78話 ダンジョンでデート? かもしれない
――7層攻略の糸口も掴めぬまま、しばらくたったある日。
魔物の研究をしているセンセから、連絡があった。
スマホにメッセージが入る。
『丹羽さんが関係している女性たちが、妊娠しない原因が解りましたよ』
え? まじで解ったのか。
俺も興味津々なので、すぐに返事をした。
「なにが原因だったんですか?」
『精子に異常は見られなかったのですが、卵子と受精しませんでした』
「他には問題がなかったのですか?」
『はい、普通の精子となんら変わりなかったのですが、受精だけが行われません』
「なにか原因がありそうですか?」
『電子顕微鏡で見ても、構造的に問題があるようにも思えませんでしたが……』
見た目は問題なくても受精だけしないのか。
確かに奇妙だが……。
ダンジョンの中では物理法則がひん曲がる。
精子の働きがひん曲がってもおかしくない。
「やっぱり、ダンジョンの影響ですかね?」
『おそらく――今回の検査は精子だけでしたが、冒険者の卵子も検査してみたいですね』
「それは、果たして協力者がいるかどうか……」
今回のことを姫に話したら協力してもらえるだろうか?
不妊治療には、夫婦間の協力が必要だ。
まぁ、まだ正式な夫婦ではないが……。
『不妊の問題を解決するためにも必要なので、協力を仰いでください』
「はい、可能な限り」
『よろしくお願いいたします』
「それはそうと――センセが検査に使った卵子というのは……」
実際に受精させてみたらしいからな。
『それは、私の卵子です』
えええ?!
なんだか、ちょっと怖いんだが……。
卵子の採取って簡単にできるのか?
なにかの動画を見たときには、結構色々準備があったはず。
それとも、なんらかの実験のために、事前に採取済みだったか?
彼女ならあり得るかもしれない……。
八重樫グループの矢島博士もやべー人だったが、やっぱり母娘なのか。
「もし協力者がいたら、センセの連絡先など、教えてしまっていいですか?」
『大丈夫です』
そうか~やっぱり、子どもはできそうにないか。
高レベル冒険者同士から超人が生まれてしまったら、あっという間にダンジョンが攻略されてしまう可能性があるからな。
ダンジョンを作ったやつからすると、そんなことは認めたくはないだろう。
アイテムBOXにバグがあるので、ダンジョンのシステムじたいにも抜け道があるのでは?
――と、ちょっと期待していたのだが、そう甘くはなかったか。
とりあえず、今の話を姫にする。
彼女はソファーに寝転がり、タブレットでなにか読んでいた。
「承知した。不妊治療というのは、夫婦でやるものだろう?」
あっさりと承諾してくれた。やっぱり男前すぎる。
「いいのかい?」
「無論」
センセの連絡先を教えると、早速やりとりしている。
彼女も、考えていた自分の計画が破綻してしまうのか? って話だからな。
興味があるのだろうが、相変わらず行動が早い。
「そうだ、オガのやつにも協力させよう」
姫が驚きの提案をしてきた。
「ええ? 協力してくれるかな?」
「やつも、私の計画に乗ってきた口だ。興味はあるのだろ」
「だと、いいのだが……」
さすがに、イロハには俺からは頼めん。
ナントカフレンド状態ではあるが……。
「よし! ダーリン、オガとも話がついたぞ」
行動力!
