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第6話 ささやかな意地

ーー成長率倍加?噂には聞いていたけど本当だったのか。

ーーどう育てていけばいいものか。


考え込むゼノ・レオンハートに向けて東条湊は心に決めていた言葉を発した。


「世界最強を教えてください!!」


「んー、いきなりそんなことを言われてもねえ。

 仮に世界最強を目指すなら他のどんな人よりもつらい経験をすることになる。

 いばらの道をいく覚悟はあるのかい?」

「あります!!」


少年のきらきらと輝く瞳と熱意に負けたゼノ・レオンハートはしぶしぶ了承した。


「わかったよ。じゃあとりあえず全属性の魔法を使えるようになろうか。3か月でね。」


満面の笑みを浮かべるゼノをとは裏腹に少年の表情から笑みは消えていた。


「全属性を…3か月??」


「そうだよ。なんで困った顔をしているんだい?

 世界最強を目指すのにそんなこともできないのかい?

 これは期待しすぎちゃってたのかなあ」


ゼノが挑発していることは少年も理解していた。

理解していたがそれでも言葉を止められなかった。


「ええ。もちろんやってやりますよ!!

 ってか3か月もいらないですし、1か月でやってやりますよ!!」


「へー、それは楽しみだなあ。ちなみに出来なかったときはどうするつもりだい?」


少年はヒートアップしたそのままの勢いで言葉を発した。

この後強烈な後悔に襲われてしまうほどの言葉を…


「ハラキリ!!ジャパニーズ・ハラキリをやってやりますよ!!」


「まさか初めての弟子がここまで馬鹿だとはね。

 まあいいさ。一度行った言葉はひっこめるなよ。」


今まで見たこともない真剣な表情で念を押され、少年はごくりと唾を飲み込んだ。


ーーこれできなかったら、本当にハラキリするやつだー。


「さっ。じゃあ目標が決まったところで具体的なプランについて話そうか。

 とはいっても次に会えるのは一か月後になりそうなんだけどね。」


「ええ!!次に会うときがハラキリ期日なの???」


「まあまあ、落ち着いて。ちゃんと考えてあるから。

 湊のジョブ特性、全魔法・全スキルへの適正があるなら多分できるよ。

 ちなみに適正がある・なしで習得までにどれぐらいの差があるかわかるかい?」


「え?適性がないものは習得ができないんじゃないですか?」


「それは誤解だよ。

 現に超越者のジョブは全属性に適性があるわけじゃないんだ。

 だけど見ててご覧」


ゼノ・レオンハートは窓を開けると外に向かって手を伸ばした。


「ファイア・アロー」

「ウォータ・アロー」

「ウィンド:アロー」

「サンダー・アロー」

「ホーリー・アロー」


花火のように数々の線が夜空に飛んで行った。


「ほらね。」


少年は目の前の光景に頭の理解が追い付いていなかった。


ーーこれが本当に適性がない人がやったことなのか?


「適性がなくても使えるようにはなるんだよ。

 ただ、めちゃくちゃ努力する必要があるんだけどね。

 明確な数値ではないんだけど、おおよそ10倍努力すれば適性がない魔法やスキルも習得できるとされているんだよ。

 こんな苦労を必要としないのが君の強みだね。

 せっかくだからこの強みを生かしていこっか。


「自分の強みは理解しました。

 けど、どうやったら使えるようになるんですか?

 今はどの魔法も使える気がしないんですが…」


「使えないのはイメージができていないからだよ。

 魔法はイメージが大事なんだ。

 今からイメージできるように特別な訓練をやろう。

 背中を向けて。


少年は言葉通りゼノに背中を向けた。


「今から各属性の魔力を背中に流す。

 それを感じ取ってみて。

 例えば、火は暖かい、水は冷たいみたいな感じだね。」


ーー少年は背中に全神経を集中させた。


ーーすさまじい集中力だね。これならすぐにいけるかも。


ゼノは少年の背中に魔力を流した。

1分ほど魔力を流したが少年は微動だにしなかった。


ーーさすがにそこまでうまくは進まないか。今日中になんとか1つの魔力でも感じ取れればいいか。


期待が裏切られてしまい落胆していたゼノに少年は問いかけた。


「すみません。背中が熱いので一旦止めてもらってもいいですか?」

「熱い?暖かいではなく熱いのかい?」


「はい。火傷しそうなぐらい熱いです。」


ーーこんな微力な魔力でそこまで感じることができるものか?

ーーこれが修練者の効果か?それとも湊のセンスなのか?

ーーうれしい誤算だね。


「悪かったね。じゃあいろいろと魔力を変えていくから感じたことを言葉にしていってくれ。」


ゼノは10秒間隔で次々と魔力を変質させていった。


「冷たいです。痺れます。…」


少年は魔力の特性を的確にとらえていた。


「はい。終わり。

 結果は優秀としか言えないね。」


世界最強の男に褒められた少年は満面の笑みを浮かべている。


「じゃあ今感じた特徴の魔力を自分の周りに流してみようか。」


「わかりました。」


少年は感じていた魔力を忘れないうちに早速試すことにした。


ーーまずは身体の周りが熱いお湯に包まれるようなイメージで…


魔力の使い方も知らなかった少年が集中し始めて1分がだったところで、ゼノの表情が変わった。


ーーこんな短時間で魔力を感じるだけじゃなくて実際に魔力の放出まで出来たのか?


世界最強の男でさえも目の前の光景を信じることが出来なかった。


「よし。火の魔力は問題ないね。次々魔力を変えていってみようか。」


少年の身体に流れる魔力が次々と変わっていった。

最後の光の魔力まで流し終わったところで少年が訊ねた。


「ふう。これでよかったですか?」


ーー今から俺はとんでもない怪物を育てることになるのか。


ゼノ・レオンハートは表情には出さないが静かに冷や汗をかいていた。


「よし。まずまずの出来だね。

 じゃあ、これを毎日欠かさず行うこと。

 1秒以内に魔力を切り替えられるようになったら最後はこれを目指すこと」


ゼノの5本の指先に別々の魔力が玉のように光っていた。


「これが出来るまでの魔力コントロールがあれば、あとは唱えるだけで魔法は使えるようになっているよ。」


「僕も忙しいからそろそろ行こうかな。

 じゃあ1か月後を楽しみにしているよ。」


ゼノが病室から出ていき1人取り残された少年は拳を握りしめていた。


ーーここからだ。ここから世界最強になってやる。















ご愛読いただきありがとうございます。


引き続き、次の話についてもお楽しみいただけると幸いです。

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