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7話 ファンタジーでおなじみの敵


 東京にやってきた俺は、特区で冒険者になった。

 いや、ウチの裏にできたダンジョンを潰してすでにステータスが出ているので、もうとっくに冒険者になっていたわけだが。


 登録を済ませた俺は早速ダンジョンに潜った。

 スライムや狼もなんなく倒して、魔石もゲット。

 レベルが高いってことは、すべての能力が上昇しているようだ。

 目もよくなるし、耳もよくなる。


 2層で倒した狼を、横取りされてしまったが、まぁいいだろう。

 相手は、子どもみたいだったし。


 本当は、ダンジョンに子どもがいてはいけないことになっているんだが――やむにやまれぬ理由があるのだろう。

 外に出たら、スマホでググってみることにしよう。

 なにか情報が共有されているはずだ。


 狼を倒したあとには、大きなコウモリも撃破。

 暗闇ではコウモリのほうに分があるように思えるが、俺も見えるから問題ない。

 とりあえず、2層の敵で苦労することはないようだ。


 そのまま3層に降りた。

 ここにも光ファイバーの照明があり、降りた先のすぐ隣に4層への降り口がある。

 他の拠点より明るいし、今まででキャンプしている人や業者の数も一番多い。

 3層の狩りもできるし、ちょっと4層へ降りての狩りもできるので、大きな拠点になっている感じだ。


 なにやら、獲物をさばいている業者の姿も見える。

 ここで処理もしているのか。

 まぁ、ここなら生ゴミが出ても、そこら辺に捨てておけば、ダンジョンに吸収されてなくなる。

 処理代もかからないし、汚染もない――最高の環境だ。


 ここにも子どもがいるのが見えるのだが、周りの冒険者たちが気にしている様子はない。

 やっぱり見て見ぬふりをしているらしい。


 色々と問題がありそうだが、こういうのにうるさい連中は世界が静止した日を境に見かけなくなってしまったし……。

 彼らも食わねばならぬ――ということなら、「やるな」とは言えん。

 俺にはどうしようもできない。


 俺はここで一休みすることにした。

 キャンプ地には多数の人たちがいるので、安全なのは解るが、アイテムBOXを見られたくない。

 ちょっと離れた陰で休む。


 収納から芋とマヨネーズを取り出す。

 芋は自分の畑で採れたものを全部入れてきた。

 保存してあるとはいえ、放置すれば全部芽が出てしまうし。

 芋の芽は猛毒だ。


 取り出した芋は、デカい鍋で塩ゆでにしたものだ。

 まだ熱くてホクホクだ。

 アイテムBOXに入れておけば、時間が止まるか、ゆっくりと経過するようだ。

 これは、家にいるときに気がついた。


 お湯も取り出して、お椀にインスタント味噌汁を作る。

 特区で食料を買うと、ぼったくられるが、これで節約ができるわけだ。


 まぁ、本当は毎日芋ばっかり食ってたんで、もう食いたくはないんだがなぁ。

 ――とはいえ、贅沢は敵だ。

 欲しがりません勝つまではってな。


 芋ばかりでビタミンが欲しいなら、松の葉がある。

 俺はアイテムBOXから出した細長い葉をかじった。

 ビタミンA、C、K、マグネシウム、ケルセチン……etc、栄養満点だ。

 くそマズイけど。


 真っ暗でモノクロの風景の中で飯を食っていると、味がいまいちだな。

 やっぱり視覚ってのも、美味しさの一部だというのが解る。


 これ、アイテムBOXがなかったら、温かい食事というのはちょっと難しいかもな。

 火や電気が駄目となると、化学反応しかないが――あ、そうだ。


 石灰と水で、弁当を温めるやつがあったような。

 駅弁に売ってた、シュウマイ弁当のやつとか、カップ酒をお燗するやつもあったな。

 軍用のMRE(戦闘食糧)にもあったはず。


 そういうの、特区でも売っているのかね?