「本当かい?」
彼女も協力してくれるのか。
ありがたいが……。
「無論――近々、魔物好きなあの者の所へ行ってくる」
「俺も、ついていったほうがいいだろうか?」
「う~ん、本当の不妊治療ならダーリンの手助けが必要だろうが――今回は違う。女だけの集まりでもあるし、ダーリンは肩身が狭かろう」
「なんか、そんな感じがしてなぁ」
「私たちだけで行ってくる」
「わかった」
そんな話を、我関せずで聞いているのが、カオルコだ。
彼女とは、そういうことをしていないからなぁ。
しちゃうと、回復が使えなくなってしまうし。
「カオルコの意見は?」
「妊娠についてですか?」
「いや、それを含めて、なんでもいいが」
彼女が疎外感やら、仲間外れ感を覚えているのではないか? ――と、俺はちょっと心配してしまったのだが。
「そうですね。高レベル冒険者が妊娠できないというのは、私は予測しておりました」
「やっぱり?」
「はい。そんなことで簡単に超人を作られてしまっては、ダンジョンが簡単に攻略されてしまいますし」
「はは、俺と全く同じ意見だ」
「ダンジョンは、人々の射幸心を煽り、深部へのめり込むように作られています」
「なにか、そういう作為的なものを感じるよね」
「はい――まるで人間の負の感情を煽っているように思えます」
「なるほど」
神様みたいな連中がゲームを作って、そこに人間という虫を入れて面白がっている――ようにも思える。
そうだとしても、インチキで簡単にクリアできてしまうというのは、不本意だろうし面白くないだろうな。
俺のアイテムBOXのバグにしても、ダンジョンの攻略に関しては大した役に立っていない。
動画の撮影ができるだけだし。
それゆえ、見逃されているのかもしれない。
――後日、女性陣が連絡を取り合って、センセの所に向かった。
カオルコは残っているが、事務仕事で忙しそう。
俺は、色々と外注に出してしまっているから、ちょっと暇だ。
ちょっとアップした動画をチェックしてみる。
すでに500万回ほど再生されており、順調にカウンターが回っていた。
俺の口座にも、数千万単位での入金がある。
時間ができたので、税理士に渡す資料を作る。
口座の取引データをダウンロードして、これは経費、これは関係ない――みたいなチェックを入れる。
それを税理士に渡すと、俺からのデータを使って青色申告をしてくれるわけだ。
自分でできないこともないが、こんな面倒なことはやりたくない。
金があるから人に任せて、余った時間で俺の好きなことをやる。
これぞ悠々自適ってもんだ。
データを税理士に渡したので、外に出ることにした。
ホテルに籠もっていても仕方ない。
「カオルコ、散歩に行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
姫なら、絶対についてくると言い出すところだが、カオルコは違う。
普段は姫に振り回されているので、こういうときに自分の時間を作っているのだろう。
彼女の趣味らしい、薄い本もゲットしたいだろうしな。
ホテルから出て、市場を物色する。
食料やら、必要であろう物資を買い込み、武器屋に向かうと、注文していた単管ミサイルを補給する。
そういえば、アイテムBOXの中に、壊れた単管足場とか入ったままだなぁ。
幽鬼の固定の魔法がかかっているので、ダンジョンに放置しても吸収されないし。
あの魔法ってどのぐらいの効力があるのだろうか?
俺が深層に飛ばされたときに見かけた、地底の割れ目みたいな場所があれば、捨て場所に最適なのだが。
魔物の串焼きを食いながら考える。
「さて、なにをするか……」
そうだ――たまには、1人でダンジョンに潜ってみるか。
初心に戻るってやつだ。
そうと決まれば、俺はダンジョンの入口に向かった。
潜ると言っても深層まで行くわけじゃない。
適当な所で、引き返してくるつもりだ。
そうだな――3層か、いや4層辺りがいいだろう。
オークがいれば食料にもなるし、最高だ。
4層ならハーピーたちもいるしな。
彼女たちの顔も見たい。
まさか、他の冒険者たちに狩られてないよな?
俺は自動改札を通ると、エントランスホールで、アイテムBOXから出した防具をつけた。
普段の装備なども全部アイテムBOXに入っている。
ホテルの部屋に置いても邪魔だしな。
「さてと――」
収納から自転車を出すと、俺は暗闇を突っ走った。
雑魚なんて相手にするつもりはない。
列車に乗ればいいのだが、あれより俺の自転車のほうが速いし。
いつも絡んでくる、しつこい狼もぶっちぎる。
引き連れて走ってしまうと、トレインになってしまいマズイが、俺の自転車のスピードがそれすら許さない。
3層をぶっちぎって、4層に到着した。
1層や2層は人で一杯だが、ここらへんまで来るともう冒険者は少ない。
こんな所までやって来るのは、俗に言うガチ勢だ。
浅層で死ぬことは滅多にないが、ここはヤバい。
「さて、獲物はいないかな……」
ウロウロしていると、敵とエンカウントした。
お誂え向きのオークさんだ。
「あ~、撮影はどうしようか……」
珍しい敵やら、強敵とばかり戦っているから、今更オークと戦っても受けないだろうか?
