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【完結】競竜師・外伝  作者: 敷知遠江守
呂級編

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第23話 謝罪会見

 一人残された犯人は、稲妻牧場の輸送担当。あまりの出来事に、ガタガタと膝を震わせてその場に座り込んでしまった。恐怖でじっとりと股間部分が濡れてしまっている。


「もう、もう駄目だ……妻も娘も……もう……お前たちのせいで……」


「それはどういう意味なんだ? おい! おい! 答えろ! おい!」


「お前たちには、どうせ何にもできやしない。あぁ……妻が……娘が……」


 虚ろな目でうなだれる犯人を、連合警察は警察車両に乗せ連行して行った。


 先ほど暴走した車は一般乗客のものであったらしい。「俺の車が!」と叫んでいる乗客がいる。その声を聞き、秋山が首を傾げた。


「そしたら、あの車はなんで爆発したんや? 人一人轢いたからいうて、普通爆発するか?」


「燃料庫に強い衝撃が加わったと考えるのが筋ではないでしょうか。例えば銃で狙撃したとか」


 高山のその一言で、秋山、十市、岡部、三浦、石川が一斉に輸送船の操舵室に視線を移す。

 石川がため息を付きながら、視線を丸焦げになった車に向けた。


「じゃあ、あの船会社、このほんの短い間に社員を二人も殺したってのかよ。どんな会社なんだよ……」


「古河牧場さんの話では、ヤクザとずぶずぶらしいですよ」


「なぬ? だって北国海洋開発っていえば、競竜の海上輸送を一手に請け負ってる会社だぞ?」


 すでに事情を聞いている岡部、十市、秋山は何の反応もしなかったが、三浦と石川は信じられないという顔で丸焦げになった車を凝視している。

 するとパンと十市が手を叩いた。


「これではっきりしたな。もうあの船会社は使えない。帰ったらそう会長に報告する。岡部、秋山、高山、お前たちも会派にそう進言してくれ。四つの連合の総意があれば、竜主会で反対はできないだろう」


「でも、いきなり使わないようにしようって言っても、来週にも輸送はありますよ? どうするんです?」


 十市の指示に、高山が指摘。すると岡部が即座に口を開いた。


「しばらくは止級の輸送船を運用してもらうように進言しますよ。開発者の話だと、あれは止級専用というわけじゃなくて、止級用に改装したものらしいですから。半年もあれば、会派の連中の事です、何かしら対応策が出せるでしょ」


 岡部の提案に、高山と十市が同時に頷いた。


 ここから先は竜主会の問題。自分たちがどうこうできる問題ではない。とりあえず、一件落着という事で一杯呑んで帰ろうと三浦が言い出した時であった。

「ちょっと待ってくれ」と石川が五人に声をかけた。


「うちの『オキクルミ』はどうなるんだ? 稲妻牧場の竜運車に乗せられたままなんだが? それと誰が競竜場まで運んでくれるんだ? 苫小牧まで高山が運んだから運転手がいないんだけど」


「あ……」


「おい、高山! 『あ……』じゃねえよ! 『あ……』じゃ! 言っただろうが、うちのは『白浜賞』を控えた大事な竜だって! お前、責任持って前橋までちゃんと届けろよな」


 逃げようとする高山の襟首をがっちりつかんで離さない石川を見て、三浦、十市、秋山、岡部は大笑いであった。


 ◇◇◇


 翌月、『オキクルミ』は無事『白浜賞』に挑戦。予選、最終予選と勝ち進み、決勝も見事に勝利。一方の高山も、『ペテガリ』を『新月賞』に挑戦させ、見事に決勝を勝利した。



 十二月に月が替わって数日が経ったある日の事。事務棟より、竜主会の緊急放送があるので食堂に集まるようにとの案内がされた。

 食堂の大画面には竜主会の会長でもある白詰会の一条会長と、執行会の会長でもある紅葉会の織田会長、雷雲会の武田会長が並んで立っている。どうやら記者会見の中継らしく、大勢の記者の姿が確認できる。


 まず最初に一条会長の口から、稲妻牧場の一部社員が生産監査会と結託し、竜の窃盗を行っていた事が語られた。

 大筋としては、本来販売する竜を別の竜と取り違えて海外へ輸出していた。その竜の選別を生産監査会と稲妻牧場が行っていて、販売額の差分を報酬として受け取っていたという内容であった。

 唯一逮捕された稲妻牧場の運転手から様々な事が供述されたらしい。それが一条会長から明かされたのだが、その内容は全て高山の推論を裏付けるものであった。


 次に織田会長の口から、盛岡競竜場と前橋競竜場の事務長が今回の件で逮捕されたという事が語られた。またそれに伴い幾人かの調教師も関与が疑われ、現在取り調べを受けているらしい。すでに逮捕されている元薄雪会の調教師の梁田もその一人で、すでに供述を始めているのだそうだ。


 二人が報告した内容は、その日の朝刊がバラバラに報じた事を総合して言っているだけではあった。ただ、新聞が報じたという事と、競竜の機関が報告したという事では意味が全く異なる。この会見はその事実を競竜の組織が公式に認めたという事になる。


 座っていた武田会長が、神妙な面持ちで椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。その瞬間、発光器が盛大に炊かれ、写真機のパシャパシャという音が鳴り響く。


「この度、当社の牧場の社員のせいで、多大なるご迷惑をおかけしてしまった事をここに謝罪いたします。また、それによって、瑞穂競竜の公正に対し著しく不信を抱かせる事になった事も、重ねてお詫びいたします。大変申し訳ございませんでした」


 再度、武田会長が深々と頭を下げ、発光器が盛大に炊かれる。


 その後、記者からの質疑応答の時間となった。

 まず真っ先に聞かれたのは、今回の騒動がそもそも誰からの提案であったのかという事。どう考えても稲妻牧場の一社員が提案して周囲を巻き込んだとは思えない。本当は雷雲会が主導していたのではないかという疑惑であった。


「稲妻牧場の意向が反映されやすい竜主会ではなく、執行会の監査に調査を行ってもらったところ、稲妻牧場の北国牧場の管理職の一人が、生産監査会の北国支部と結託し、北国海洋開発という船会社を巻き込んで行っていたという事が判明いたしました」


 武田会長の報告によると、主導が誰かまではまだ捜査中でわかっていないが、少なくとも稲妻牧場が主犯であった事は判明しているらしい。

 そうなると、記者たちの質問は当然、なぜこの場に生産監査会がいないのかという事になる。それには一条会長が回答した。


「今回の会見は竜主会の主催です。我々も競竜協会経由で共同開催を申し入れたのですが、残念ながら受け入れてもらえず、我々だけの会見という事になってしまいました。まだ生産監査会の捜査は続いているとの事ですから、いずれ会見が開かれるものと思います」


 共犯者の調査は現在継続中と言われてしまうと、記者たちもそれ以上深く聞く事はできなかった。たまに深堀する話が出るものの、当然のように「生産監査会の部分は調査中」と回答されてしまった。


 最後に記者から、北国海洋開発も共犯という話が出たが、今後、輸送はどうするつもりかという質問が飛んだ。


「当たり前の話ですが、あの会社を利用する事は適当では無いでしょう。先日竜主会で話し合い、外部に頼らず自会派で輸送していくという事で決まりました。警察にはあの海運会社の徹底的な調査を求めたいですね」


 そう述べた一条会長の視線は非常に鋭いものであった。

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