ送りのように流れていく。
街、家、学校、グラウンド、教室。そして部室。そのどれもが俺には眩しく見えて、輝いて見えて、思わず手を伸ばして触れようとする。
ああそうか。俺はあの場所に、あの世界に生きていたかったんだ。なにをしてでも、どんなことをしててでも俺はあの世界に居続けたかったんだ。
あの日あの場所。そしてみんなが居る世界。それが最高の宝物だった。
フワァアア・・・
そして今度は、目の前に二人の人物が現れた。
「玲、蓮・・・」
それは俺にとって最も大切な二人。一方は守りたい、守ってやりたいと心から思った一人。そしてもう一方は、心からついていきたい、一緒に歩いていきたいと思った一人。
「なにをいじけてるんだ?」
「そんなにうじうじして・・・。健らしくないわよ」
優しい光が二人を包む。そしてその光は俺へと注がれる。なんて、温かい光なんだろう。ずっと浸っていたい、俺もその光に触れたい。涙が出てしまいそうになるほど、その光は美しく、奇麗だった。
「俺も・・・この世界に居て良いのかな。二人の居る、この世界に・・・」
俺がそう言うと、二人はにっこりと笑って言った。
玲・蓮「もちろん。一緒に生きていこう、健」
そう言って二人が差し伸べる手に、俺は・・・、静かに自分の手を置いた。
フワァアア・・・シュウウンン
「・・・待たせたな、蓮」
世界がこの眼に映る。相川 健人という存在そのものの眼に、しっかりと映し出される。
「やっと、か・・・。全く本当に遅すぎるぜ。もちろん、この落とし前はつけてくれるんだろ?」
なんだか全部久しぶりに見えた。時間で言えばまだ1時間も経っていないだろうに。だけど・・・なにもかもが嬉しかった。喜びに溢れていた。そして俺はその蓮の問いに、自分自身の意志で答える。
「ああ、まかせろ」
ギュァアア!!
床にしっかりと足をつけて踏ん張る。力強く、確実に力を込めて。
「さあ出てこいターゲット。もう俺の中に、お前の居場所なんてない。うぉおおおおお!!!」
体全身を震わす。もうなにも恐れない。今俺は俺としてこの世界に居る。さっきまでの闇の気配なんてどこにもない。非情に澄んだ気持ちだ。むしろ、なんで今までこんな闇に捕らわれていたのか、不思議なぐらいだ!
「バカな・・・我の闇を、ただの存在ごときが乗り越えるだと!?そんなバカな!!」
ブウォォオオ・・・
俺の体から黒い煙と共に、なにかわからない得体のしれない黒い塊が現れて外へと抜けだしてくる。見える、闇属性であり蓮以外には見えなかったターゲットが、この目ではっきりと見える。
「なるほど、お前があの声の主か。じゃあたっぷりとお返しをしなくちゃな。今回は火傷じゃ・・・、済まないぜ!」
チャッ
両手に銀の二丁銃を構える。今までずっと使い続けたこの銃。だけどこの銃でターゲットを仕留めたことはなかった。いつも全然歯が立たなくて、いつも簡単に弾き返されて。そして絶望を味わってきた。
だけど今は違う。今ならやれる。今までずっと、想い続けた全てのことをこの銃に乗せて・・・。俺の中に宿り全ての力を解放する!!
「いくぜっ!!」
バッ
「健!?」
俺は銃を空中へ放り投げた。くるくると優雅に宙を舞い、銀色のフォルムからきらびやかな光がきらきらと輝く。
「我が呼びかけに応えよ。今我が炎は紅蓮の緋弾へと姿を変え、全てを焼き尽くすその一撃を我が手に。炎は輝き紅き一閃へと。あの野郎をぶっとばす聖なる焔よ舞い降りて・・・」
シュウン・・・ピキーンッ!
宙を舞う銀の二丁銃が激しい赤い閃光と共に輝きだし、一つの大きな光へとその姿を変えていく。
「これを食らわすのはお前が最初だ。有難く思えよターゲットさん」
「シャァアアアッ!!!」
「ってこの世界に出たらお前は言葉も出せないのか。それはご愁傷さま。こんなにも素敵な、最高な世界を味わうこともできないなんてな・・・。同情するよ。だから俺の炎で終わらしてやる」
「冷たき闇の鼓動よ。我が前でその身を灰へと消えろっ!!!」
ガチャッ
「Infinity holy red flame abyss drive!!!」
チュイイインン・・・ブワァアアンンン!!!!
その瞬間その一撃は放たれた。
「シャ・・・」
ブウァァアンン・・・!!
そして、その叫び声が響く時間もないほどに、一瞬で放たれた一撃はターゲットを飲み込んだ。