表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

無の侯爵令嬢はにこやかに微笑む

作者: 源水蓮
掲載日:2026/03/28

「ローレライ・エターリア!君との婚約は破棄させてもらう!」


謁見の間に響き渡る声で名を呼ばれ、ビシッと指をさされた令嬢は、艶やかな黄金色の髪をハーフアップでまとめた公爵令嬢であるローレライだ

その表情はだれがどう見ても無そのものであり、同じく黄金色の瞳は冷ややかな視線をこの国の王太子ヴァン・エルロント・シャターリアに注いでいる

微動だにしないその姿と、陶器の置物かと錯覚してしまいそうな美貌の令嬢に、謁見の間に集った貴族たちは呼吸も忘れて沈黙を貫いた


「な、なんとか言ったらどうだ!」


数秒が数十分にも感じられるほどの沈黙を破ったのはヴァンの方で、指をさしたせいで上げっぱなしの腕をぷるぷるさせながら心なしか涙目でローレライを睨みつける。

そんなヴァンに向かって、やっとコテリと首を傾げたローレライは数段高く設けられている玉座へとゆったりと歩を進めると


「理由をお伺いしても?王太子殿下?」


数段上にいるはずのヴァンと視線を合わせる為、少しかがんだ


「そ、其方は私の事など嫌いであろう!」


『どうしてそのように感じたのでしょう?』


「其方よりも勉学で劣っている!」


『まぁ…けれど殿下、それはー…』


「そ、それだけでは無い!常に私を見下している!」


相変わらず腕をぷるぷるさせながら、今にも地団駄を踏みそうなヴァンから視線をはずさぬままローレライは困ったように頬に手を当てた


まぁ、その表情は変わらず無のままではあるが…


『そのように申されましても…殿下のご身長はわたくしの腰ほどでー…「ええい!黙れ!無礼者!」


ついにダンダンと地団駄を踏んだ御年4才の銀髪くりくりおめめの皇太子は婚約者である14歳のローレライの言葉を遮りながら大きな瞳に涙を浮かべてキッと睨みつけた

婚約破棄を宣言した瞬間こそ張り詰めていた謁見の間の空気はすでに生暖かいものに変わっている


「ぼく…私が毎日ミルクを飲んでも、勉強を頑張っても、一向に身長も頭脳も其方に追いつける兆しがない!其方と私とでは釣り合いが取れておらぬ!」


この言葉で謁見の間はさらにほんわかと暖かくなった

心なしか無の侯爵令嬢の雰囲気も柔らかくなっている


『殿下…そのように焦らずとも、きっと数年後には私の身長も追い抜かれて勉学もさらに向上されるはずですわ。それに…』


ここで、微かだが口角を上げて視線を柔らかくしたローレライは


『私は頑張る殿下の事、とても好ましく思ってましてよ?』


瞬間謁見の間に控えた従者や貴族たちはボンっ!という音を聞いたような錯覚に陥った

その錯覚を起こさせたヴァンは、茹で上がってしまいそうなほど真っ赤な顔を俯かせ、瞳には相変わらずたっぷりの涙を浮かべながら全身をぷるぷる震わせている


今この瞬間、謁見の間に控える者たちの心は一致していた


最高にかわいい!!と


要するに今回の騒動は、このちっちゃくて可愛くてなんかもう天使かな?って言いたくなるような愛らしい王太子が、大好きな婚約者に追いつく為に頑張ってるのに全然追いつけない!こんな私ではローレライが可哀想だ!と暴走した結果なのだ


かわいいことこの上ない


それは無の公爵令嬢と呼ばれるローレライとて同じ事で


『殿下?殿下はわたくしの事が嫌いになってしまわれたの?』


切なげに瞳を伏せながらも、その口元は微かに笑みを讃えている


「ちがっ…そうではない!これは私が至らないからと言うだけで」


『では、問題ございませんわね。それよりも殿下、南の園庭に咲いた薔薇はもうご覧になりまして?今年も見事な景観ですわ。折角ですし今から見に行きませんこと?さあ、お手をお預かりしても?お茶会にしても良いかもしれませんわね』


あ…とか、う…とか言いながらそのまま流されていくかわいいヴァンににっこりと微笑んでいたローレライは、後方でほっこりと様子を見ていた護衛騎士にスッと表情を消した視線を向けた

その視線にハッとした騎士たちが慌てて2人の後を追いかける


表情を変えない事で有名だった公爵令嬢が、唯一笑んだのが、3歳のお披露目で姿を表した王太子殿下だったのだ


子煩悩なエターリア公爵が心配して幼少期から医者や魔術師はたまた民間療法までも使ってあの手この手で対応したにもかかわらず笑うどころかピクリとも表情を変えなかったローレライが、だ


それは、恋というより母性とか、庇護欲とか、そんなものだったのかもしれない。


しかし、エターリア侯爵にとって理由はどうでもよかった


ローレライが笑ったのだ!!もうそれだけで、婚約するには十分だった


最初はお友達から…なんて生ぬるいことはやってられない。

とばかりに急速に決まった婚約だったが


殿下のほうも、乳母もびっくりな勢いでローレライになついた


結果…


南の園庭のバラ園を仲睦まじく手をつないで歩く二人

それはまだ姉弟のようで、ただ微笑ましいだけではあるが

今日も宮廷の者たちの心を和ませ、しあわせに浸らせるには十分な光景だった

思い付きで書いた短編なんで、ここで終わりですが、

評判良かったら、中編か長編にする……かも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