第十話 戦いの後で~あれ、もしかして重要だった?~
「・・・・・・はっ!!」
俺は目を覚ました。そこはベットの上。
「ここは・・・」
あたりを見渡す。隣にはいくつかの同じようなベット、そして白いカーテン。棚には薬の瓶がたくさん並べられている。どうやらここは保健室のようだ。
「あれ、なんで俺こんなとこにいるんだ??」
寝る前になにかあったような気がする。なにか大切なことを忘れている。だがなにも思い出せない。
キーンコーンカーンコーン
そうこうしているうちにチャイムが鳴る。近くにあった時計をみるとどうやら六時間目の終業のチャイムのようだ。あれ、俺はいつから寝てたんだっけ??必死に思い出そうとする。
ふと、自分の手が目に入る。
すると俺の手は血の色に赤く染まっていた。
「わあ!!」
俺はそれに驚き思わず後ろにズッコけてしまう。なんなんだこれは??
自分の体を改めて眺めてみる。
すると制服はボロボロになっていてそして無数の穴が開いていた。
「・・・俺に一体なにがあったんだ」
確実になにかあったということはわかった。そうでなければこんなことにはならないだろう。しかしその「なにか」がわからない。
俺はふとベットの横にあった机に目がいった。
「これは・・・」
そこには一つのなにかのカケラがあった。青白く光り、こちらを惑わすような光沢を放っている。
「そうか、俺・・・」
俺はそれを見て思い出した。そうだ、たしか昼休みの鍛錬の時に突然魔族が襲撃してきて・・・
少しずつ記憶が蘇ってくる。
「それでウィスパーとかいうターゲットとの戦闘になって・・・てあれ??」
そこからの記憶がない。確かにターゲットと戦ったという記憶はあるのだがそこからどうなったのかがわからない。
そして、俺は棚に奇麗に整頓しておいてあるなにかの医学書を見て思い出す。
「そうだ、あの時図書室で・・・そうだ篠宮さんは!?」
あの時俺は篠宮さんを守ろうとしていたんだ。でもその後どうなったかがわからない。
するとその時、突然ドアの開く音が聞こえた。
「あ、蓮君気がついた??」
最初に聞こえたのは玲の声。そしてその後次々とほかのドラゴンたちの声も上がる。
「よ~蓮やっと目が覚めたか」
「いや~何事もなくよかったです」
「・・・・・・」
伊集院さんだけ無言だった。でも・・・
「あれ?」
なにかみんないつもと違う気がする。姿、形はなにもかわらないのだがなにか違う気がする。でも、それがなにかわからない。
(気のせいか・・・)
俺は少し気にしすぎなのかもしれない。そこにいるみんなの声はなにもかわらない。いつもの風景だ。俺の勘違いだ、そう自分の中でつぶやき俺はみんなに声をかける。
「よ、よう・・・」
どことなくぎこちない返事になってしまった。どうしてもなにかが心にひっかかっていた。そんな俺を見て健が声を上げる。
「どうしたどうした??元気がねえなあ。ブラックドラゴンともあろうお方が・・・」
話している途中で玲が健の口をあわてて塞ぐ。
「バカ、なにいってんのよ!!」
「ワ、ワルイ・・・つい」
なにかひそひそ話をしている。ブラックドラゴン?一体なんのことだ??
「えっと、ブラックドラゴンがどうしたって??」
俺はそんな二人に問いかける。そしてそれに慌てて玲が答える。
「な、なんでもないのよ!!ホントに・・・」
「いいじゃないですか、真実を教えてあげても」
突然工藤が口をはさむ。
「一之瀬君、あなたは最初っから自分がブラックドラゴンであることを知っていましたね??」
工藤が俺に問いかける。ブラックドラゴン??確かに俺はブラックドラゴンだ。まあそれを証明するものはなにもないけどそう親父が俺に告げていた。
「まあ確かに知ってたけど・・・それがなんかあるのか??」
そう言った瞬間、あたりが急に静かになる。あれっなんかまずいこといっちゃったのか俺?
そしてその沈黙を破るように玲が声を上げる。
「あ、あなた自分がブラックドラゴンだってこと知ってたの!?」
玲が目を丸くして声を上げる。あれ、これってそんなまずいことだったのか??
「え、まあ親父からそれは聞いてたけど・・・」
「なんでそんな大事なこと黙ってたのよ!!」
玲が部屋中に響き渡るような大きな声で俺に叫ぶ。あまりの大きさに耳がキーンとなる。
俺がブラックドラゴンだってことはそんなに大事なことだったのだろうか。
「え、あれ??これってもしかしてそんなに重要なことだった??」
俺が玲に問いかける。それを聞いたここにいる全員が溜息をつく。
「あなたって天然なの?それともわざと??」
「いや~いいねえ蓮。おもしろすぎだぜ(笑)」
「いやはやさすがですね~一之瀬君」
「・・・・・・」
またしても伊集院さんだけ無言だった。しかしここにいる全員がツッコミを入れるほどこのことは重要だったらしい。俺は今まで自分がブラックドラゴンだということをあまり気にしたことがなかった。だって今までそのブラックドラゴンとしての力を感じたことがなかったわけだし。それに刻印もなかったしな。
俺はそう思ったがそれではみんな許してくれないようだ。
「あなたとはじっくり話し合う必要がありそうね・・・」
こうしてこの保健室で俺の尋問会(?)が始まった。