まぁ、こういうことを考える時点で、ちょっと動画サイトに毒されているのかもしれないが。
なにかの素材に使えるかもしれないので、とりあえず撮影をする。
物足りない戦闘シーンで、ボリュームアップなどに使えるかも。
「ブモォ!」
デカい棍棒を振り回してくるが、そんな攻撃はさらりと躱すのだ。
俺は魔物の懐に入り込むと、丸太のような太ももに取り付いた。
これが、美女の太ももなら言うことなしなのだが。
「おりゃ! 天地返し!」
オークの太ももを抱きかかえて、そのまま放り投げる。
「プギャ!」
ちょっと可愛い声を上げて、オークがひっくり返った。
「よっしゃ!」
巨体に飛び乗ると、アイテムBOXから取り出したメイスで敵の頭をかち割る。
頭が潰れて、赤い中身が飛び散り、目玉が飛び出す。
ミノタウロスなら、これでも動くぐらいにタフなのだが、豚の魔物はこの時点で動かなくなった。
「収納!」
魔物の身体をアイテムBOXに入れる。
まぁ、中に入るってことは、確実に息の根がとまっているわけだ。
「さて、次の獲物は……」
「ギャ! ギャ!」
「おっと、ハーピーか――あいつか? どうやら無事だったようだな」
「ギャ!」
とりあえず、呼んでみる。
ギギなら、反応があるだろう。
「お~い! ギギか?!」
「ギャ!」
返答があったので、彼女なのだろう。
すぐにバサバサと翼の音が近くに降りてきた。
ぴょんぴょんと飛んで彼女がやって来たのだが、ちょっと動きが変だ。
「どうした?」
――と、思ったら、ハーピーが脚になにか掴んでいる。
獲物だろうか?
「ギャ」
「なにを捕まえたんだ?」
黒い毛皮をした小動物だ。
こんなものがダンジョンの中にいるのか? ――じ~っと見ていると、それがなにか解った。
「ギ」
「猫?!」
「ギャー!」
ハーピーが得意げに翼を広げる。
外から、ダンジョンの中に迷い込んで出られなくなったのだろうか?
好奇心は猫を殺すっていうが、まさに目の前でそれが起きていた。
「あ~、可哀想に……」
「ギ?」
俺はアイテムBOXからチョコを取り出して見せた。
「おい、その獲物とこいつを交換しよう」
「ギャ!」
ハーピーが俺の前に猫を放り投げると、チョコを奪い取った。
「ハグハグ!」
そのまま脚で捕まえたチョコにかぶりついてる。
「おわ~、もう駄目かな?」
かろうじて生きているようだが、かなりの重傷だ。
俺はアイテムBOXから、回復薬が入った霧吹きを取り出した。
明かりがないとモノクロでよく解らないので、ケミカルライトを使う。
傷がある所に、回復薬を吹きつけていく。
ダンジョンを攻略しながら、もう一つ必要を感じて用意したものがある。
針のない注射器だ。
こいつを使って、口の中や、鼻の粘膜に回復薬を入れてやる。
「ゲフゲフ!」
ちょっと元気になったようだが、まだ危ない。
4層入口のキャンプに行けば、回復を使える魔導師がいるのではなかろうか。
俺は黒猫を抱えて、キャンプまでダッシュした。
人のいる場所に近づくと、光ファイバーの明かりが見えてきて、景色もモノクロからカラーになっていく。
冒険者の姿も見えるから、回復の魔法を使える者もいるだろう。
俺は冒険者を探して、キャンプの中に飛び込んだ。
「申し訳ない! 回復を使える魔導師がいないだろうか?」
「どうした?」「魔物にやられたか?」
ざわざわしているが、手を挙げてくれる魔導師がいない。
「頼む!」
「は、はい……」
小さな声がした。
「ありがたい!」
そう言って、声のするほうに向かったのだが、冒険者の陰から出てきたのは――見慣れた顔。
「あ、あの……」
「サナ!」
「は、はい」
「こんな階層までやってきて平気なのか? キララは?!」
「あ、あの……私1人で……」
「あまり無茶をしないでな」
「……」
危なっかしすぎる。
「それはともかく、サナも回復を使えるようになったのか?」
「はい」
彼女は攻撃系の魔法が中心だったから、回復は補助的な感じか。
「それじゃ、この子に魔法をかけてくれ」
俺の両手の中でぐったりしている黒猫を差し出した。
「猫……」
「どこからか入り込んだんだろう」
ハーピーがやったのか、それとも他の魔物にやられて瀕死になっていたのをハーピーが拾ったのか――不明だ。
「回復!」
ダンジョンの中に青い光が舞うと、黒猫の中に染み込んだ。
「!」
猫が顔を上げると、頭を振って耳をピコピコしている。
状況を把握できていないのだろうか?
