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22.旅先でもサプライズでサバイバルさせていただきました

 皇帝の許可を得てユリアとフレイムの結婚式は建国記念祭の最終日に決まった。

 あと半月もないなかで、フレイムの邸宅の使用人たちは大喜びで殺人的スケジュールをこなそうと頑張ってくれていた。

 みんなが忙殺の日々を送るなか、フレイムとユリアは首都を離れお忍びで旅行に出ていた。

 海の近くのコテージで建国記念祭の前々日まで過ごす予定だった。

 二人は浜辺に座って夕陽を眺めていた。


「みんなが結婚式の準備で頑張っているのに旅行だなんて申し訳ないわ」


「仕方ないさ、母上がどうしてもと言うのだから。新婚旅行の先取りだと考えよう」


 ユリアはフレイムの新婚旅行の言葉が引っかかった。


「新婚旅行の先取りだとしても、婚姻を交わすまでは致しませんから!」


 フレイムは片眉を上げて笑いながら言った。


「バレたか。さすが鋭いな」


 ユリアはフレイムとの会話を楽しみながら、ダイアナのことが気がかりで仕方なかった。




 ダイアナはユリアとフレイムの婚約が正式に決まったすぐ後、皇后に呼び出された。


「ユーフィラシア王国の第三王女とフレイムの婚約が正式に決まった。ダイアナは何をしておったの!さっさと追い出すのではなかったの!」


 ダイアナはそのつもりだったがユリアと交流するうちにユリアが好きになっていた。しかも、フレイムのために命を惜しまず戦いにまで行ってくれたのだ。


「恐れながら申し上げます。わたくしはフレイムとユリア嬢の婚姻を祝福したいと思っています」


「なんですって⁈」


 皇妃の顔は怒りに歪んだ。


「そなたはわたくしに逆らうの!」


「申し訳ありません、陛下。わたくしも最初は反対でした。ユリア嬢がフレイムには釣り合わないと思ったからでございます。だから陛下の意向にも賛同致しました。しかしながら、ユリア嬢を知れば知るほどフレイムが夢中になるのがわかったのでございます。どうかお許しください」


 ダイアナは頭を深く下げた。


「もうよいわ!そなたなど最初から当てにしなければよかった。フレイムはヴィクトールにとって必要でもあり、脅威にもなるのよ。脅威になるぐらいなら消えてもらわねばならない。ユリアが消えるか、フレイムが消えるか!」


 皇妃はそれだけ言うと退室した。


 ダイアナは大勢の前で結婚式を挙げれば皇妃は諦めるだろうと思った。

 それまでは危険だから身を隠しておいて欲しいとフレイムとユリアはダイアナに懇願された。




 夕陽が沈んだ。

 ユリアとフレイムはコテージに戻って夕食を食べた。

 今日は満月だった。フレイムは月明かりに照らされて泳ぐユリアの美しい姿をまた見たいと思った。


「夕食後、また浜辺に行かないか?満月が綺麗だ。できれば海で泳ぎたい」


「夜に泳ぐのですか?明日の日中に泳ぎませんか?」


 フレイムは今日泳ぎたいと言い張った。

 ユリアはため息をついてどうしてそんなに夜に泳ぎたいのかを聞いた。

 フレイムは少し顔を赤らめて横に向いて黙った。

 ユリアは仕方ないので話題を変えた。


「第七皇妃様が言うように、わたくしたちが結婚したからといって皇后陛下が諦めると思いますか?」


 ユリアが聞いた。

 フレイムは苦笑いしながら答えた。


「ユリアと結婚して諦めるのはわたしを味方につけることだろうな。そうなればわたしはヴィクトール皇太子にとって脅威となるだろうから、排除しようとするだろう。ヴィクトールに跪いて忠誠を誓うか、帝国を出てヴィクトールの手出しできないように独立するか、もしくは反乱を企てるか、だな」


 フレイムはユリアの方に向いて言った。


「ユリアはどれがいい?」


 フレイムはニヤリと笑った。

 ユリアはその余裕はどこからくるのだろうと思った。

 ユリアは考えた。

 ヴィクトールに跪くフレイムは見たくない。一生ヴィクトールに縛られて生きるなんてごめんだと思った。

 反乱は帝国内に大勢の味方を作る必要がある。フレイムを慕っている騎士は大勢いるが、貴族を第五皇子の味方につけるのは難しいだろう。それに首都圏での戦になれば大勢の民に被害が出る。

 選択肢は一つ。属国を貰い受けて独立をすることだ。ちょうどトワイト王国に派遣が必要だ。


「挙式後、トワイト王国に移住しましょう。ちょうど派遣が必要だし、どうせあの国王は国をまともに再建できるとは思えません。乗っ取りましょう」


 ユリアはにっこり笑って言った。

 フレイムは驚いた顔をしたがすぐに微笑んで言った。


「わたしも同じことを考えていた。乗っ取ろうとは思っていなかったがな」


「そうと決まれば細かい打ち合わせをしましょう」


 ユリアはワクワクしながら言った。


「その前に夜泳だ」


 フレイムは諦めていなかった。ユリアは仕方なく諦めて泳ぐことにした。

 ユリアとフレイムがコテージから出て浜辺を歩いていると、黒装束の集団が突然やって来て二人を囲んだ。


「誰だ!」


 フレイムが叫ぶとすぐに護衛で見守っていたイーサンたち騎士らが駆けつけた。

 イーサンは剣をフレイムに投げ渡した。


「ユリア、わたしから離れるな」


 ユリアは剣を持っていなかったので素直に頷いた。

 フレイムも護衛騎士たちも黒装束の集団をものともしなかった。


「女を狙え!人質にするんだ!そうしないと剣の達人揃いばかりいるからわたしらがやられる!」


 リーダーらしき者が叫んだ。

 ユリアは口調から盗賊ではないと思った。それにフレイムたちのことを把握しているような口振りだ。皇后の手先かもしれないとユリアは思った。


 ユリアを執拗に狙ってくる。フレイムはユリアを庇いながら戦っているので気を抜けない状態だ。

 ユリアはフレイムの負担になっていることが悔しかった。剣さえあればと思っていたとき、やられた黒装束の剣がユリアの足元に落ちてきた。ユリアはその剣素早くを拾った。

 ユリアは雑魚どもを交わしながら先ほどのリーダー格の男のもとへ行った。


「わざわざそっちから来てくれるとはありがたいな!」


 リーダー格の男が言った。


「女だからと言って舐められたものですこと。後悔しないでくださいね」


 ユリアは剣を交えながら相手の脇腹を蹴り入れ、すぐに急所を蹴った。

 リーダー格の男は倒れて悶え苦しんだ。

 ユリアは男の喉に剣を突き立てた。


「バカですこと。鎧なしに戦いを挑むなら急所はしっかり保護板でも入れておかないと。格好つけて黒装束なんかにしてるから」


 リーダー格の男がやられているのを見て、残っていた者が逃げた。

 騎士たちは後を追ったがフレイムが深追いをするなと叫んだので逃がした。

 フレイムはリーダー格の男のもとに来た。


「よくもユリアの月光の女神を見る邪魔をしてくれたな」


 ユリアは何それと思ったが、フレイムは本気で怒っていた。

 騎士が男を縄で縛り、コテージに連れて行って男の頭の装束を取った。

 男は顔を見られたくなかったらしく床に顔をつけたが、騎士に持ち上げられた。


「お前は……」


 フレイムは見たことあるようだった。


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