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15.義母になるかもしれない方とのバトルは楽しい

 ユリアはいつものようにジョギングをしながら昨日のダイアナとの一戦のことを考えていた。

 料理人になる話は丁寧にお断りして、昨日はひとまず帰ってもらった。

 ダイアナは今日も午後からら来ると言って帰った。

 さすがはフレイムを産んだ方、一筋縄ではいかないとユリアは思った。単純そうだけど頑固なところは母親譲りなのねとフレイムのことを思い出し笑った。


「王女様、何を思い出し笑いをなさっているのですか?」


 少し離れてついて来ているイーサンが聞いた。


「イーサン、淑女に向かってその質問は失礼よ。紳士たるものそういう姿を見ても黙っているものよ」


 ユリアが言うとイーサンは頭をかいて頷いた。

 ユリアは今日はどんなバトルになるやらと楽しみにして邸宅に戻った。



 ダイアナがユリアのもとに通い始めて数日経った。

 相変わらずダイアナはユリアを追い出すための言葉を並べ立てたが、初めの頃のような必死さは見られなかった。それどころか、ユリアの作ったお菓子を楽しみにしたり、お茶を飲んでくつろいだりしているように見えた。

 ユリアもダイアナと言葉のバトルを繰り広げることが楽しかった。話の内容は別として、母親が生きていたらこんな感じなのかなと思った。



 ある日の午後、ユリアは馬車が到着したと侍女から伝えられ玄関に出迎えにいくと、フリージアの姿が見えた。


「ユリアお姉様!」


 フリージアはユリアに駆け寄って抱きついた。


「まあ、フリージア様。どうなされましたか?」


「お姉様にお会いしたかったのです」


 フリージアはユリアから離れようとしなかった。

 ダイアナが寄って来て言った。


「フリージア様、とりあえず中に入りましょう。このようなところで王女もお困りのようですよ」


 フリージアは渋々ユリアから離れたが、腕を取って一緒に応接室まで行った。

 応接室でもフリージアはユリアの横に座りべったりだった。


「フリージア様はいつからそんなに王女のことをお気に召したのかしら?」


 ダイアナが聞くとフリージアは即答した。


「はじめからですわ。お茶会で初めて会ったときからです。それから一度こちらにお邪魔してますます好きになりましたの。それなのにお母様ったらユリアお姉様に会ってはいけないなんて言うのですもの」


 フリージアは頬を膨らませてプンプン怒った。ユリアはなんて可愛らしいと思った。


「ダイアナ様がお姉様の所に通っていることを聞きつけて一緒に連れて行ってとお願いしましたの。それならお母様も止めないと思って」


 フリージアはダイアナが何のために来ているのか知らないのねとユリアは思った。

 ダイアナはフリージアがいるためか、今日はひと言も追い出すような言葉を発しなかった。それどころかユリアとフリージアを微笑ましく見守っているようだった。


「お姉様のおかげでもう少しで刺繍が完成しますの。仕上がったら一番にお姉様に見せに来ますね」


 フリージアが嬉しそうに言った。


「王女は刺繍もできますの?」


 ダイアナが聞くとユリアが答える前にフリージアが答えた。


「そうなんです。わたくしができないで困っていると刺し方を丁寧に教えてくださったんです。建国記念祭までに仕上げたかったのでお姉様のおかげで十分間に合いますわ。本当にありがとうございます」


「そう、なんでもできるのね……」


 ダイアナは独り言のように呟いた。


「ところでお姉様、建国記念祭ではどのようなお召し物を着られるのですか?お姉様の女神姿はさぞかし美しいでしょうね」


 フリージアが言うとダイアナは眉を寄せて目を細めた。


「わたくしはまだ正式に婚約もしていないのでその行事には参加しませんわ」


 ユリアは慌てて言った。


「え、そうなのですか?どうしてですの?フレイムお兄様はあんなにもお姉様のこと大事になさっていますのに……ねぇ、ダイアナ様もそう思われますよね?」


 ダイアナは返答に困った。


「お父様ったら何をなさっているのかしら。早く正式に婚約させてあげればよろしいのに。わたくしお姉様と並んで凱旋したかったのに、つまらないわ」


「どのみちフレイム様が遠征からお戻りにならなかったらわたくしは建国記念祭には出ないで邸宅で過ごすつもりなのよ」


 ユリアが言うとダイアナは顔を背けて俯いた。


 突然部屋の外が騒がしくなって、応接室のドアが荒々しくノックされた。


「ユリア王女様、第五皇子殿下の補佐官を務めていますオスカー・ペリゴールです。失礼します」


 そう言うとドアが開いてオスカーとイーサが入って来た。


「これは第七皇妃殿下もお揃いでしたか。ちょうど報告したいことがございまして……実は今フレイム殿下の騎士の一人が早馬で帰って来まして……殿下が負傷されたとのことでした」


「何ですって⁈」


 ダイアナは叫び、顔を覆った。ユリアは思わず立ち上がってオスカーに駆け寄った。あのフレイムが負傷なんてあり得ないとユリアは思った。


「それで容態は?フレイム様は大丈夫なのですか?」


 ユリアはオスカーに詰め寄った。


「命に別状はないとの報告を受けましたが、容態はわかりません」


「で、トワイト王国は?戦の状況は?」


 ユリアはさらにオスカーに詰め寄った。


「今のところは帝国が有利だそうですが、フレイム殿下の負傷がトワイト王国に知れ渡ればあちらの士気が上がり、押される可能性もあるかと…」


 オスカーが言い終わらないうちにダイアナが叫んだ。


「ユリア!あなたのせいよ!あなたとの婚約を望まなければこんな危険な戦いに挑まずに済んだのに!全部全部あなたのせいだわ!」


 ダイアナは泣き崩れた。

 ユリアは何のことを言っているのかわからなかった。


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