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6、笑顔は異世界だって共通語!

瞬きを3回。


それでやっとガラスから手を放した。


「すみません、行きましょうか」


振り返って美形さんを見上げると、何を考えているのかわかりにくい視線を寄越される。


「もういいのか」

「はい、ありがとうございました」


頷いたと思ったらさっさと背中を向けて行ってしまう。


ぐあーっ。さっきといい今といい女に優しくない奴だ!紳士を見習いたまえ!


かといって置いていかれるわけにもいかないので、わたしは最後にガラスを一瞥して後を追った。

良かった。ガラスは汚れてない。汚れてるのかもしれないけど、目立ってない。よし。


しばらく歩くと美形さんが急に速度を緩めたので隣に並んでみる。

顔を上げれば声が落ちてきた。


「これからいいと言うまで口をきくな」


おや


「わ、」


おおっと。


いかんいかん。口をきくなといわれたのだからわかりましたとか言ったらだめだ。

慌てて口を噤んで了承の意を伝えるために頷いてみた。


お?


そのちょこっと口の端を持ち上げているのはいわゆる微笑というやつですか?


目が、なんか企んでるっていうか意地悪というか、一筋縄にいかないというか、そんな感じだけど、ま、気にしない。

ここにきてはじめて美形さんの笑みだ。

わたしも思わず口元が緩んでしまう。


人間やっぱり笑顔が一番ね


とか考えていたらすぐ庭園の出口でした。


わたしがきょろきょろしていると男性が一人こっちに走ってきた。

なんかいかにも兵隊さんって感じだ。

30代半ば、かな。言っちゃあなんですけど、普通の人です。

いや、良かった。美形さんといると感覚が狂うんじゃないかと内心恐々だった。

兵隊さんは美形さんの前に来ると一礼して、こっちのほうに一瞥くれる。


この視線は覚えがあるぞ。

ちょっと用があるからあっちに引っ込んでいなさいね、の目だ。


兄さんが友達と話にしゃれこむときにこんな感じでした。

いったいどんな話をしてたんだ兄さん。エロイ話じゃあるまいな。


ダメと言われればもちろん、はいはい盗み耳立てますよ!気になりますもの!ってなるのが人の心だけれど、ここはひとつ大人になった気分でしょーがないなあ、譲ってあげるよ。ほらほらわたし物分りいいでしょ?そうでしょ?ってしたほうが今回はいいような気がする。なんとなく。


出来る限りの空気は読むように努めるよ!ニホンジンですから!


二人ににっこり笑顔を見せて、ちょっと離れたところに立ってみる。

兵隊さんが意外そうな顔をしたけれど、これでも通常でない状況にわたしのぶきっちょな頭はそれならそれなりに一生懸命フル回転しているのだ。

打算が機嫌よくカランカランと回っているのだ。からんからん。


二人の会話は風に流れて聞こえなかった。聞こえたかもしれないけど、聞こうとしてないしね。そう努めたよ。


しっかし、ほんとうに高いなここ。山というか崖というか。

庭園にいたときは気づかなかったけど、結構風が来る。


さて、ここで手持ち無沙汰な時間がやってきた。


暇だ。


歌でも歌うか。

だめだ、口をきくなって言われたんだ。鼻歌もだめかな。


・・・ラジオ体操でもするか。


木の上にいたせいで節々が痛いんだ。これは日頃の運動不足が祟ったね。

というわけでラジオ体操にもそろそろ飽きてきたころ美形さんが帰ってきた。


あれ?兵隊さんがいない。で、代わりに別の誰かさんが一人いる。

美形さんと誰かさん、ってこっちも綺麗な人だな!目の保養もだんだん毒になってくるぞ!静かに腹が立ってきた。


よし、機会があったら今度ぜひともあの兵隊さんと仲良くなろう。


とわたしが兵隊さんに何気なく失礼なことを考えていると二人がわたしの前に立った。

ところでわたしはラジオ体操を黙々と繰り返していたわけで、ちょうど何回目かの深呼吸のポーズ、つま先を伸ばした万歳に近い格好で二人を迎えた。


・・・二人してそんな顔しなくても。


同シリーズの掌編もはじめました。やらかしました。しゃあない読んでやんよ!ってかっこいい方はどうぞ。

ただ、より趣味に走っていてとても面白くないです。本編も面白くないがな!知ってる!

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