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第百三十三話 最後日の伏線~それは波乱か、それとも・・・~

スミマセン投稿するの忘れてました><



<8月31日 夏休み最終日>



「10時20分か。急げば次のバスに乗れるな」



 夏休み最後のこの日、俺はバス停へと続く道をひたすら歩いていた。照りつける太陽も、確かにまだまだ強烈なものはあるが、それでもいつかの日の日差しよりはまだましだ。こうして歩くのにもさほど支障はない。まあ汗はだらだらとでてくるけどな。



こうしてバス停に向かうとなると、なにかまたイベントが発生するような気がする。今までがずっとそうだったからな。なにかあってほしいと願いはしたが、いつでもその想像の上をいくイベントが俺を待ち受けていた。そして例によって大変な事態にまで膨れ上がっていった。



だけど今日は違う。今日こうして歩く先には、いつもの光景はやってこない。ただ、ひっそりとたたずむバス停の名が刻まれた看板と、その横にバス待ち用に置かれたベンチが二つほど置かれているだけだ。




 あの祭りの後、再び俺の携帯の着信音のバイブレーションが鳴ることはなかった。いやまあちょっとした会話程度なら正確には幾つかはあったけど。遊びのお誘いとか、どこかに集合しようとか、そういうのはあれから一回もなかった。



あれからというもの、なにもない日々がまた俺を待ち構えていた。だけど、ただそのなにもない日々に流されていただけ、というわけではない。ずっと、心の片隅に残り続けていたわだかまりが存在していた。



あの祭り以来、玲や工藤から(まあ伊集院さんは元々ないから置いとくとして)の電話は何回かあった。電話っていっても、さほど重大な意味はない。適当な話題について喋ったりして、まあ工藤の場合は嫌みな部分が八割ぐらい占めていたけどな。とにかく、特に用事もないが話していることに意味がある。そう思わせるような会話を交わしていた。



だけど、健からの電話は一通もなかった。まあ、電話自体めったにしないのだが、それでも一度もないというのは気にかかるレベルに達していた。



わかってるんだよ・・・。なんでこんなにあいつのことが気にかかるのかはさ。今までならなにも気にしないものが、気にしなければいけなくなっているか。そんなの・・・



プシュー、キキィー!




俺はあいつのことを、あれだけ近くで長い間一緒に居たっていうのに、なんにもわかっていなかったからだ。




シュウ・・・バタン。ウォオオン・・



 さて、でも今は健のことは置いておこう。もしなにかやらなければいけないことがあるとすれば、その時はあいつからなにか言ってくるはずだ。というより、俺から切りだすものではないことは確かだ。あいつがなにもないことを望むならなにもない。なにかあることを望むならなにかある。それだけだ。



そういえば、俺がなぜバスに乗っているのかを説明していなかったな。と、いっても、説明するほどのことはない。簡潔に一言で説明するとしたならば、いわゆる「暇つぶし」だ。



さすがにずっと家でゴロゴロしているというのもいささか健全な一高校生として抵抗がある。それにせっかくの夏休みだ。誰かに誘われなきゃ外に出ないなんてそんな卑屈にならずに、なにかしたければ自分から動けばいいじゃないか。という結論に達して、今に至る。



まあそれほど用があるわけじゃないが、街にでも出ればなにか見つかるだろう。それにCDとかも少しチェックしたいところだ。気分転換には丁度良い。



いろんな不安から免れたい、忘れたいんだろ、なんていうツッコミは頼むからしないようにお願いする。今日はあくまでも気分転換、楽しい時間を過ごそうとするお出かけだ。





<御崎シティプラザ>



「ふう・・・」



 ここにもこの夏休みの間、結構来たなあ。何度も見た光景が、目の前に当たり前のように広がっていた。前のお祭りムードから一転して、そこはいつものおしゃれな店などが立ち並ぶ、本来の御崎シティプラザの姿がそのままあった。行き交う人もまた、いつもと同じ雰囲気をかもしだしていた。



しかしまあ・・・、一人でここに来るのは今回が初めてだな。うん、なかなか悲しい画だな、これ。女性ならともかく、男一人で街に出かけるって少し寂しい感じが・・・。っていやいやいやそんなことないはずだ。男だってショッピングを楽しみたいと思うことはある。なにもおかしくはないはずだ!!