 ありそうな気がするが、金の節約のために、みんな冷や飯を食っているかもしれない。


「さて……」

 飯を食ったので、次に行くとするか。

 キッチンペーパーで食器を拭いてから収納する。

 ゴミはそこら辺のすみっコに置いておけば、ダンジョンに吸収されるだろ。


 俺はそのまま3層を進むことにした。

 たくさんの人がいて、賑わっている。

 こちらをジロジロと見ている気がするのだが、やっぱり普通の格好でダンジョンに潜っているのが目立つのかもしれない。


 初心者が無謀なことをやっているようにしか見えないからな。

 さっき、剣がドロップしたのだが、防具も落ちてこないだろうか。


 近くに冒険者がいるが、ちょっと離れて歩けば暗くて解らんだろう。

 鉄道は次の4層にも走っているようだ。

 なん層まであるんだろうな。


 ここでも拠点に冒険者たちが集まっているのだが、

 重装備の人たちが増えているように見える。


「「「ジロジロ……」」」

 ああ、ここでもジロジロと見られているような気がする。

 まぁ、気にしないでおこう。


 冒険者たちから離れようとすると、呼び止められた。


「おい!」

 振り向くと、黒っぽい近代的な防具を着込んだ男が立っていた。

 短い髪型に、ちょっと体格のよくて背が高い――ファンタジーの戦士というよりは、特殊部隊っぽい。


「なにか?」

「お前、装備もなしに先に行くのか?」

 一応、こっちはかなり歳上なんだがなぁ……まぁ、こういう所は実力勝負だから、どうでもいいが。


「ええ、まぁ――こういうのは自己責任だと知ってますから、心配無用ですよ」

「お前みたいな常識知らずのノービスがいると、こっちが迷惑するんだよ!」

「ああ、それじゃそちらさんとは、別方向に行きますから」

「そういう意味じゃねぇんだよ!」

「親切心からの発言だと思いますけど、私には必要ありませんから。危なくなったら、自分で判断して撤退しますし」

 男を無視して暗闇の中に入る。

 彼らは明かりがないと追ってこれないだろう。


「おい! こら!」

 怒鳴っている声はするが、こっちに来る気配はない。

 そのまま俺は、拠点を離れることにした。


 彼も親切心から言っていると、そう思いたい。

 実際に普段着のまま、ダンジョンに入ってきているからな。

 それとも、それっぽい装備を揃えてから入ったほうが、絡まれることがなかったか?


「ん~」

 とりあえず、金がないしなぁ……。

 それに、高レベルのせいか、十分に戦えるみたいだし。


 しばらく進むと、暗闇になにかがうごめいている。

 どうやら人型だが――人間ではない。

 近づくと正体が判明した――ゴブリンだ。

 子鬼とか言われている小柄な魔物で、青や緑系の皮膚の色をしており人間のように二足歩行している。

 3層で出てくるということは、狼よりは強いということなのだろう。


 それに人型ということで、武器や防具を装備している。

 あれって倒したら装備がそのまま拾えるんだろうか?

