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第3話 隠しクエスト

受注ボタンを押すと同時にチュートリアルダンジョン内にはアラームが鳴り響いた。


「挑戦者のレベルを大きく超えたクエストですが、本当に挑戦しますか?」


突然のアナウンスに東条湊だけではなく、会場全員が驚いている。


「チュートリアルダンジョンでアナウンスなんて流れるのか?」

「なにかの故障では?」


色々な憶測が飛び交う中、一番に落ち着きを見せたのは当事者の湊だった。


「挑戦する!!」

高らかに宣誓した湊の声が反響するほどダンジョン内は静まり返っていた。


数秒後、少年の目の前にゴブリンよりも二回りは大きいホブゴブリン3体が現れた。


ホブゴブリンとゴブリンの一番異なる点は体格ではなく、頭脳である。

ゴブリンたちとは違いホブゴブリンたちは顔を見合わせると、自然と前衛と後衛に分かれ始めた。


ーーこれは一筋縄ではいかないな。


少年が頭の中でシミュレーションを始めたところ、再度アナウンスが流れた。


「隠しクエストに挑む挑戦者に基礎武器を与えます。

 好きな武器を選んでください。」


少年の目の前に表示されたウィンドウには剣、槍、盾など様々な武器が並んでいる。


ーーこのタイミングで?

不思議に思いながらも少年はシミュレーションをやり直した。


「ゼノ様は湊君が何を選べばホブゴブリンたちに勝てると思いますか?」

「湊の力じゃ剣や槍を選んでもホブゴブリンの分厚い皮膚は貫けないから厳しいだろうね。

 あれを選べたら望みはあるかもね。」


ゼノ・レオンハートが答えたところで少年もシミュレーションを終えた。


「これにしよう。」


少年が選んだ武器が姿を現すと会場中から落胆の声が上がった。

「あんな武器で勝てるわけない。」

「何もできずにやられてしまう。」

「もう見てられない……」


少年が殺される瞬間をみることを想像して、席を立つ生徒たちも現れた。


そんな中、世界最強の男だけは笑っていた。

「正解!!」


少年の手には短剣が握られていた。


ーー剣や槍ではホブゴブリンの皮膚を貫けないだけじゃなく、唯一勝っているスピードもなくなってしまう。

ーースピードを生かすためにはこれが最善だ。


少年は深呼吸をしながら最後のシミュレーションを行っている。

シミュレーションが終わるとホブゴブリン目掛けて少年は駆け出した。


ホブゴブリンたちは自分よりも体格が小さいものの接近に慌てることはなくどっしりと待ち構えている。

小さな少年が自分の射程距離に入るのを見計らっている。

あと数歩という距離まで近づいた瞬間、少年が視界から消えた。


少年は相手の射程距離を理解していた。

ーーあと、一歩で射程距離に入る。ここだ!!


身を屈めながら目いっぱい地面を蹴り飛ばした。

前衛のホブゴブリンの横を通りすぎるときに右手に握った短剣でホブゴブリンの皮膚を切り裂いた。


突然目の前に現れただけではなく、自分たちの中央に現れた小さな少年の行動が理解できずにホブゴブリンたちは固まっている。


少年はスピードを緩めることなく、目の前のホブゴブリン目掛けて駆け出す。

再度通りすぎるときに短剣でホブゴブリンの皮膚を切り裂いた。


ーーよし。このまま畳みかける。

少年はスピードを生かし短剣でヒット&アウェイを繰り返すことを決めた。


ヒット&アウェイを繰り返す中で何度かホブゴブリンの拳が少年の身体をかすめた。

ーーっ!!


身体に痛みが走るが少年はスピードを緩めない。

スピードを失えばすぐに死が迫ってくることを理解しているためだ。


少年が短剣で最初のホブゴブリンを切りつけ始めてから10分が経過した。


「ハァ、ハァ」


10分間死と隣り合わせの中で全力疾走を続けた少年は肩で息をしている。


ーーなんとかここまでこれた。


少年の短剣によって何度も切り裂かれたホブゴブリンたちの全身からは血が噴き出している。


見るも無残な姿になっているホブゴブリンたちを確認した少年は短剣を強く握りしめた。


ーーここが勝負時だ。


自分の体力と状況を照らし合わせ少年はここで勝負に出る判断を下すと同時に再度駆け出した。


ホブゴブリンたちも満身創痍のため動きが鈍い。

動きが鈍り反応が遅れることを見越して、ホブゴブリンに近づいた少年は皮膚を切り裂くことを目的としていた時とは異なり、強く握りしめた短剣と共に体ごとホブゴブリンにぶつかった。


少年はすぐにホブゴブリンから離れた。

先ほどまで少年がいたところからは大きく血が噴き出すと同時にホブゴブリンが膝から崩れた。


ーーあと2体。


少年は考える隙を与えないためにすぐさまもう一体のホブゴブリンに向けて駆け出し、体ごとぶつかった。


また、ホブゴブリンが膝から崩れ落ちた。


ーーあと1体。


このまま順調に進むかと会場中が安堵しかけたとき、ダンジョン内にホブゴブリンの咆哮が響き渡った。


仲間が2体倒れたことにより自身の死を感じたホブゴブリンは全身に最大限力を込めた。

腕には血管が浮き出て、目は血走っている。


力を緩めることなく、少年に向けて腕を突き出した。


ーー早っ!!


突然のホブゴブリンの覚醒に驚き反応が遅れてしまった少年はホブゴブリンの突き出した腕を受け止めてしまった。


激痛により身体が棒のように動かなくなってしまった。


ーーまずいっ!!ここから何ができる。


少年は次の一手を考え始めていた。

……頭に浮かんだ一手は明らかに無謀な一手だった。


「ゼノさん。聞こえていますか?これから無茶なことをするのであとは任せました。」


突然の呼びかけにゼノ・レオンハートは一瞬戸惑ったが、世界最強の男には少年の無茶が理解できてしまった。


「医療班!!!」


ゼノ・レオンハートの鬼気迫る声と共に少年はホブゴブリン目掛けて駆け出した。


ーーああ。なんでこんな無茶な手が思いついちゃったんだろう……


ご愛読いただきありがとうございます。


引き続き、次の話についてもお楽しみいただけると幸いです。

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