ハゲ

作者：ルーバラン

「ああもう、さっきから全然進まねえ！　えっと……ヤバい。後２時間しかねえじゃねえか！　このままじゃレポートの締め切り間に合わねえよ……と、とにかく調べた事を羅列しまくって枚数を稼がないと！　『近年、地球規模で数多くの自然災害が発生している。適当に今ふと思い付くのをあげてみるだけでも、酸性雨、オゾン層の破壊、光化学スモッグ、温暖化など、いくつもの災害が挙げられる。その中でも、今回は温暖化現象に着目する事にする。温暖化の主な原因は二酸化炭素の増加、特に大規模な森林伐採が原因と考えられている。ここ最近では、日本の半分もの面積の森林が地球から消えていっていると言う。山から木が消えると言うこともしばしばだそうだ』……ああ、ここまで一気に書いたけど、ここから全く思い付かねえよ！　なあ、山田、お前はどんなもんできた？　……っておい！　何寝てんだよ！？」

んあ……な、なんだよ谷元。人が気持ちよく寝てたってのによ……。ふああ、まだねみいな……もう１回寝るか……。

「たくっ……どうなっても、知らないからな。えっと、続き続き……『そう言えばここ最近、山ではハゲているところをときどき見かける』」

……何？谷元のやつ、一体なんの話をしてるんだ？　何か『山田は禿げてる……』とかなんとか……っておい！？　な、なんで谷元が知ってるんだよ！？　ま、まさか俺が寝てる間に……た、確かに最近、まじで抜け毛が気になるんだよな……。

「な、なあ谷元？　最近そんなに禿げてるところって多いか？」

「ん？　ああ、結構あるぞ。遠目で見てるだけだと気づかないんだけど、近くで見たら丸分かりだな」

「ま、ま、ま、丸分かりなのか！？」

やっべー！　まだ二十歳なのに！？

「特に最近はまったく生えてない状態……えっと……砂漠化もかなりすすんでるよな」

「さ、さ、砂漠化！？　まじ！？　今ってそんなにヤバいの！？」

「まじでヤバいって。今何か対策を打たないと取り返しがつかないことになる。桜井先生もそう言ってただろ？」

「は、え！？　桜井先生もしってんの！？」

「当たり前だろ！　何言ってんだお前。講義でしっかり説明してただろうが」

「はあ！？　桜井先生、講義中にそんな話してたのかよ……まじかよ」

って事は……講義受けてる人全員が俺のハゲについて知ってるって事かよ……うっわ、桜井先生、何て事してくれたんだ！

ってか……ま、まじでそんなに俺の頭ってヤバいの！？　えっと……ど、ど、どのあたりが無毛地帯なんだろう？

……な、な、ないよな？

「お前、何で突然頭をなでまわしてんの？」

「うぇ！？　い、いや？　な、なんでもないよ？　ってか谷元さ。ウソなんだろ？　頼むよ、そんなウソつくことないじゃん。ウソだと言ってくれよ！」

「な、なんかいきなり真剣になったな」

「当たり前だろ！　禿げまくってるなんて、めちゃくちゃ大問題じゃねえか！」

禿げてるか禿げてないかで、俺の一生がかわってくるだろうが。

「じゃあ一応真面目に返事するけど、山田……俺はウソなんてついてないぞ」

「まじかよ……」

やっぱり俺、みんなにも丸わかりなくらい禿げてるのかよ……。

「ってかさ、何でウソなんかつかなきゃいけないんだよ。これからこれについてレポートにまとめて提出しなきゃいけないってのに……はあ」

「れ、レポートにまとめて提出すんのか！？」

「そだよ、山田ー、まじやってらんねえよな」

「それ俺の台詞だよ！　何が悲しくて自分のハゲについてみんなにまとめられなきゃいけないんだよ」

うあ、俺の人生終わった……花の大学生活が……女子大生との合コン……クラスでの打ち上げ……大学祭でナンパ……何もかも終わったよ。

「……なあ山田、お前なんか変な事言わなかったか？」

「言ってねえよ！　……ってかさ！　谷元、なんかいい対策とかってねえかな？」

「あ、ああ……俺の聞き違いか……対策か、そりゃやっぱりどんどんと植えるしかないんじゃん？　ほら、前にタモリがＣＭでやってたじゃん」

「タモリ！？　えっ？　タモリってそんな事やってんの！？」

「あれ？　山田は見たことないのか？　タモリがそのＣＭに出てるとこ。かなり大変らしいけど、結構成果が出てきてるらしいぞ」

「まじかよ……結構成果がでてあんなもんなんかよ」

うわ、タモリには悪いけどまったく期待できねえ。成果をだすどころか衰退の一途じゃねえか。

「中国までいって大変だよなあ……きっとあれにかかる費用、億じゃきかねえぞ」

「お、お、億！？　億単位の金出してあんなもんしか生えねえの？　うあ……なんだよその無駄金っぷり」

ってか、髪の毛生やすのにわざわざ中国行くとか、タモリさん、どれだけ髪の毛に情熱をもやしてんだ。

「な、なあ谷元……こうさ、金をかけずに俺にも出来る、簡単な対策とかってねえかな……？　ほら、海藻を食べるのがいいってのはよく聞くけど」

「そうなのか！？　うわ、俺それ初めてしったわー」

あれ？　そんなに効果ねえのか？　……おっかしいなあ……有名だと思ってたのに。

「うわ、ってかレポートの提出まで、もう全然時間ねえじゃん！　本気で急がないと！」

……じゃあ他に禿げないための対策って何かあるのか？　シャンプーはしっかりするとか、帽子は被らないようにするとか。

「『……だから、私たちはこれから、環境にきを配りながら、海藻を食べるようにしながら生活をしていかなければならない。１年　谷元』……おし、もうこれでいいだろ！　あとは参考文献！　……えっと……これの著者って誰だっけ？　えっとえっと……」

いかん、もしかして自分の今までの常識が全部間違ってた気がしてきた。やっぱりもう１回きちんと谷元に対策聞いとかないと。

「なあ谷元、きちんと禿げに対する対策教えてくれよ！」

「そうだ！　カツラ(桂)だ」

「ふ、ふざけんなあ！！」

ハゲないための効果的な方法をご存じの方、よろしければ教えてください。

タモリさんのＣＭというのは、トヨタ自動車がやっていた「あしたのハーモニー」というウェブマガジンで中国で植林活動していた話です。

今はそのウェブマガジンは消えてしまっているみたいです……残念。