 もしそうなら美味しいかも。


 俺は魔物を倒すために、ある方法を試してみることにした。


「土嚢召喚!」

 アイテムBOXに収納されていた土嚢がドサドサと空中から降ってくる。


「グギャ!?」「ギッ!?」

 突然上からなにか降ってきて、敵も混乱したようだ。

 直撃すれば――なんて思っていたが、狙って出せるわけでもないので、ヒットさせるのが難しい。

 それでも頭にヒットした敵がいた。


 敵が乱れたら、切り込むチャンスだろう。

 俺は砂鉄入りのバットを振り回し、敵の中に飛び込んだ。

 鈍い音を立ててバットが魔物の頭に横から直撃する。

 吹っ飛んだゴブリンがゴロゴロと転がった。


 次は、下にあった土嚢を拾って投げつけた。

 普通じゃこんな重いものを振り回して投げるとか不可能だろう。

 飛んでいった土の入った袋はゴブリンに直撃して、2体一緒に転がった。


 倒れている魔物の所に行くと、上からバットを打ち付ける。


「グエッ!?」「ゴ?!」

 妙な声を出すと、ゴブリンは白目を剥いて手足をビクビクと痙攣させ始めた。

 なんだかイビキのようなものも聞こえる。

 相手が人型だと、砂鉄バットの効き目があるようだ。

 人間と同じように脳震盪を起こすのだろう。


 この武器は敵の動きを止めるのに、十分な効果があるのが解った。


「ギャア!」

 後ろから子鬼が切りかかってきたのだが、敵の切っ先が白い線になって見える。

 こいつを避ければ、攻撃が当たらないのだろう。

 そういえば、昔の達人だかそんな人が、鉄砲の弾が飛んでくる所が白い線になって見えた――みたいな話をなにかで読んだ気がする。


 俺はゴブリンの切っ先を躱すと、身体に比べて大きめな頭を横に払った。

 食らった敵は、もんどり打って横に飛んでいく。


 残りは1体――拾った土嚢を子鬼に向かって投げつけた。

 今度は頭にヒットして、敵がひっくり返る。

 コレはダメージ大だろう。


 これで全部倒したことになるか。

 まだ息はあるかもしれないし、残敵がないか周りを確認してから、止めを刺す。


「あ、そういえば――相手が人型だというのに、なにも考えずにやってしまったなぁ」

 自分でも驚いてしまった。

 もっと戸惑いがあると思ったのだが――こういう閉鎖空間だし、最初からやる覚悟で来てるから、その感覚が薄いのか。

 それとやはり、事前にヒグマと対峙してたことが大きい。


 それとも――このダンジョンってのは、非日常的な行動を助長させるなにかがあるのだろうか。

 まぁ、毎日こういう殺戮をやって、生き物を殺しまくってたら、精神に異常をきたすこともありえるだろう。


 俺はゴブリンのかばねを、一旦アイテムBOXに全部収納した。

 呑気に解体などをしていると、鳶に油揚げをさらわれることが解ったし。

 人のいないような場所に行くと、一体ずつアイテムBOXから出して魔石を取り出す。


「うう……」

 勢いで倒してしまったが、やっぱり人型の腹を切るのは抵抗があるなぁ……。

 これも慣れないとな。

 防具やら、剣もゲットできたし、鉄兜を被っているやつもいる。


 それはいいのだが――臭ぇぇぇ!

 なんというか、全身からクソと小便の臭いが……目に滲みる。

 これこそ、ゴム手袋がないと無理だ。

 絶対に触りたくねぇ。


 これはアイテムBOXに入れて1体ずつ解体するのが正解だろう。

 鼻が曲がる。

 高レベルで目がよくなって耳もよくなったら、残った鼻もよくなっている。

 においにすごく敏感だ。


「ぐぐ……」

 覚悟を決めて、子鬼の腹にナイフを入れて魔石を取る。

 キモい! 魔石は大きくていいが、こんなくさいのを買い取りとかしてもらえるんだろうか?

 特区では魔物の肉も売っているのだが、こいつの肉もあるってことか?


 信じられん……。


 確かに防具やら武器やらもあるが、こんなくせぇの装備したくねぇ。

 魔石が採れた――やっぱり、2層の狼よりちょっと大きい。

 魔物の冊子を参照すると、おおよそ2000円ぐらいの値段が目安らしい。


 え~と、5体いるから、これだけで1万円か。

 武器やら防具もドロップしているから、もうちょっと金になるかもしれない。

 3層辺りから、やっと商売になりそうだが――。


 アイテムBOXを持ってないやつは、このくせぇの担いで上を目指すわけ?

 それとも、ゴブリンは放置の対象なのだろうか?

 よく解らんから、とりあえずアイテムBOXに入れておく。


 上に戻ってから調べてみて、金にならないならダンジョンに戻ったときに捨てよう。


 アイテムBOXからものを出して、奇襲する戦法もいまいちだな。

 デカいものを入れても重さを感じるわけでもないから、もっと大きなもののほうがいいのかも。

 あ、そうだ――そういえば、軽トラが入っているが……。


 いや、落っことして愛車が壊れたら困る。

 今は、インフレしてて中古でも車は高いからな。

 大切に使わないと……。


 ダンジョン内に巨大な岩かなにかが落ちていれば、そいつをアイテムBOXに入れよう。

 岩ならいくら割れても、捨てても、惜しくはないからな。


 ゴブリンを仕留めて、そのままダンジョンの中を進む。

 今度はスケルトンという骨だけの魔物が3体。

 カタカタとやってくるだけなので、土嚢を投げつけて倒した。

 相手に知能があれば避けられるだろうが、こいつらに脳みそはないみたいだ。

 ただ近づいてきて剣を振るだけ。


 動きは単純だが、たくさん出てくると危ないかもしれない。

 知能がないってことは、恐れを知らないからな。

 骨を倒して魔石は採れたが、骨ってなにか使い道あるのか?

