第百二十五話 Summons dragon~力と力、意志と意志~
「蓮っ!!」
仲間がやられた。かけがえのない親友が、友が、目の前の敵対する存在によって傷つけられた。
「全く、期待はずれだなあ~。この争いで唯一意味のあったあの竜王の息子であるブラックドラゴンとの戦闘。どれほどの力を持っているのかと思えばなんだ、あれは?あれじゃあ竜族でもなんでもねえ、ただの剣をもった人間と変わらねえじゃねえか」
「やっぱりお前の友らしいよなあ。雑魚には雑魚が集まる、どうもそれは本当らしいぜ。なあ、相川 健人」
思えば蓮にとってこの戦闘はなんの意味もない。俺と玲の小学校時代のいざこざの延長線上が今のこの争いであって、蓮にはなんの関係もない。あいつらのことも知らないし、ましてやその時にあったこと、そして俺達の秘めたる思いも、蓮は知らない。蓮にとってこの戦闘はこれっぽっちも意義がない。言うなれば「無意味」な戦闘。
だけど蓮は戦った。俺と共に、俺達のために戦った。「お前を一人で戦わせはしない」、俺達の過去から起きたこの言うなら勝手な戦闘でも、蓮はそう言ってくれた。そして力になってくれた。相手はAランクのドラゴン、どれだけ危険な戦いなのかも知っていながら戦ってくれた。なのに・・・なのに・・・!!
なんでお前が傷つかなきゃいけないんだ?そして俺はどうしてそんな友のことを守ってやれない!?蓮の気持ちにどうして応えようとしない!?今までどれだけ俺達と共に時を過ごしてきたか、そして力になってくれたのか。それをわかっていながらどうして俺は・・・俺はっ!!
「くそったれがああ!!!」
バッ!!
なんのために今までこうしてやってきたんだ。なんのためにDSK研究部員としてみんなと過ごしてきたんだ。
こんなくさった奴らからも守れないのかよ俺は!?俺は本当にそんなになにもできない奴なのかよ。もしそうなら俺は・・・
ここに存在していい存在じゃなくなるじゃねえかっ!!
「我に宿りし竜炎の力よ。この場にいる悪しき魂をその炎で焦がし、この場を炎で火炎舞踏に祭り上げろ」
「incarnation dance of flame breath!!」
ブウォォオオオオオ!!!
銃口に息をふきかえると周りにけたたましい音をたてながら紅蓮の炎が渦をまき、辺りを巻き込みながら自由自在に動かせる炎が取り巻く。そしてそれをその手に収める。
「うぉらああ!!」
そしてその炎を振り回し、まるで一つの鞭のようになびかせながら相手の元へと飛ばす。
「そんなもので俺様に傷をつけられるものか」
シュバーン
しかしその炎をグループの中の先程その電撃で一之瀬 蓮を退けた男が、またしてもその手から放たれる電撃でその炎をいとも簡単に断ち切った。その様はまるでお前の攻撃などこの程度だと言っているようだった。断ち切られた先の炎はふわりと空中で消え、残った炎はまた健の元へと収縮されていった。
「くっ、わかってんだよ、この程度じゃ奴らを倒す事なんてできないってことぐらい・・・。くそっ!」
「炎は紅蓮へ、我が手に宿りし業火を糧とし火炎の緋弾を我が前に形成」
健が唱えた瞬間、それに応えるように周りに佇んでいた炎が一斉に健の元へと帰還し、その場でどんどんと凝縮されていく。凝縮されるにつれ、その炎の色は眩しくオレンジ色にも似た色を帯びながら輝きだし、次第に燃えるような音からモスキート音のような音を放ちだす。
「へえ、お前でも「第二階術魔法」ぐらいはできるんだ。てっきり最初の段階でつまづくのかと思ってたら、Bランクでもそのぐらいはできるんだな」
(頼む、強く、もっともっと強くなってくれ。そしてお願いだ。俺の力に、俺がここで居続けることができる力になってくれ)
(俺はこれからもみんなと共に居たい。共に歩んでいきたい。それもただ後ろから付いていくのではなく、ちゃんと横に並んで、同じ位置、同じ歩幅で歩いていきたい。だから頼む俺の炎)
俺が俺という存在として、俺をここに居続けさせてくれ。この手で、自分の力で歩んでいけるように!!
「うぉおおあああ!!」
健の手元で凝縮に凝縮を重ねた炎は、やがて眩い閃光を放つ一つの球になった。球は辺りの空気を吸い込むように気流を作り、その球を抑える健の手、腕は大きくなにかに耐えるように震えていた。
キュイイン・・・ピキ!!
そしてその球はソフトボールぐらいの並みの大きさになった時、なにかが割れるような音をあげて弾けるように激しく光る。
「いくぞ・・・俺の力の全てを、これに賭ける!!」
ヒュン・・・
健は手元に秘めた激しく光る球を空を目掛けて高く投げ上げた。
「我が炎よ!我の前に全ての存在を焼き尽くす、紅蓮の竜となって我が前にその姿を現せ!!」
「Scorching flame red dragon summons!!」
パン!!
