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21.婚約したばかりですがもう結婚ですか⁈

 ユリアが目を覚ますとフレイムがすぐ横で眠っていた。

 ユリアはびっくりしてベッドから降りようとしたときフレイムに腕を掴まれ抱きかかえられた。


「フレイム様、目を閉じて寝たふりしてもダメです。起きていることはわかっています。離してください!」


 ユリアが言うとフレイムは強く抱きしめた。


「ユリアがわたしのものになったことを実感させてくれ…」


「!!…もしかして昨夜……」


 ユリアは焦った。何も覚えていない。服の乱れは多少ある。まさか……。


「昨夜のことは覚えていないのか?」


 フレイムは抱きしめた手を緩めることなく優しく聞いた。

 ユリアは昨夜のことを思い浮かべていた。


 ユリアはフレイムがどうして浴槽を広くしたのか、秘密だと言われてどうしても知りたくなった。

 フレイムを酔わせて聞き出そうとしたが、自分も一緒に飲んだので酔ってしまった。

 何かフレイムが浴槽のことで言った気がするが覚えていない。その後のことは全く記憶になかった。

 ユリアは手で顔を覆った。頭の中を整理できなかった。


「ユリア、泣いているのか?心配ない。正式にわたしの婚約者になったと言う意味だ。何もなかったよ」


 フレイムはユリアが泣いていると思い焦って言った。

 ユリアは大きくため息をついた。ごちゃごちゃしていた頭や胸の辺りがスッと楽になった。


「フレイム様、もう起きませんか?お腹がすきましたし、フレイム様は暑苦しいですわ」


ユリアはわざと突き放すように言った。


「ユリア……」


 フレイムは悲しそうな声を出し、ユリアから腕を退けた。

 ユリアはサッとベッドから降りて振り向きもせず自分の部屋に続くドアの前に立ち、そこで振り返った。

 フレイムは今にも泣きそうな寂しそうな顔をしていた。


「先ほどのお返しです!」


 ユリアはそう言うとフレイムに満面の笑顔を向けてから自分の部屋に入った。

 部屋ではロザリーが衣装を準備して待っていた。その顔には意味深な笑みが浮かんでいた。

 ロザリーはユリアの髪を溶かしながらニヤニヤしながら言った。


「昨日はお疲れでしょう。戦から帰ったばかりなのに殿下と熱い夜をお過ごしになられて」


 ユリアは眉をしかめた。


「熱い夜とは何かしら?確かにワインを飲み過ぎて顔が火照ったけれど?」


 ロザリーは髪を溶かしていた手を止めてユリアの顔を覗き込んだ。


「ワインを飲んだだけですか⁈」


「ええ、ちょっと飲み過ぎてそのまま寝てしまったみたい。フレイム様が自分のベッドに運んでくれたようだわ」


 ロザリーはユリアの言葉を聞いて呆然とした。みんなで両手をあげて喜んだのにぬか喜びだった。

 ロザリーはみんなに真実をどうやって告げようかと考えあぐねた。


「そういえば王女様。第七皇妃様が殿下に会いに来られていまして、応接室でお待ちなのです。」


「まあ、ロザリー。それは早くフレイム様にお伝えしないと。いつからおまちなの?」


 ロザリーは少し考えてから言った。


「朝早くからお見えでしたので、かれこれ三時間ほどになるかと」


「えっ!」


 ユリアは驚いて慌ててフレイムの部屋に行った。


「フレイム様!第七皇妃様がお越しになられて三時間ほど経つそうです!」


 ユリアがドアを開けながら言った。

 フレイムは着替え中で上半身が裸だった。


「ごめんなさい!」


 ユリアは慌ててドアを閉めた。


「どうなさったのですか?」


 ロザリーは真っ赤な顔をしているユリアを見て心配そうに言った。


「だ、大丈夫……それよりわたくしも早く支度しませんと…」


 ユリアは支度を済ませると急いで応接室に向かった。

 ドアをノックして入るとフレイムはすでに来ていた。


「第七皇妃様にご挨拶申し上げます」


 ユリアが丁寧に挨拶するとダイアナはにこやかな顔をしてユリアを見た。


「ユリア嬢、わたくしたちの間でそんな畏まった挨拶は必要ないわ。あなたも早く座りなさい」


 ユリアは初めてダイアナに名前を呼ばれた。ユリアはいつもと違うダイアナの態度に少し警戒しながらフレイムの隣に座った。


「正式に婚約が認められたそうね。おめでとう。あのトワイト王国にも勝ったそうじゃないの。さすがフレイムね。ユリア嬢の助力もあったそうね」


 フレイムはあれだけユリアとのことを大反対していたダイアナの言葉とは思えなかった。


「ありがとうございます、母上。ユリアのことお認めになってくださったんですね。ユリアとは会ったことがあるのですか?」


「ええ、フレイムが遠征に出てからほぼ毎日ここに通いましたの、ねえユリア嬢?」


 ユリアは苦笑いしながら頷いた。


「そうですか。それで仲良くなられたのですね。母上もユリアの魅力に気づかれたのですね」


 フレイムはユリアを見つめながら嬉しそうに言った。

 ユリアは表面的にはどう考えても仲良くした覚えがないと思ったが、ダイアナもユリアと同じで楽しんでいたのかもしれないと考えた。

 ダイアナはフレイムの顔を見て、こんな嬉しそうな顔をするのはこどものとき以来だと思った。もっと早くに婚約を認めてあげれば良かったとも思った。


「それで?結婚式はいつにするか決めているの?早ければ早いほど良いわ。わたくしも早く孫の顔が見たいのよ」


「できればわたしも早く行いたいと思っています」


「バタバタしていて忘れるところだったけど、建国記念祭が半月後ね。ちょうど各国の主要がくるし、その日にあげてしまってはどう?」


「しかし、ウエディングドレスとかユリアの方も準備があるでしょうし」


「ウエディングドレスはわたくしのがあるわ。それを手直しすれば間に合うわ。ユリア嬢はもうすでにここに住んでいるのだから他に準備なんてないでしょう?」


 ユリアそっちのけでどんどん話が進んでいった。ユリアは結婚式自体にそれほど思い入れも興味もないので、考えずに済んで楽だわと思っていた。

 しかしユリアはできればまだ婚姻を結びたくはなかった。戦にしろ、旅にしろもっと自由に外の世界に出て見たいと思っていた。皇子妃という役職がつくとそれなりの任務を課せられるだろうから自由に動くことが困難になるのではないかと考えた。


「それじゃあ、式は記念祭の最終日ということで、早速陛下にお願いにまいりましょう」


 そう言うとダイアナは立ち上がった。


「母上、今すぐ行かなくても…謁見の許可も必要だし、わたしもユリアも起きてから何も食べていないので」


 フレイムが言うとダイアナは少し不安そうな顔をした。


「じゃあ今すぐに食べて来なさい。食べ終わったらすぐに陛下のところへ行くわよ」


「母上、何をそんなに焦っているのですか?」


 ダイアナはビクッとして俯いた。肩が少し震えているのをユリアは見逃さなかった。


「皇妃様、何か不安なことがあるのですね?おしゃってください。フレイム様もわたくしもいますから大丈夫です」


 ダイアナはしばらく黙っていたがフレイムに縋るように手を握った。


「……皇后陛下が邪魔をするかもしれないの…」


 聞こえるか聞こえないかぐらいの声でダイアナは言った。


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