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7.第六皇女様から熱烈な手紙いただきました

 皇族のお茶会からしばらく経って皇宮から手紙がユリアのもとに届いた。


「王女様。皇宮からお手紙が届いておりますが」


 ロザリーがユリアに手紙を渡した。


「皇宮から?誰が何のご用かしら?」


 ユリアが封を切って手紙を取り出し広げた。

 手紙は第六皇女のフリージアからだった。


『ユーフィラシア王国第三王女ユリア様

 先日でのお茶会では身内が失礼を申し上げたことをまずはお詫び申し上げます。

 もうすぐフレイムお兄様のお妃になられるので、お姉様とお呼びさせていただきますね。

 お茶会でのお姉様の堂々となさっているお姿や豊富な知識をお持ちであることにとても感銘いたしました。

 わたくしはお姉様ともっとお近づきになりたくて手紙を書かせていただきました。

 早くお姉様会いたくて会いたくて仕方ありません。

 つきましては二人っきりでお会いできればと思い、早々にそちらの邸宅にお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか。

 お返事お待ちしています。

     お姉様が恋しいフリージアより』


 ユリアは読み終わるとロザリーに手紙を渡した。


「拝見しても?」


 ユリアは頷いた。


「まあ、なんて熱烈なお手紙でしょう」


 ロザリーが顔を赤くして言った。


「何を言っているの、ロザリー。相手は皇女様よ。戦利品のわたくしにそんなはずないわ」


 ユリアは何か企んでいるのだろうかと考えた。それなら万全の準備をしてお迎えさせていただかなければとユリアは思った。

 ユリアはフリージアに返事を書いた。だいたい邸宅でいるのでいつでもかまわないという内容だ。

 そしてもう一枚、皇宮の執務室にいるフレイムに向けて、フリージアが手紙をくれたことと、邸宅に招待するつもりであることを手紙にしたためた。


「ロザリー、この手紙をすぐに皇宮の執務室にいるフレイム様と第六皇女様に届けてもらうよう侍従に頼んでちょうだい。渡したらいつ皇女様が来てもいいように準備に取り掛かるわよ」


 ユリアはそう言ってロザリーに手紙を渡した。


「かしこまりました」


 ロザリーは手紙を受け取りユリアに向かってニヤニヤと笑った。

 ユリアはフリージアを迎える準備をするために応接室に行った。


 ユリアは侍女を呼んで応接室に淡い紫の花を飾るように言った。

 ロザリーが手紙を侍従に渡して応接室に入って来た。


「ここにいらしたのですね。部屋に行ってもいらっしゃらなかったのでどこに行ったかと」


「皇女様がいついらしてもいいように準備をね。しばらくは出来るだけ紫の花を中心に飾ってちょうだい。あとケーキ系のお菓子も毎日色々用意してもらうよう厨房にお願いできるかしら?皇女様が来なかったら皆さんで食べるように言ってちょうだい」


「どうして紫の花ですか?お菓子もクッキー系なら日持ちしますよ」


 ロザリーは不思議そうに言った。


「第六皇女様はこの間のお茶会で淡い紫のドレスをお召しだったわ。若い方があまり好んで着ない紫をお召しということはきっとお好きだと思うの紫色が。お菓子もクッキー系よりケーキ系を好んで食べていたわ」


 ロザリーは驚いた。


「よく観察なさっていたのですね。じゃあ、もしかして他の方も覚えていらっしゃるのですか?」


 ユリアはにっこり笑って答えた。


「皇太子妃エレノア様は深い青に薄い水色のレースが施されたドレス、彼女はお菓子には手を出さずお茶だけを、第二皇子妃フローラ様は臙脂色に宝石を散りばめたドレスをお菓子は色々な種類を一つずつ食べていたわ。第三皇子妃ソフィア様は鮮やかな青に金の刺繍を施したドレス…」


「もういいです、王女様。皇子妃様たちの趣味を知りたいわけではありませんから」


 ロザリーはウンザリした顔で言った。


「王女様はどうしてそのようなこと覚えていらっしゃるのですか?」


「敵を制するにはまず敵を知らなければね。戦いの場においても相手の動きや癖を知ることが大事なの。一瞬にして相手を観察して記憶するのは戦場で身についたものよ」


 ユリアはそう言ってロザリーを見た。ロザリーはユリアの後ろを凝視していた。

 ユリアは咄嗟にその場を離れて振り返った。


 ユリアが話しているときフレイムが静かに応接室に入って来て、ロザリーに向かって人差し指を口元に立て黙っているように指示し、ユリアの後ろに近づいた。

 フレイムはユリアを後ろから抱きしめようとした瞬間ユリアがその場を離れてしまい、引っ込みのつかなくなった手で自分を抱きしめた。


「フレイム様?」


 ユリアは両腕で自分を抱きしめているフレイムを見てちょっと引いた。


「あ、いやこれは…」


 フレイムは慌てて両腕を回して体操をしている振りをした。

 一部始終見ていたロザリーは笑いを堪えるのに必死だった。


「んんっ…」


 フレイムが咳払いをするとロザリーは慌ててお辞儀をして出て行った。ロザリーはまだ笑いを堪えていた。


「応接室で何を?」


 気まずそうな顔をしてフレイムがユリアに聞いた。


「第六皇女様がお見えになるので準備をと。ご相談もせずに申し訳ありません」


 ユリアは頭を下げて丁寧に謝罪した。


「いや、謝る必要はない。手紙は読んだ。君はこの邸宅の女主なのだから何しても構わない」


 フレイムは微笑みながら言った。


「ありがとうございます」


 ユリアも微笑み返した。


「フリージアは素直で裏表のない子だ。仲良くしてくれたら嬉しい」


「はい、承知いたしました。ところで今日は早かったのですね?」


「君から手紙を貰って、会いたくなったから早めに切り上げた。今日は…その…身体の調子は…どうだい…?」


 フレイムは視線を合わせず言葉を濁しながら言った。

 ユリアはピンときた。婚前交渉のお伺いを立てているのだ。


「ああっ、急に眩暈が……」


 ユリアは芝居じみた言葉を発してしゃがみ込んだ。


「ユリア!」


 フレイムはユリアを抱き抱え、早足で自分の寝室に連れて行ってベッドに寝かせた。


(え、ちょっと待って、ここはフレイム様の寝室のベッドよね⁈)


 ユリアは起き上がってベッドから降りようとしたが、フレイムに抑えられまた横たわった。


「あ、あのどうしてここに…?」


「一晩中君を介抱するためだよ。君に何かあってはいけないからね。さあ一緒に寝よう」


 フレイムはそう言うとユリアの額に優しく口付けた。

 ユリアは一瞬で飛び起きた。


「も、もう大丈夫ですので、部屋に戻りますわ!」


 ユリアはそう言うと慌ててベッドから降り、駆け足で自分の部屋に繋がるドアまで行き、ドアを開けて自分の部屋に飛び込んだ。

 ユリアはドアを閉めるとドアの前に真っ赤な顔をして座り込んだ。

 フレイムはクスクスと笑っていた。


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