すぐに逃げないのは、人馴れしているのか、それともそんな元気がないのか。
俺はアイテムBOXからバックパックを出すと、タオルを敷いてそこに猫を入れた。
大人しくしているようだ。
ここで逃げても、また攻撃されると理解しているのだろうか。
「あの……」
「ん? なんだい?」
サナがもじもじしている。
「今日は、ダイスケさん1人ですか?」
「ああ」
「……それじゃ、私のレベル上げを手伝ってくれませんか?」
「う~ん」
「……なんでもしますから」
「なんでもって言われてもなぁ」
「……」
「それじゃ――カレーは1人で全部食べちゃわないこと」
「あ、う……」
「ミオちゃん、泣いてたぞ」
「うう……ごめんなさい」
薄暗くてよく解らんが、顔を赤くしているように見える。
「はは――まぁ、サナにあげたカレーだから、食べてもいいんだけどさ」
「駄目ですか?」
「まぁ、時間はあるしいいよ」
「ありがとうございます」
彼女がペコリとお辞儀をした。
少しレベルアップさせてやらないと、ここらへんじゃキツイだろう。
仲間が入れば5層まで行けるだろうが、ソロじゃな。
「そうなると、この猫をどこかに預けないとな」
このまま背中に背負ったまま戦闘はできないし。
俺は魔物の買い取りをやっている所に向かった。
冒険者に預けてもどうしようもないし。
「すまんが……」
「らっしゃい!」
頭にハチマキ、ツナギを着たオッサンが対応してくれたので、俺はアイテムBOXからオークを出した。
「おお! アイテムBOX! ――ということは、桜姫さんの所の……」
姫は有名人だが、俺はアイテムBOXのオッサン――という認識しかされていない。
「そうそう――それで、ちょっと頼みがあるんだが……」
「なんでしょう?」
「このオークを卸すから、こいつをちょっと預かってくれないか?」
俺はバックパックを差し出した。
「そりゃ構いませんが……ヤバいものじゃないですよね?」
「違う違う」
俺はバックパックの中を見せた。
猫が中で丸くなっている――狭い所だと安心するようだ。
「猫?!」
「どこからか迷い込んだらしくてな、地上まで連れて行きたいんだが、戦闘に参加させるわけにもいかなくて、ここでちょっと預かってほしいんだ」
「なるほど、そういうことでしたら」
どうやら、預かってくれるようだ。
まぁ、レベル上げといっても、地上に戻る時間もあるから、数時間しかできないだろう。
それまでの辛抱だ。
猫を預かってもらえることになったので、俺は安心してサナと出かけることにした。
レベル上げなら5層か6層だろ。
以前、ダンジョンの中で彼女たちと会ったときには、5層のトレントと戦っていた。
最低でも、そこら辺の敵と戦わないとレベルが上がらないところまできているかもしれない。
――となると、現在レベルが20台後半あたりか。
キララもそこら辺だと言っていたから、サナも追いついたことになる。
ちょっと無茶すぎではなかろうか?
