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【完結】競竜師・外伝  作者: 敷知遠江守
呂級編

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第16話 古河牧場

 翌日、輸送車に乗り込み、古河牧場へと高山たちは向かった。


 前回もそうであったが、昨晩は野外で牧夫たちを招いての焼肉会。浴びるほどの麦酒が用意され、味付け肉が大皿にうず高く積まれ、熱した網に次々に乗せられていった。驚く早さで消費される肉と酒、野菜たち。気が付いたら成田も遠山も事務室で大いびき。

 朝に大石場長に叩き起こされ、やっと出立準備をしたというような次第であった。


「高山先生。八級の竜を見てもらうために、わざわざ北国までお越しいただいて申し訳なかったですね」


「いえいえ。俺も前々から古河牧場の支部長さんとお話がしたいって思ってましたから。今回の件はちょうど良かったんです」


「そうだったんですか。調教師である先生が、生産専門の古賀さんにどんな話があるのか、非常に気になるところですな」


 大石としてはちょっと気になるという程度で言ったのだが、高山の表情は全くそんな感じでは無く、非常に深刻そうで、もしかしたら何か問題が発生しているのかもと察せられるものであった。

 思っている事が大石の顔に出ているのだろう。話をしておいた方が良いかもしれないと、遠山が高山に助言。


「……そうですね。大石場長は、以前から竜の盗難事件が東国を中心に発生しているのをご存知ですか?」


「ええ。船で石巻港に着いて、その先で盗まれたり、竜が急死したりという事が度々発生しているという話を耳にしますね。あと、北国でも引退になってすぐの竜が盗難にあったって話を、ちょくちょく耳にします」


「その原因って何だと思っていますか?」


 突然原因と言われても、大石としては全て単発の事故だと思っていた。それらに関連があるなどとは考えた事も無かったらしい。


「原因と言われても、輸送中に竜が死ぬのは、空路に比べ海路は竜に負担がかかっているのだろう程度に思ってました。盗難に遭うのは、精肉業者にでも売っているのかなと」


「精肉業者? 竜の肉ってそんなに需要があるんですか? 串焼きの店で『けやき』って名前で竜肉を出す店があるっていうのは知ってますけど」


「そういうのは普通は売れ残った竜を流す感じですね。本格的に調教を施した竜の肉は、筋張っていて肉そのものも硬いですから。でもそんな竜肉でも食べる国があるんですよ。隣の大陸東部の国々みたいに」


 ただし、普通はそういう場合は二束三文の買い取り額しかつかず、盗む労力などを考えたら割に合わないと考えるはず。だから大石も以前から、竜など盗んでどうする気だろうと考えていたらしい。


 そんな事を言い合っているうちに、輸送車は古河牧場に到着した。



 真っ先に成田が輸送車を降り、周囲をキョロキョロと見渡す。


「紅藍のお嬢さん、まだ来てないみたいだな。お嬢さんが来たら、構わないからそっち行ってこい。どうせうちらのとこにいても、心はどっかに行っちまってるんだから」


「嫌だなあ。俺だって仕事で来てるんですよ。そんなこと……」


「その腑抜けた面が仕事に来てる奴の面か! ったく、お前はほんとに何しに来たんだよ! 先生のお供だったら遠山だけで十分なんだよ。お! 噂をすれば」


 大石が到着した車を指差すと、成田は急に真面目な顔になり、襟締めを正した。

 百合の方は、昨日のような商談用の一張羅では無く、薄い緑のワンピースという完全に余所行きの恰好。

 誰に促されるわけでもなく、すたすたと成田が百合に近づいて行く。それを見て大石は呆れた顔をし、こっちはこっちで仕事に向かおうと高山に促した。


「相談役が会長の結婚の事をかなり気にしてましたから、これでまとまると相談役も一安心ですね。見た目ではちょっと年齢がわからない感じの方でしたけど、おいくつくらいなんでしょうね」


「あの娘がまだ小さい頃、あの娘を抱っこして父親が挨拶に来た事があったんだけど、確かその時、うちの息子より一つ上って言ってたから、長茂より三つ下って事になるんじゃねえかな」


「え!? あの見た目で三十一歳なんですか? 俺はまたてっきり二十代前半くらいかと」


 見ようによっては高校生にも見える。そんな風に笑い合っていたところで、ふと以前相談役が言っていた事を思い出した。


「そういえば、相談役が紅花会の前の会長夫人から紹介を受けた孫娘の名前が百合だったような。気のせいかな。確かその時、紅花会は連合が違うからって断ったって言ってたんですよね」


「ああ、確かにちょっと面倒な事にはなるかもしれんな。でも惚れた腫れたには文句は言えんだろ。今時政略結婚を推進するような人はおらんだろうし」


 ちらりと成田を見ると、完全に百合と話し込んでしまっている。どうやら向こうも百合を放置して、同行者だけで行動する事にしたらしい。



 一通り見て、良さそうな幼竜を選抜。競り会場に戻ると、成田と百合は楽しそうに二人で話し込んでいた。もういっその事、二人はこのままにしておこうと言い合い、大石、遠山、生産担当の山室の四人で競りに参加。


 その後、山室を残し、三人で古河牧場の北国支部長に挨拶に行く事にした。

 支部長の長沼は珈琲を淹れるのを趣味としており、自ら容器に挽いた珈琲豆を入れてお湯を注ぎ、それを高山たちに差し出した。おかげで商談室に豊潤な珈琲の香りが充満。思わず目の前のお菓子に手が伸びてしまう。


「会派の合従から、どうにも競りに来てくれる方が減ってしまって、近年ではこの四月の前半くらいですよ、賑やかいのは。昔は五月が一番賑やかだったんですがね」


「巷でよく話題にあがる古河さんを中心とした連合っていうのは、やっぱり難しいのですか?」


「渓谷会さんと山吹会さんからはそういう話をしていただいているのですけど、なかなか一筋縄では。連合を組んでしまうと他の会派さんが離れてしまうでしょうから、あくまで第三局という感じで行くんじゃないでしょうかね」


 渓谷会たち購入会派と連合を組むという事は、彼らの専属牧場になるという事である。当然のことながら取引相手として優遇しないといけなくなる。それはすなわち他を締め出すという事になってしまう。

 これまで古河牧場は全ての会派に門戸を開いており、それによって経営規模を維持してきた。渓谷会たち以外からの取引が極端に減ってしまったからといって、果たしてそれを切り捨ててしまって良いものかどうか。その経営判断は極めて困難だと長沼は語った。


 珈琲を飲みながら話を聞いていた高山が、そんな長沼に話を切り出した。


「ですが、今のままだと、昨今増えてきている竜の盗難事件に対処が難しくなってしまうのではないですか?」

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