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第九話 Darkness~歪んだ魂は闇へと消える~

 俺は、ウィスパーが篠宮さん目掛けて放った無数の槍を自分が盾となって篠宮さんを守った。だがその無数の槍は無情にも俺を突きさし、そして心臓を貫いた。刻印のない俺はもろに槍を食らい確実に死んだと思った。だが俺の中でなにかが目覚めて俺は覚醒する。血塗られた刻印を自分で描いて・・・



「いや~しかし感謝感謝。お前みたいな雑魚が俺を目覚めさせてくれたんだからな。礼を言うぜウィスパー」



顔に血塗られた刻印が描かれた俺はウィスパーに言い放つ。さきほどまでの俺という意志は今はもうない。自分でもなにがなんだかわからない。俺とは違う人格、違うなにかだ。



「バカな!お前はさっき俺の槍をくらって死んだはずだ。なのになぜお前は立っている、そして刻印が顔に描かれているんだ!!」



ウィスパーは慌てふためく。無理もない、さきほどまでいた結界もはれない半人前のドラゴンが突然刻印を得て自分の前に立ちふさがっているのだから。しかも尋常ではない魔力を秘めて・・・



「な~に造作もないことよ。ある特定の条件、そして感情、最後に自分の血。この三つの要素が組み合わされば俺は覚醒する。その状態をお前が作ってくれただけよ」




俺はウィスパーに向けて余裕の表情で話す。それを聞いたウィスパーがバカな、といった表情で立ち尽くす。



「あ~まだ名乗ってなかったな」





「俺の名はフェンリル。血塗られたドラゴン、死を司る竜、そうブラックドラゴンだ」





「フェンリル、ブラックドラゴンだと・・・まさかこんなところにブラックドラゴンがいるはずはない!!嘘だ!ブラックドラゴンはもう遠い昔に死んでいるはずだ!!」



ウィスパーは錯乱状態になっている。今の状況を受け入れないようだ。それだけ俺、フェンリルの存在は大きいものだった。



「工藤君・・・これは一体どういうことなの??」



横でその様子を見ていた玲が工藤に尋ねる。そこにいるのはさっきまでいた一之瀬 蓮ではない。魔力、そしてその圧倒的な存在感。なにがどうなっているのかわからなかった。




「一之瀬君は刻印がないわけではなかった。ですがその刻印は封印されていてそれが発動するのはある一定の条件下のみ。そして今その刻印が発動して今の状態に至っています。彼の真の正体はブラックドラゴン、竜王と並び立つほどの力を持つ、そう最強のドラゴンです」



工藤はそう答えた。だが頭でわかっていてもそれを信じることができない。今まで刻印がなかった少年が実は最強のドラゴンだっただなんてそう簡単に信じられるものではなかった。それほどまでに目の前にいる人の姿のままでいて圧倒的な存在感を放つ少年の姿が信じられなかった。



「蓮君・・・」



玲はか細い声でつぶやく。そこにいるのはあの一之瀬 蓮ではない、最強のドラゴン、ブラックドラゴンなのだ。その現実を受け入れることができなかった。でもたしかにそこに彼はいる。それが現実。それを曲げることはできなかった。



「さ~てそろそろ始めるか。久しぶりに目覚めたんだし少しは肩慣らししないとな」



そういってフェンリルは剣を構える。



「さあどうしたウィスパー!かかってこいよ。それともなんだ、俺を見てビビっちまって動けないのか??」



俺はウィスパーを挑発する。さすがにウィスパーもそれを見過ごせなかったのか、自分を襲う恐怖感を払いのけ再び槍を構える。



「バカにしやがって!!お前がなんであろうと私がドラゴンなんかに負けるものか!!」



そして詠唱を始めた。



「我の前にいるこの愚かな存在を食らい尽くせ!!」



「ライトウルフランス!!」



そしてまたウルフの形をした無数の槍が俺めがけて放たれる。



「フッ・・・」



しかしそんな状況でもフェンリルは余裕の表情、笑みまで浮かべている。まるで完全に相手の技を見切っているかのように。そしてフェンリルも詠唱する。




「深き闇は希望の光さえも闇に葬る・・・」





「Dark fog・・・(闇の霧)」




あたり一面に黒い闇の波動がこだまする。そしてあたり一面を闇の霧が覆い尽くす。



そしてウィスパーの放ったウルフたちはその闇に消えていった・・・



「なんだこれは!一体どうなってるんだ!?」



ウィスパーが叫ぶ。闇の霧であたり一面真っ暗でなにもみえない。



「なんなのこの霧!!」


玲達のいる場所も闇に包まれる。今、蓮たちがどうなっているのか全くわからない。



「これが・・・封印されし闇の魔術・・・」



工藤がそれをみてつぶやく。



「闇の魔術??」



「はい。聖属性の魔法と相反する魔術。それはあまりにも強力な魔法で、あらゆるものにたいして絶望、恐怖、そして死を与える魔法です。それゆえに禁譜とされ、封印されていたのですが・・・。しかもこの魔術をつかいこなすには絶大な魔力が必要です。並みのものがこれを発動すれば、逆に自分が闇に飲まれ、一生出れなくなります。ですが彼は完全に使いこなしている・・・」



その闇の魔術が今目の前で発動している。そしてその中でフェンリルとウィスパーが戦っている。その戦いは玲達にとっては魔力が大きすぎた。今この中に入ってしまえばその者も闇に飲まれ、命を落とすだろう。



「くそっなにもみえない!!」



ウィスパーがもがく。しかしなにもみえない。闇は一層濃くなり、少しずつ恐怖が襲ってくる。




そして足音が近づいてくる・・・



「やめろ・・・来るな!!やめてくれ!!!」




「いいねえ~。生きるものの恐怖に怯える顔ってのは。一番華があるなあ。そうは思わないか?ウィスパー」



少しずつ近づいてくる。足音が・・・そして死の恐怖が。



「やめろ、頼む殺さないでくれ。お願いだ!!」



ウィスパーが恐怖におののく。近づく死の恐怖に。そして・・・




「フフフ、ハハハハ!!助けてくれか、これはおもしろい。だが残念だなあ。お前に生きる価値など、最初っから無いんだよ!!」



フェンリルが剣を天にかざす。そして唱える





「Judgment・・・(裁き)」





その瞬間、天から漆黒の稲妻がウィスパーを襲う。





「のわあああああああああああああああああ!!!!!!!!」





「ばかな、私が、この私がドラゴンなんかに・・・のわあああああ!!」







そしてウィスパーは闇の霧とともに消え去った。一つのカケラを落として・・・





「フッ、こんな雑魚ではなんの楽しみにもなら・・な・い・・・な・・・」





そしてフェンリルはその場に倒れた









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