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第6話 何故?

 それから、ヴェルグレドとジーフリトはとても仲良くなった。二人は、根っからの善人であり、とても気が合うのだ。

 ジーフリトの助力もあり、ヴェルグレドとルクシアは予想以上にスムーズに下山し、魔族領入りを果たした。


 ヴェルグレドが驚いたのは、魔族領に入ったからといって何か特別に変わるわけでもなかったことだ。植生や気候も見た感じ全く同じ。体感少し暑いか?


 ルクシアは、ジーフリトが同行し始めてからずっと黙っている。怒ってるのかと思って聞いてみても無視された。


「いやー穏やかだねぇ」


 今ヴェルグレドたちは軽く舗装された街道を歩いている。両脇は広々とした野原、遠くの方に鬱蒼とした森が見える。

 ヴェルグレドはジーフリトの方を見る。ジーフリトは、魔族領に入ってからずっとぴりぴりしていて、なんだか気まずい。


「ジーフリト?」


「………」


 仕方ないので変顔を作ってジーフリトを睨んでみる。


「……あぁ、すまない。どうしたんだい? ヴェルグレド」


「いや、そういえば、君が魔族領を目指していた理由を聞いていなかったと思ってね」


「あぁ」


 ヴェルグレドの問いに、ジーフリトがしばし沈黙した。なぜかルクシアがヴェルグレドを睨んできた。


「それは、ひとえに言ってしまえば、魔王に会うためだね」


「それは奇遇だ! 実は私たちも魔王に会いに行くところなんだ!」


 ジーフリトが目を見開く。

 いやーまさか同じ目的だったとは。勇者が同行してくれるんだったらもう怖いものはないな!


「……そうか、君たちも派遣されたのか。つまりあの予言が言うところの仲間は、君たちのことなのかな」


 ジーフリトがぼそぼそと呟いている。そして、今度ははっきりとヴェルグレドに聞いてくる。


「つまり、君たちも勇者だったのか。どこの国から来たんだい?」


「えっ?? あー、えっと。うん??」


 ヴェルグレドが言い淀んでいると、ルクシアが前に出て答えてくれる。


「私たちは予言を受けてフリンスト共和国から派遣された勇者だ。今まで隠していてすまなかった」


「!?」


 そうか! 自分たちは勇者だったのか! いやー気づかなかったなぁ。いったいいつ勇者になったんだろうか。


「そうだったんだね。うん、じゃあ改めて、魔王討伐に向け、頑張ろう!」


「!?!??!?!?」


 ルクシアとジーフリトが勝手に話を進めていて、ヴェルグレドは完全に蚊帳の外だ。もう、逃げ出そうかな。





 ヴェルグレドたち勇者(?)一行は魔族領に入ってから初めて人が住んでいそうな場所を見つけていた。見た限りはどこにでもありそうなのどかな村で、規模も小さい。


 三人は茂みに隠れて話し合っていた。ジーフリトがヴェルグレドに意見を求めてくる。


「さあ、ヴェルグレド、君ならどうする?」


「え? どうするも何も、あの村に行こうよ」


「なっ、それは正面から、という意味かい? なかなか豪胆だね。」


 いったい何を言っているのだろうか。だが、彼が何を言っているにせよそろそろまともな食事をとりたいし、村に行くのは決定でいいだろう。


 ヴェルグレドは茂みから出て村のほうに歩きだす。その隣に並んでジーフリトもついてくる。ジーフリトはなぜか剣を鞘から抜いてて戦闘態勢だ。勇者はいつでも気を抜かないんだなぁ。かっこいいなぁ。


 そして、二人は村の入り口に立った。ジーフリトが大声で叫ぶ。


「僕はイズワール王国の勇者ジーフリトだ! 降伏しろ! さすれば危害は加えない!」


 いくつかの家から人が出てきてこちらを伺う。遠くの方からも何人かが恐る恐る顔を出してきているのが見えた。どの人もみんな頭に特徴的な角を携えている。でもそれ以外の点で人族との違いは見受けられなかった。


 そして、ヴェルグレドはあんぐりと口を開けたまま思考停止していた。もう何が何だかわからない。ただ食べ物が欲しかっただけなのに。それにルクシアもいなくなってるし。



 しばらく村の人たちで話し合ってるが、結論が出そうな雰囲気ではない。そんな中、一人の魔族の青年がヴェルグレドとジーフリトの前に出てきた。


「お、お前が魔王様を殺す勇者っていうなら、俺がここでこ、こ、殺してやる!」


「へぇ、君が、僕を?」


 ジーフリトはもう完全に戦闘モードである。ヴェルグレドはその殺気に身震いして一歩下がった。


「お、俺はこの村の用心棒、ゴルンだ!」


「勇者、ジーフリト」


 二人が名乗った後、一瞬の凪。ヴェルグレドが瞬きしたときには、ゴルンという青年の首は落ちていた。青年の体が倒れ、地面に血の海が広がる。

 周りの村人の誰かが悲鳴を上げる。それが連鎖していき、その場にいる村人はパニックに陥った。



 ヴェルグレドは、落ちている青年の首を眺めていた。闘志に満ち溢れているようで、どこか恐怖を浮かべている、その顔。瞳孔は大きく拡大し、肌は生気を失っている。

 すべてがスローモーションのようだ。村人が逃げ惑って、ジーフリトが剣を収める。


 わからない。わからない。なんで? なんで、あんなにいい人だったジーフリトが、こうも簡単に人を殺めてしまうの?



 ――でも………救けなければ。

 ヴェルグレドは、無意識に詠唱を開始していた。



『死者よ、わが呼び声に応えよ。』

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