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4.皇族のお茶会に参加しました①

 ユリアのジョギングにフレイムが同行することに慣れたころ、皇宮からお茶会の招待状がユリア宛に届いた。

 主催者は皇太子妃エレノアで、皇帝の妃を除く王族の女性だけが集まるようだった。

 ユリアは喜んだ。どうせ敗戦国の戦利品王女なんて馬鹿にして虐めてくるに違いないと思った。


「お茶会に参加しようと思いますの。何か帝国の作法とかございますか?」


 ユリアはフレイムに聞いた。


「行かなくていい。どうせ自分らの自慢話とユリアを笑いものにしよう考えてるに違いないから」


 フレイムはそう言ったが、ユリアはそれを聞いてますます行きたくなった。

 フレイムはあまりいい顔はしなかったが、ユリアがどうしてもと言うなら反対はしなかった。


「そうと決まれば、早速準備に取り掛からなければ。サバイバルに必要なものは何が起きても動じない武器ですわ」


「武器って戦争にでも行くみたいだな」


 フレイムは驚いた顔をしたが、言った後で笑った。


「武器といっても人を傷つける武器ではありません。自分を守るための盾となる作法と相手をいいまかせるだけの剣となる知識ですわ」


 ユリアは自信満々に言った。フレイムはユリアなら難なく事を終わらせそうだと思ったが、相手が皇族だけに心配だった。


 ユリアはロザリーに帝国でのお茶会のマナーを教えてもらった。それと同時に帝国の歴史や現時点での貴族や政務に携わる人物、領地のことなど、10日間で詰め込んだ。


「ユリア王女様、さすがです。この短期間でここまで把握できるなんて、帝国でもそこまでの方はいらっしゃらないと思います」


「ありがとう、寝る間も惜しんで頑張りましたわ」


 ロザリーがふと思い出したように聞いた。


「ドレスはどうしますか?」


「まあ、ドレスのことなど考えていませんでした。王国から持ってきたドレスしかないのでそれでかまいませんわ」


 ロザリーがクローゼットの中を見た。


「帝国で流行りのドレスに比べたら野暮ったいものばかりですね…攻撃の対象になりかねないです」


 ロザリーは気落ちした声で言った。


「まあロザリー、心配なさらないで。それこそわたくしの本望ですわ。攻撃してきた相手をどのようにして反撃するか、考えるだけでもこんなに楽しいことなんてありませんわ」


 ユリアは笑った。


「さすがユリア王女様!わたしはどこまでも着いていきますわ!」


 ユリアとロザリーの会話を他の侍女たちが聞いて面白がっている者もいれば、呆れてている者もいた。



 お茶会当日。

 ユリアはロザリーを連れて皇宮の温室を訪れた。温室でお茶会が開かれるためだ。

 ユリアが温室の中に入るとすでに他の皇族は集まっていて冷たい視線をユリアに送ってきた。


「初めまして。ユーフィラシア王国第三王女ユリアと申します。本日はこのような格式高いお茶会にお誘いいただきまして光栄でございます」


 ユリアの所作は完璧だった。

 文句の一つでも言ってやろうと構えていた者もいたが、言葉に出来なかった。

 ユリアの後ろでロザリーが鼻高だかにしていた。


「お座りなさい」


 エレノアが言った。ユリアの席は長テーブルの一番後方だった。


「ユリア様は初めてなので一人ずつ自己紹介しますわね。わたくしは皇太子妃エレノアです。わたくしの右隣のこの方は第二皇子妃のフローラ様、その隣が第三皇子妃のソフィア様、その隣が第四皇子殿下の婚約者イザベラ様、わたくしの左隣が第三皇女セレスティア様、そのお隣が第四皇女リリアーナ様、そのお隣が第六皇女フリージア様ですわ。覚えていただけましたかしら?」


 エレノアは早口で淡々と紹介した。

 皇子妃たちがクスクス笑った。


「はい、覚えさせていただきました」


 ユリアはにっこり笑って言った。


「本当かしら?ではわたくしは誰です?」


 第三皇子妃のソフィアが言った。


「第三皇子妃のソフィア様ですね。よろしくお願いいたします」


 ユリアは余裕の笑顔で答えた。ソフィアは「偶然だわ」とボソリと言った。


「ではわたくしは?わかるかしら?」


「はい。第四皇子殿下の婚約者イザベラ様。今後ともよろしくお願いします」


 イザベラは皇族の初めてのお茶会のとき名前が混同して覚えられなかったので悔しかった。

 しばらく名前当てごっこが続いた。一周したら終わるかと思ったら、途中で同じ人が聞いてくるので時間がかかった。

 ユリアは一度も間違う事なく答えたが、そろそろ飽きてきた。

 こちらが用意した武器をガツンと一発かますぐらいの陰険なお遊びはしてくれないのかと思った。

 ならばこちらから仕掛けようではないかとユリアは嫌味を言ってみた。


「名前当てごっこなんて皇室では面白い遊びが流行っているのですね。もっと高貴な遊びを教えていただけるかと期待してまいりましたのに」


 ユリアは笑顔で言いながら妃たちの顔を見た。

 妃たちは不愉快な顔や怪訝そうな顔をしていた。


(さあここからが本番ですわよ。どう仕掛けてきますか?)


 ユリアはワクワクした。

 口火を切ったのはソフィアだった。


「ユーフィラシア王国は帝国に負けて属国おなりになったのよね?敗戦国になってさぞかし大変だったでしょう?帝国にお情けをかけていただいたのよね?」


 ほらほらきたきたとユリアは心が躍った。


「はい、そうですね。でも帝国が侵略戦争をしかけてきても国境でずっと食い止めていましたので、街に戦火が広がることもなくさほど被害はありませんでしたので、帝国にお情けをかけてもらってはいませんわ」


「まあ、それではどうして敗戦なされたの?」


 ソフィアはほくそ笑んで言った。


「戦いは五分五分でした。帝国側が脅してきたからです。国境から流れる大事な水資源の川に大量の猛毒を撒くぞと。川が汚染されると農地などに大変な被害がでますし、人の命も危険ですから。まさかそんな卑怯なやり口を帝国が行うなんて思ってもいませんでしたわ。それとも勝てそうにないと判断した参謀長官が勝手になさったことなのかしら?まさか立派な皇帝がそんな姑息な手を使うわけありませんわよね?皆様は実情をご存知ですか?」


 ユリアもほくそ笑んで言った。


「それは…」


 ソフィアが反論しかけたとき、エレノアが止めた。


「戦争の話はそこまでに。事情をよく知りもしないで話題にすると帝国の恥を晒しますよ、ソフィア様」


 ソフィアは唇を噛み締めた。


(はい、第一ラウンド勝利!)


 ユリアは心の中で叫んだ。


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