そして健はその銀の二丁銃で、高く宙を舞う閃光の球目掛けて一発の弾丸を放った。
パキーン・・・ウォオオオオオオオオ!!!
その弾丸が球に当たった瞬間、球はガラスが割れるような音をたてながら弾け飛んだ。キラキラと赤い小さな光の粒が散る中、その間から紅蓮の炎をまといし一つの竜が、けたたましい鳴き声と共にその姿を現した。
体はオレンジ色に燃えたぎり、目は夜になりかけの空のような深い蒼色で、その巨大な体をうねるように動かしながら宙を変幻自在に舞った。そしてその先を、あの男グループ一人に向けて襲いかかるように口を大きく開けて勢いよく飛びかかった。
「ふん、おもしろい。そっちが自らの竜を呼び覚ますのなら、俺も竜には竜で対抗してやる。我が雷鳴の閃光の竜でな!!」
そして男は右手を高く突きあげる。
「出でよ!我が雷鳴の竜よ。お前の力で我が敵を圧倒し、その力の違いを見せつけろ!!」
「Thunder of flash yellow dragon summons!!」
ピキーン・・・ウォオオオンンン!!!
そしてその手元から、今度は周りに強い電磁波のようなものを響かせながら空気を切り裂く、黄の体をしたひとつの竜がその姿を現した。
その竜は常に体に無数の電磁波にも似たものをまとい、その先を見つめる緑色の目は、目の前に迫りくる紅き竜をとらえ、それに真っ正面から対抗するように飛びかかった。
シュウンン・・・ビキィーーーーンン!!!
そしてその二つの竜は空中でぶつかった。当たった瞬間に辺りはカメラのフラッシュのように眩い光で包まれ、二つの竜が接触している部分からは絶えずけたたましい音を放ちながら閃光が走り、辺りの一部の地面や周りにある壁はその衝撃で吹き飛んだ。
「くう・・・!!」
「ぬあぁぁ・・・!!」
二つの竜は二人の間の丁度真ん中の場所でその位置を保ち、互いに押し返そうという力が相殺して、つばぜり合いのようになってその場に留まっていた。
ぶつかりあう二つのドラゴン。互いの意志そのままをその力に宿して、相手のドラゴンを打ち破ろうと前へ前へと押し返す。言うなればそれは互いの意志と意志、力と力のぶつかり合いで、自らの持つ全ての力をかけた壮絶な戦いが、そこで起きていた。
「こんの・・・やろぉおがあああ!!!」
「うぉおおおらあああ!!!」
バチン!!
さらに激しさを増す二つのドラゴンの争い。その時、そのはずみで一つの火花のようなものが飛び散った。
その火花は、ある一点を目指して飛んでいく。そしてそれは
「・・・痛っ!」
なんと幸運か不幸か、俺の頬に直撃したのだった。そしてその衝撃で俺は失っていた意識を取り戻す。
「イテテ・・・って、なんだこれは!?」
目の前に飛び込んできたのは凄まじい気迫と気迫のぶつかり、ドラゴンとドラゴンのぶつかり合いだった。眩い光の中で全ての力をそこに注ぐ二人の姿は圧倒的であり、近づくことも動くこともできなかった。誰もそこに近づけない関与できない。それは二人だけの、二人のみが踏み込める空間と化していた。
「くっそぉ・・・こんなところで俺はあっ!!」
ギュリリリ!
健は足をガッチリと踏み込み、渾身の力をさらにその手に込める。健の持つ計り知れない意志がその紅き竜に伝わり、次第に二人の丁度真ん中にあった二つの竜のぶつかり合いは、微弱ながら少しずつグループの男側へ移動していく。
「ふん、なかなかやるじゃねえか・・・。Bランクでここまで対抗できれば上出来だ。褒めてやるよ。だがな・・・」
「越えられない壁は必ず存在する・・・どんなに願おうが力を込めようが、乗り越えられない壁がなあっ!!!」
ギュワアアアッ!!
「・・・!?」
すると突然その男の手元が激しく光り、黄のドラゴンの根元が大きく膨れ上がる。
「死ねぇえええ、相川 健人ォオオ!!!」
そして
キュイイイインン
それは炸裂する
ブワアアアアア!!!
黄のドラゴンは今までよりも遥かに巨大で、なおかつ凄まじい威力で飛びかかった。そしてつばぜり合いになっていた健の紅き竜をものともせず、その巨体で圧倒して吹き飛ばした。辺りに踏ん張っていないと吹き飛ばされるような強烈な風が吹き荒れ、そして・・・
「のわあああああ!!!」
健の手元でその黄のドラゴンは炸裂し、健はその衝撃で大きく吹っ飛ばされた。
「健っ!!」
そして俺はその健目掛けて飛びついた。