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第百二十四話 届かぬ刃~強き意志を阻む、強力な力と魔~



「いくぞ蓮。こっからは容赦なしだ。こいつらに遠慮なんて必要ない。あるとすればこいつらを全力で叩きのめす、それだけだ!!」



 怒りからくる刃は強い。どんな感情でも怒りや憎しみくる力には敵わない。それに込める力がほかのものとは比にならない意志があるからだ。だから怒りの刃は強い。どんな力よりも上をいき、その存在を破壊せんとその全てを叩きつける。



だがそれは醜き刃。全てを切り裂き、全てを破壊した後に残るものは、悲しみと落胆と・・・自分自身への悲観だけ。なにものより強い刃を持った後には、それなりの代償が襲う。その代償は計り知れない大きさで、それを感じた時、その存在は思うだろう。




なぜ、こうなったのか、と・・・。




「わかってる。やられたらやり返す。それが俺達のやり方だ。それに、こんなところで逃げ出してたら元もこうもないしな」



だけどその怒りは、時に心の鋼となる。どんな形であれど、それは強き心の意志となる。今の俺達はその後のことなんて考えていない。ましてや自分のこと、相手のことなんて考えていない。今俺達の頭の中にあるのは



あいつらをぶちのめす。それだけだ!!




「いくぞ!!」



俺達は再び動き出す。今度は相手に攻撃の意志を叩きつけながら、ただひたすらあいつら目掛けて走る。それは言うなれば突撃、そして捨て身。自分の事なんて考えていない、意識の集中は全て相手への攻撃へと注がれていた。



「我が炎をこの手に、焦がすは悪しき魂、我が炎を貫きて存在の全てを紅の渦へ沈めろ!!」



「One spark of flame arrow!!」



スゥゥ・・・ブウォォオオ!!



紅に染まる銀の二丁銃、周りにまとった炎を圧縮し凝縮、そして一本の矢のようになって相手のただ一点目指して射出される。その炎は前を塞ぐ全てのものを貫き、相手を一瞬にして貫かんとする。それは一閃と言うべきものであり、瞬く間に飛び去って行った。



「ふんっ、忘れてないか相川。俺達は四人いるんだぜ?蔵谷」



「わかってる」



男がそう言うとそのグループの中からまた一人前に出て右手を向かってくる炎にかざすように差し出す。



「Interception of precipice!!」



ゴゴゴゴ・・・バアーン!!



するとその右手の前に茶色いごつごつとした岩のようなものが身の丈ほどの高さまで積み上げられ、いわば壁のような形になってその炎の行く手を遮る。そして炎は進行方向のままその壁に勢いよくぶち当り、その反動で一本の矢であった炎は弾けるように飛び散りその姿を消した。



「甘いな。その程度の攻撃で俺達に傷をつけようなどと・・・」



「そのセリフ、そっくりそのまま返してやるよ!!」



タッタッ、バッ!!



俺は健の飛び散った炎の隙間を縫って、遮っている壁の表面を蹴るように昇りながらその頂点へとたどり着き、その頂きを力一杯また蹴ってあいつらの真上から剣を構えて飛びかかる。そして俺はさっき電撃を放った奴を叩き切るように剣を振りかざす。



だけど上から見えたそいつの顔には笑みが浮かんでいて、言うなれば余裕の表情だった。



スッ・・・



そしてそいつの前にまたもう一人の男が歩み出て、俺へ向けて左手をかざす。



「Reflecting barriers of gravity・・・」



ヒュワーン・・・ギュリリ!



その左手の前の空気というより空間がうねるように歪み、まるでそこだけが粘土のようにぐにゅぐにゅと形を変えながら新しく空間を作っていく。そして俺はそこに思いっきり剣を振りかざし、その空間にぶち当てた。



ピキーン・・・!!



「なっ・・・!?」



剣が、動かない。確かに渾身の力を込めてこの空間に剣を抑えつけているのに、剣はビクともしない。いや、これは・・・逆に俺が押し返されていないか?



形成された空間は俺の剣を抑えつけながらもその変化を続け、やがてそれは大きくうねりそして・・・



スゥゥ・・・パーン!!



その空間は弾け飛んだ。俺はその反動と力で大きく飛ばされる。宙を舞い、周りの景色がぐるんぐるんと回りながら視界に入っていく。景色の後にまた次の景色が。そして今度はさっき見た景色と



やがてその高さはなくなり、次第に下へ下へと向かっていく。



ズザー!!



幸運か不幸か、地面に着いたのは丁度足がつくタイミングで、俺は半ばしゃがむような格好で後ろへ勢いそのままに地面を滑る。下はコンクリート、もし当たり所が悪ければただではすまない。だけど今思えば、もしかしたらどっちにしたって結果は変わらなかったのかもしれない。



「これで終わると思うなよ。桐谷!」



「Baptism of steel Blade!!」



「!?」



すると今度は俺の頭上に周りにあった屋台に使われている鉄骨のようなものが集まり、無数のまるでつららのように、いまかいまかと落ちてきそうな具合に浮かんでいた。それもどれもが俺を狙ってその場に佇んでいる。いくら工事現場のようなあんなでかいものでなくても、あんなのをもろに受けたら無事ではすまない。



「くそっ!!」



そしてその無数の鉄骨は勢いよく俺目掛けて一斉に落ちてきた!



バッ!



ガシャンガシャンガラガラバキーン・・・!!



無数の鉄骨が地面へと叩きつけられる。鉄骨は反動で飛び跳ね、ぶつかり、けたたましい金属音を辺りに響かせながら周りに転がっていった。俺はそれを渾身の力を振り絞り、後ろへと向けられた進行方向を前へ飛び込む形で無理やり変えて、鉄骨の脅威からからくも逃れたのだった。



ゴロゴロゴロ!



俺はコンクリートの上を勢いよく転がった。着地どうこうなんて考えられるわけがない。あの鉄骨から逃れるだけで精一杯で、無理やり自分の進行方向を変えるにはそれなりの代償が必要だった。態勢は思いっきり崩れ、体を思いっきり地面に叩きつけていた。



「かかったな」



そしてその勢いがようやく収まり、なんとか態勢を取り戻せるようになった瞬間



「くっ・・・はっ!?」



目の前に一直線に俺目掛けて飛来する、一筋の電撃があった。



ピキーン・・・!!



俺は凄まじくギリギリのタイミングでその電撃を剣で受けた。しかしちゃんとした態勢でもその攻撃を抑えるのは容易ではないのに、こんなバランスが崩れた状態で受けて、その勢いを抑える事なんてできるわけがなかった。



「おわあっ!!」



俺はその力で吹っ飛ばされた。手にしていた剣は弾け飛び、空中をくるくると舞った。俺は勢いよく後方へ吹き飛ばされ、そして



ガシャーンガラガッシャーン!!!



先程の無数の鉄骨の山へとその身を叩きつけていた。



ヒュルヒュルヒュル・・・グサッ!!



そして遅れて漆黒の剣が俺の足元の地面に飛んできて突き刺さった。



「く、く・・そ・・・」



ガクッ




そして俺はその衝撃で、意識を失ってしまった。





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