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16、くろやぎはなにを書いたのか

厳重なセキュリティ、衛兵っていうのかな、を、いくつか乗り越え、

といってもサンファルさんいたからなんともなかったけど。


辿り着いた陛下のお部屋は、やっぱり最上の設えなんだろう、廊下よりさっきの部屋よりずっと繊細緻密でかつ、下品やじゃまにはならない模様がいたるところに施されている。

さっきの部屋より広いのは言うまでもない。

部屋の隅という隅、細部という細部まで、気を抜かなかったのだろう職人の想いが始終縦横無尽に張巡らされているかのような、なんともいえない風格があった。


思ったより、簡素な部屋だったのだけど、いや、充分うわあ、って感じだけどね。

陛下曰くごたごたしてて鬱陶しかったので帝位に即位した時にいろいろ運び出したとか。

必要最低限しか置かないんだと。さいですか。


ロココ調とか、お似合いだと思いますけどね。


かくいうわたしは、さっきから陛下が黙々と書類らしきものを片付けていくのをソファに座って眺めている。


暇だ。ものすごく。

そして眠い。ものすごく。


寝るには少し早い時間帯、時計ないからよくわかんないけど、なような気がするけど、いろいろあって体は疲れたらしい。眠い。

うつらうつらする。


ソファも悪い。

ふわんふわん2号さんなのだ。

おぬし、あやつの親類であるな。そうであろう。

おぬしもわるよのお。ほっほっほ。


うー。うつらうつらする。


「へーか」

「・・・なんだ」


積み上げられた書類から目を離さないものの、返事はくれる。

律儀な人だ。


「お仕事をおじゃまして大変申し訳ないのですが」

「ああ」

「眠いです」


そこでふと顔をあげてこちらを向く陛下。


「寝ればいいのでは?」


いやいやいやいや。

おかしいでしょう。


「陛下が!わたしをお呼びになったんじゃないですか!御用はなんですか」


しーかたがないのでお手紙かーいた

さっきの手紙のごようじなあに!


お手紙じゃないけど!


だめ。

やぎさんじゃなくてひつじさんが飛んできそうだよ。


「・・・めえ」

「め?」

「あれ、わたし口に出してました?」


いかんな。眠くて口が緩くなってる。


陛下がこっち見てるけど、ひつじの鳴きまねしましたなんて正直に言うほどわたし、正直でもないし。


「なんでもないです。それより、御用は」


なあに?


「用、というほどのものでもないがな」


そう言って陛下が書類から手を放したちょうどそのとき、上品なノックの音が響いた。


・・・アメリ?


ってちょっと思ったけど、陛下の許可のあとにこれまた品よく部屋に入ってきたのは初老のスマートな男性だった。


こ、これは!

ひつじ!

じゃない、しつじ!


セバスチャンだ、セバスチャン。

絶対この人セバスチャンさんだ。まさしくセバスチャンイメージを具現化してる!

帰還不可能フラグ回避のため王道踏襲ダメ!ゼッタイ!って思ってたけど、これはいい。


セバスチャンさんは素早く陛下の机の上にティーセット一式を並べると、アメリ初登場時の如く、サッと部屋を出て行ってしまった。


声を掛ける暇もなかったよ。

いや、古語で話しかけていいのかわからないから黙ってるつもりでいたけど。


だけど、一応わたしにも一礼してくださったのはプロだ。さすが。惚れてまうやろ。


さて、セバスチャンさんのおかげで陛下の手が止まった。


陛下、休憩も必要だと思う!

だから、わたしの疑問解決に手を貸してくださいな!


「陛下!質問です!」


手を挙げ、意を決して告げると陛下は目で促した。


「異世界について話したとき、サンファルさん、シエル・ガーデンで納得しかけちゃいましたよね?」


シエル・ガーデン。

この言葉はサンファルさんの口の滑りを悪くした。


どうしてですか、と尋ねると陛下はあっさりと教えてくれた。


「シエル・ガーデンは皇帝と、皇帝に許されたものしか入れない。神聖で尊いとされているからな。」


あ、だからあの人気のなさとあの警備。納得。



・・・うん?


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