 骨粉とか? こいつも剣と盾をもっていたから、それは金になるかもしれない。


 そのまま真っ暗なダンジョンを進む。

 腹が減ったので、アイテムBOXからパンを出して食った。

 高レベルのせいか疲れはしないのだが、めちゃ腹が減る。

 こりゃ、食費も稼がないと駄目だな。


 これだけカロリーを消費するなら、アイスやらチョコを食いまくっても平気なのではなかろうか。

 たくさんの魔物を倒したが、普通の人はこれらを運ばなくてはならない。

 自転車やリアカーもありだと思うが、階層の移動が坂道だから、そこが大変そうだな。

 やっぱりエレベーターを使うのだろうか?


 たくさん獲物を運べれば金になるから、エレベーター代を出してもペイできるのかもしれない。

 そこらへんは、労力と経費とのトレードオフだな。

 俺の持っているアイテムBOXが、チートすぎるだけだ。


 ――3層が楽勝なので、4層への降り口に戻って来た。

 そのまま坂を下っていく。

 天井の高さがあるダンジョンだが、ここまで来るとかなり人が少なくなっている。

 徐々に照明の数も少なくなって、心細い――おそらく、照明の補助はここで終了なのではあるまいか。

 おそらく、ここらへんまでが鉱山としてのコスパが一番よいのだろう。


 ここより下層は、高レベルの冒険者しか行けないし、魔物を倒すのも苦労するはず。

 資源として活用するなら、安いものを大量に――これが欠かせないだろう。


 また揉めると嫌なので、なるべく暗い場所を通り、人と会わないように気をつける。

 そそくさと4層にやって来た。

 今まで下に降りる通路で魔物に遭わないので、安全地帯なんだろうな。

 それで出入り口の周辺に人が集まっていると――。


 4層入り口のキャンプは数えるぐらいしか人がいない。

 魔物の冊子によれば、この階層はレベル24ぐらいないと危ないらしい。

 レベル24というと、かなりの高レベルってことになっているから、人が少ないのもうなずける。


 俺も、ちょっとここで戦ってみてから、引き上げることにしよう。

 とりあえず3層までは、余裕で戦えるのが解ったし。

 かなり敵が強化されるらしいので、一応冊子で予習をする。


「え~と、ここはオークやら、ホブゴブリンが湧くのか?」

 オークというと、女騎士が「くっ! 殺せ!」のオークだな。

 これが冗談ではなく、女性の冒険者は人型の魔物に襲われることがあるらしい。

 やっぱり危険だよなぁ。


 オーククラスになると魔石は1個2万円ぐらいになるらしいが、命がけで戦って見合うのだろうか?

 冊子によると食用としても優れているらしいから、やっぱり運び出さないと金にはならないみたいだ。


 ん~、黒豚が一頭35万円ぐらいだった気がする。

 オークなら、黒豚よりデカいだろうし、いい値段になる気がする。

 それも運び出せればの話だが、そのぐらい大物なら鉄道を使ってもペイできそうだな。


 それから、ハーピーなどがいるらしい。

 ハーピーって、空を飛ぶ魔物だよな?

 天井が高いので、そういう魔物が生息しているのか?

 捕まえることができれば、高値で取引される――と書いてある。


「へ~」

 捕まえるって生け捕りか?

 なんに使うんだ? ペットか?

 魔物をペットかぁ――確かに珍しい生き物には違いないが。


 天井の高い通路が多いが、低い所もある。

 そういう場所には空飛ぶ魔物がでないのでは?

 やっぱり生息域みたいなものがあるんじゃなかろうか?


