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第十三話 新しい場所~その名もDSK研究部(仮)~

 キーンコーンカーンコーン



「ふう~」



六時間目の終業のチャイムだ。やっと今日の授業が終わった。



俺は入学してもう二週間を迎えようとしている。


初めてこの学校を目の当たりにして驚いたあの時からもうそんなに経つのか。


その間にいろいろありすぎて時間が過ぎるのも非常に早く感じた。



玲や健との出会い、みんなが(伊集院さんを除く)俺のために集まってくれた鍛錬、初めての魔族との戦闘、そして



自分自身の覚醒ともう一人の自分。




普通の高校生三年間でもこれほどインパクトのある出来事が続くことはないだろう。それほどにこの約二週間は風のように過ぎ去ろうとしていた。



俺にどれだけのことが起きようと、時は止まってくれない。ただその時の流れに俺は流されているだけだ。



「蓮君は何部に入るか決めたの?」



隣の席にいる篠宮さんが声をかけてくる。



「ん~どうするかまだ未定なんだけど」



「締め切りは今週までだから早く決めないとね」




この私立御崎山高校は、絶対にどこかの部活に所属することが義務付けられている。なんでもそれは校訓でえ~と、色々なものに挑戦し、触れることで感受性をなんたらかんたら・・・まあとにかくどこかの部活に所属しなければならないのだ。



「篠宮さんは決めたの??」



「私は手芸部に決めたわ」



篠宮さんが明るい笑顔で応える。俺はその笑顔をみてなにかほっとした。


あの時。ターゲットを殺したのは違う俺であっても、ここにいる篠宮さんを守ることができたのは事実だから。この笑顔を守ることができた、それが素直に嬉しかった。



しかしその時、同時にあることを思い出した。



「お前はなぜ人間を守るのか」



図書室で俺が覚醒する前にウィスパーが発した言葉。



その言葉は今も重く俺にのしかかっている。なぜ俺は人間を守るのか。それが使命だからというのは言い訳だ。その現実から逃げているにすぎない。その質問の答えは、今の俺に欠けているものなのかもしれない。



そうこうしているうちに、教室のみんなはほとんどもう教室を出て行っていた。みんなそれぞれ所属した部活に向かうのだろう。部が決まってないのはこのクラスでは俺と後・・・



「よう蓮、ちょっと付き合えよ」



「ちょっと今時間ある?」



健と玲、まあつまりドラゴンってことだ。



「ん?まあ時間はあるけど・・・」




「じゃあちょっとこっちに来てくれ」




そう言って玲と健が突然俺を教室から連れ出す。



「あ、優菜ちゃんバイバーイ」



「うん、またね玲」



振り向きざまに玲が篠宮さんに挨拶をする。個人的には俺もしたかったのだがそれを健が許さなかった。





「どこまでいくんだよ?」



 俺はこの校舎のはずれにある文科系の部が集まる棟の三階まで連れてこられていた。



この御崎山学園はとにかくでかくて広い。ゆえに校舎も広く、部のなかでも文科系の部は一つの棟にまとめられている。そこは俺達の教室から結構の距離がある。その距離を俺は無理やり歩かされている。



「え~とどこだっけ?」



「もう忘れたの?え~と確かあの部屋よ」



廊下には、ずら~と文科系の部の名が書かれた教室が並んでいた。正直どこになにがあるのかわからない。まあ予想はつくだろうがこの学園は部の数も大変多い。野球部やサッカー部とかの王道はもちろん、ラクロスや茶道部、オカルト研究部とかいうのもある。まあとにかく多種多彩でしかも特に運動部はどれも盛んで、全国大会でも上位に食い込むなど、かなりの名門校である。




「到着~」



「なんだここ?」



俺が連れてこられたのはそんな文化系の部の教室が立ち並ぶ廊下の隅の方にある一つの教室。



その教室には「DSK研究部」と書いてある。DSK研究部?なんじゃそりゃ。全く聞いたことないんですけど。



「ここって一体・・・」



「よ~う蓮を連れてきたぞ~」



俺の話もきかないで健はその部屋のドアを開けた。



「やあ、お待ちしてましたよ一之瀬さん」



「・・・・・・」



そこには工藤と伊集院さんがいた。て、あれ?なんで二人がここに??ていうかここにいるのドラゴンだけなんじゃ・・・



「紹介しよう蓮!」



健がはりきったように声をあげる。



「ここがこれからの俺達の新しい本拠地だ!!」



「・・・本拠地ってなんの?」



突然いわれてもわからない。本拠地ってなんの本拠地なんだ?



「なにって俺達ドラゴンが魔族との戦闘に向けて対策を練る本拠地に決まっているだろ?」



それは決まっているのか?まあ今の健になにを言っても無駄だろう。今の健の目は最高に輝いている。



「ふ~ん、まあそれはわかったけどこのDSK研究部って??」



それが一番気になる。DSK、なんの略なんだろうか。ダンスステージ・・・違うな、ドキドキスーパーキック・・・なにいってんだ俺?



「それは聞かない方がいいわよ蓮君」



玲が声をあげる。



「なんで?」



「この部の名前を決めたのは健だからよ・・・」



玲は溜息をついた。ふむ、確かに健のセンスは物凄い。これはとんでもない名前になっていそうだ。俺はその衝撃的な健の発言にそなえて一つ深呼吸する。


「よくぞ聞いた蓮。教えてやろうこの部の名前は・・・」




「D・ドラゴンのS・生態をK・研究する部だ!!」




・・・その瞬間、この部屋の空気が凍りついた。



「あ、あれ?みんなどうした??」



みんな反応がない。いや、失笑している。あまりの健のネーミングセンスの無さにみんな溜息をついた。ていうか普通頭文字って英語のスペルの頭だろ。健の場合はがっつり日本語の最初の文字を使っている。これぞ健クオリティ。



「いや~さすがですね相川さん」



「まあそんなことだろうと思ってたけどね・・・」



「・・・・・・」



さすが健、期待どうりの展開だ。まるであえてその空気をつくりだしたかのようだ。



「さすがだな」



「・・・なにがだよ」




俺は笑いをこらえるのに必死だった。予想はしてたけどこれほどとは。想像をはるかに超えるネーミングセンスだ。



「まあ大丈夫だ」



「だからなにがだよっ」




こうしてまた新しい生活が始まる、DSK研究部としての生活が。



こんな感じでみんなが笑ってる光景をみるのがなんだが嬉しい。昨日あんなことがあったことなんて忘れてしまいそうだ。



だけど運命はそれを許してくれない。




そしてまた、密かに魔族の影が少しずつ近づいてきている。今この瞬間にも・・・









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