・・・言ってて惨めになってくるなあ、これ・・・。




ウィーン



「いらっしゃいませ」



 とりあえず適当にCDショップに入った。



「ふう・・・さてと」



ここは御崎シティプラザ内でも一番大きなCDショップ、「Tune」。店内はとても広々としていて、例えるならばCDなどの音楽関係だけに特化した一つの大型電化製品店。透明なガラス張りの店内の中には、ズラーッと各ジャンルに分けられたCDの棚が並んでいる。どれぐらいあるんだろうなあ。一度数えてみてみたいぐらいだ。



ちなみにこの店は三階建てで、一回にはCDなどの音楽メディア、二回はギターやベース、吹奏楽で使うようなものまで数多く並び、三階は各部屋に分けられた演奏ルームとなっている。まあ、言ってみればここは音楽関係の用事があるならまずここで、っていう感じだ。その品ぞろえの良さも、みんな周知のことだからな。これほどの規模のCDショップもなかなかないと思う。



俺は結構家で音楽を聴くのが好きだったりする。まあそのジャンルも適当で、邦楽はもちろん洋楽、それに最近はオーケストラ関係の音楽を聞いていたりする。まあ最近はお気に入りのグループが出来たから、そっちをよく聞いているな。ちなみに今日の目的も、そのグループの新作を覗きに来たわけで・・・



「・・・あれ?」



その時、ガラスの壁に面したところにある、お目当てのグループのCDが置いてある棚に辿りついた瞬間、透明なガラス越しにある人物の姿が目に入る。



「・・・あれって、確か・・・そう千堂先輩だ」



目の前の車道を挟んだ先の通りで、千堂先輩、そして何人かの取り巻きの姿があった。まあそりゃあ女子高生なんだし、ショッピングをすることもあるだろう。むしろ俺よりかは意義がありそうだ。本来ならなにも問題はないのだが・・・。ちょっとばかり、そうもいかない匂いがプンプンしている。



「・・・なんか少しやばい雰囲気が漂ってるな」



こちらか見るに、どうやらもめているようだ。それも数人の男グループと。まあいわゆるナンパとかそういう感じなのかもしれないが、千堂先輩の取り巻きは千堂先輩の後ろに脅えるようにして下がっていて、千堂先輩一人がその男グループの相手をしているようだ。ふむ、いつもあんなにえらそうにしているのに、学校以外じゃ結構小心者なんだな、あの取り巻きは。



とと、一応あれでも普通の女子高生なんだから、いかにもチャラそうな男達に囲まれたら脅えるのも自然な反応か。しかしまあ問題なのは千堂先輩だな。あの人なら、例えどんな相手だろうと真っ向からぶつかるだろうから。あの人は強い人だ。しかし、少し突っ張りすぎるというかなんというか。



まあとにかく、もしかたら今はその千堂先輩の性格が仇になるかもしれない。あの男グループに対してはな。



「・・・さてどうしよう」



助けに行くべき・・・なんだろうな。この光景を見て、知らんぷりなんてできないし。だけど相手は千堂先輩だ。あの人はあきらかに俺に対して嫌悪感をもっているからな。今まで何度も突っかかってこられたし。もしいけば面倒なことになるかもしれない。



う~む・・・



「あなたはあまり関わらない方がいいと思いますよ。あの方には・・・」



その時、いつぞやの工藤の言葉が頭の中で蘇る。



「よし、行くか!」



なんともよくわからない決心だが、工藤にそう言われたらなんだか抗いたくなる。素直に従いたくない。その思いだけが俺の体を揺り動かしていた。







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