時間もそんなに取れないので、やはり目標は5層だろう。
これからの計画を練っていると、彼女が自転車を持ってきた。
ここまでやってくるのに使ったのだろう。
レベルが20台後半となると、それなりのレベルだ。
自転車に乗れば、俺がやったように、低レベルの敵とのエンカウントをスルーすることができる。
「俺の自転車で行こう。そいつはアイテムBOXに入れてあげるよ」
「はい」
彼女から受け取った自転車を収納して、俺の自転車を出す。
久々に彼女を後ろのステップに立たせると、俺は暗闇の中を走り始めた。
「サナ、暗闇でも目が見えるようになったかい?」
「なりました!」
そうか――やっぱり、それなりのレベルになってるんだな。
若者が成長するのは嬉しいが、心配でもある。
レンに続き、彼女までダンジョンに吸収されてしまったりしたら、俺としてはかなりショックだ。
いや、レンは本当は解らんのだが……状況的に難しいだろう。
サナがそんなことになったら、ミオはどうするんだ。
彼女も、それは理解していると思うのだが。
まぁ、あれこれ口出しするべきではないのかもしれない。
うぜぇオッサンと言われるのも嫌だし。
色々と考えていると、5層に到着した。
そのまま中間近くまで進む。
「ここらへんでいいだろう」
「は、はい」
自転車をアイテムBOXに収納して、戦闘準備をする。
とりあえず、鉄筋メイスを出して構えた。
「さて、なにが出てくるかな?」
この階層の戦闘なら撮影をしてもいいかもしれないが、だいたい天地返しで倒しているからなぁ。
動画映えを目指すなら、格好いい倒しかたを見せるべきか?
かと言って、わざわざ危ないことをするわけにもいかないしな。
そういうのは、仲間の魔導師がいるときにやればいいか。
「グッゴゴゴ」
暗闇の中から、低い震動のような音が聞こえてきた。
徐々に現れる、全身岩でできたような巨体と、赤く光る目。
「ラッキー! ゴーレムだ!」
俺は武器をアイテムBOXに収納した。
こいつなら、武器なしでも勝てる。
「え?! ご、ゴーレムですか?! 打撃や魔法は効かないですよね!?」
「サナは、俺の動画を観てなかったか?」
「いいえ、観ましたけど……あまり参考にならなかったような」
まぁ、俺の戦いかたは、あまりに特殊だからなぁ。
「姫! じゃなくて――サナはここで待機!」
「……わかりました」
名前を間違ってしまったので、彼女がちょっとむくれている。
「ゴゴゴ!」
当たると超強力な質量を利用した攻撃と、岩石の防御力。
普通なら強敵なのだが――俺は素早く敵の懐に飛び込んだ。
そのまま岩石の脚に取りつく。
「おりゃぁぁぁ! 天地返し!!」
渾身のパワーで、そのまま脚を掴んで放り投げた。
「ゴゴゴ!」
巨体がもんどり打って倒れ、地面に叩きつけられるとバラバラになる。
「よっしゃ! サナ! 来い!」
「は、はい!」
彼女がやってくる間に、俺はアイテムBOXから腐敗の短剣を出すと、ゴーレムの胸の部分にある、デカい魔石の縁に短剣を突き立てた。
すぐに、付与された魔力によって、岩肌がグズグズになっていく。
「き、来ました」
サナがジャンプしてゴーレムの上までやって来た。
さすがにレベルが上がっているので、動きも機敏だ。
「サナ、基礎の体力つくりもやっているのか?」
「は、はい。ランニングや、筋トレもやってます」
「偉いな! 感心、感心」
「あ、ありがとうございます」
俺はアイテムBOXから剣を取り出して、彼女に手渡した。
「こいつで、魔石を抉って、取り出すんだ」
「はい!」
剣を受け取った彼女が、グズグズになった岩に剣を突き刺す。
「別に大した剣じゃないからな、折っても構わんぞ」
「えい!」
彼女が力を入れると、魔石がボコッと取れる。
それと同時に赤く光っていた目の光を失った。
「あ!」
サナの身体が光り始める。
レベルアップだ。
そのあとも、ゴーレムを数体倒す。
「レベルはいくつになった? 言いたくないなら構わんが」
「31です」
「お、それぐらいになれば、結構ランキングでも上位にくるんじゃないか?」
「ダイスケさん! ありがとうございます!」
暗闇の中、サナに抱きつかれた。
彼女の2つの大きなものが、俺の身体に押し付けられる。
は~役得役得~。