第14話 内大臣賞
四角を回り最後の直線へと入りました!
先頭はジョウホムラ、一気に後続を離しにかかる!
クレナイスザクが脚を伸ばしてくる!
内から一気にサケウラカゼ!
サケウラカゼ、ジョウホムラを捕える勢い!
クレナイスザクが差を詰める!
クレナイスザク、ジョウホムラに並んだ!
サケウラカゼも差を詰める!
三頭壮絶な叩き合い!
少し遅れてマツカサレンザン!
大外一気にユキノタンチョウ!
豪快にユキノタンチョウが追い込んで来る!
直線残りわずか!
サケウラカゼが並んだ!
ジョウホムラもう一伸び!
クレナイスザクが差し返す!
三頭先頭を譲りません!
三頭並んで終着!
三頭が横並び!
ここからではどれが抜けたか全くわかりません!
――
「初の決勝進出で内ケ島くんのを抜いて四着なら上出来だな。秋は期待できるかも。内田くんはどうなの? 勝ててそう?」
「正直、ちょっとわからんっちゃね。一寸、いや一分でも出とってくれたらよかっちゃけど。高山くんはどう見えとった?」
「そうだなあ。『ウラカゼ』が体勢不利なようにも見えたけど、その前に出てたようにも見えるし、ちょっとわかんないね」
そんな冷静な二人の横で、内ケ島が顎に皺を寄せて中継映像を睨みつけている。
「絶対に『クレナイスザク』にだけは勝って欲しないな。四角でごちゃつくんを良え事に、うちの『レンザン』にぶつけてきおった。おかげで仕掛けが遅れてもうたやんけ。最悪や、あいつ」
「でも審議にはなってないからな。不運だったというしかないね」
「よう、そないに冷静でおれるな。その前に君の『タンチョウ』もぶつけられとるやろ。そやから外に出したんやろが。それが無かったらもうちょい中を回れとったんと違うか?」
『クレナイスザク』は気性難。それは極めて有名な話となっている。父はかつて『月毛の竜王』の二つ名で呼ばれた『クレナイアスカ』。『スザク』はその最初の傑作と言われている。
だが四角を回るのが下手で、いつも外に膨らんでしまって、他の竜に迷惑をかけている。毎回生産監査会から再試験を言い渡され、その試験を通過して出てくるのだが、今回のように内枠になると、こうして同じように外の竜に体当たりしてしまう。
だから、なるべくアレの内に入れと柿崎には指示していたのだが、流れの関係で難しかったらしい。
騎手たちが続々と検量室に戻って来たのだが、柿崎は高山と目が合うと無言で首を横に振ってしまった。
すると突然、検量室の外で大歓声が沸き起こった。
それまで苛々していた内ケ島が飛び跳ねて両拳を握りしめる。
「うしゃあ! 徳川さん、さすがや! 『上巳賞』はうちやったわ!」
三月は幕府競竜場で世代戦の一戦目『上巳賞』が行われている。
『ジョウホムラ』の大須賀忠龍調教師の『ジョウエンピ』、内田の『サケハヤシモ』、内ケ島の『マツカサレップウ』の三頭で叩き合い、皇都同様、こちらも写真判定となっていた。その判定が終わり、内ケ島の『マツカサレップウ』がハナ差一着となった。
「くっそぉ! 長野さん、惜しかったっちゃね! あとちょっとやったとに! 『優駿』では、絶対巻き返すっちゃけん!」
「うちのも中距離行けるからな。そしたら『優駿』でもうひと勝負やな」
そんな二人を高山が不気味に笑った。
「『優駿』はうちも出す。二人の竜も強いけど、持久力と切れ味なら確実にうちの方が上だと思う」
「ええやん、ええやん! この三人で対決やなんて土肥の研修以来や。最後、高山くんに勝ち逃げされとるからな。ここでまた勝負と行こうやないか!」
内ケ島が右手を高山の肩に、左手を内田の肩に回して上機嫌で両者の顔を交互に見た。
すると、係員が現れて着順を記載していった。再度、観客席で大歓声が沸き起こる。
一着は大須賀の『ジョウホムラ』。内田の『サケウラカゼ』が二着。三着が問題の『クレナイスザク』。その結果に内ケ島が大喜び。
「内田くんが勝てへんかったんは残念やけど、『クレナイスザク』が三着やったんは気分が良え! 今日は俺が酒代出したるわ。さっさと片して呑みに行こうや。高山くん、厩務員と騎手もちゃんと呼んでや。皆で騒ごうや!」
「そげんために、幕府へ厩務員ば派遣して、こっちに残っとったっちゃもんね」
「おいおい、内田くん。それはバラしたらあかんやないか」
内ケ島が本当に楽しそうに大笑いした。それぞれの厩務員から今日は驕りらしいと聞いた騎手たちも、飛びあがって大喜びしている。
「ところで、高山くんは昇級の方はどうなんや? 内田くんは駒不足で来年になりそう言うてるけども」
「え? そうなの? 内ケ島くんも?」
「俺は今年行けそうや。首位突破ができるかどうかはわからへんけど。師匠の南条先生が良い竜は俺に回してやってくれって言うてくれたおかげや」
紅花会は昨年まで斯波調教師に良い竜が優先的に行っており、今年それが振り分けられた関係で駒は充実した。だが、それでも勝負は来年だろうと内田は考えているのだそうだ。
「うちも早くて来年かな。今年はまだ昇級二年目だから。それはさすがにね」
「ほな、一足先に大津で待ってるわ」
「昇級した気になってるんじゃない」と高山と内田が同時に指摘して、内ケ島の背を思い切り叩いた。
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