 ハーピーのことを考えながら進み始めると、足音が響いてきた。

 暗闇から現れる大きな鉄の棒を持った巨体。


「ブモォォ!」

「でけぇ! オークだ!」

 眼の前に現れたのはまさしくオークだったが、俺の想像を超えてデカかった。

 筋肉ムキムキで大きな腹――身の丈は2m以上、体重は200kgぐらいないか?


 それでも、俺が故郷で対峙したヒグマよりは小さい。

 1体だし、バカ正直に真正面から打ち合うこともないだろう。

 俺は少し距離を取ってから、アイテムBOXから投石器を取り出した。

 すでに、10cmほどの大きな岩が装填してある。


「ブモッ! ブモッ!」

 敵はデカい鉄の棒をブンブン振り回しているが、離れていればそんなものは怖くねぇ。

 一応、周りを確認しつつ、投石器を回し始めた。

 一応、投石の練習はなん回かしたが、暗いダンジョンで使うのは初めてだ。

 ちょっと不安だが、明るい所とは違うことに気がついた。


 飛んでいく場所が、おおよそ解るのである。

 敵の攻撃も、白い線になって見えたのだが、自分の攻撃もある程度見えるのかもしれない。

 ゲームのエイムアシストみたいなものか。

 これなら大幅に外すこともないだろう。


 胴体は的がデカいが、内臓を傷つけると、商品価値が下がりそうな気がする。

 ――そうなると脚か。


 俺は脚に狙いを定めて、投石器の縄を離した。


「ピギィ!」

 甲高い鳴き声とともに、オークの膝の部分が吹き飛び、大きな身体が倒れ込む。

 アイテムBOXから鉄筋メイスを取り出すと、倒れた敵にダッシュして、頭に目掛けて凶器を振り下ろした。


「オラァ!」

「ギッピィ!」

 オークの頭がザクロのように潰れる。

 デカい魔物だから、頭も鋼鉄のように硬くて防御力が高いのか?

 ――と、思ったが、そんなことはなかったようだ。


 巨体の魔物も、流石に頭を潰されては即死したらしい。

 ビクビクと痙攣を繰り返したのちに、動かなくなった。

 ゴム手袋をつけて、胸の辺りから魔石を取り出す――結構大きい。

 野球のボールより一回り小さい感じ。


「収納――」

 豚のような巨体が、アイテムBOXに吸い込まれた。

 アイテムBOXに入るってことは、死んでいるのだろう。

 さて、どのぐらいの値段になるのか?


 ちょっと楽しみであるが、こういうのでウキウキするのは攻略の最初だけだろうか?

 そのうち、機械的な作業の繰り返しになりそうな気がする。


 上層で、ひたすらスライムなどを狩っている冒険者は、まさしくそんな感じではなかろうか?

 やっぱり、同じことの繰り返しってのは中々つらいものがある。

 ゲームのレベリングみたいに、徐々に数値が上がるなら楽しみもちょっとあるだろうが、このダンジョンでは無理だ。


 気分的なものはさておき――さっきも思ったが、こんな命がけな戦闘をやって、オークの魔石が2万円ぐらいって安くないか?

 オークの巨体はいい値段がつきそうだが、アイテムBOXなどがなければ出口まで運ぶのが大変だ。

 労力に見合わないような気がするのだが……。


 政府としては、倒すのが大変で数少ない難敵の魔石より、大量の安い魔石が欲しい――そういう方針のように思える。

 そりゃデカい魔石が簡単に手に入るのなら、そっちのほうがいいに決まっているけどなぁ。


 地面にはオークが落とした鉄の棒が転がっている。

 かなりゴツくて重い。

 20kgぐらいありそうだが、俺は片手で持ち上げられた。

 どんだけパワーアップしているんだ。


 振り回してみる――余裕だ。

 俺が作った鉄筋メイスの代りに、こいつをメインウェポンにしてみるか。

 かなり威力もありそうだしな。


「お?」

 近くにガラス瓶が落ちていて、なにか入っている。

 暗闇でも見える目がないと、こういうのも見逃すんじゃないか?

 こいつもポーションかもしれないので、アイテムBOXに収納。

 より上級のものなら値段も高いだろうし、いざというときのためにストックも必要だ。


「さて――4層まで余裕だと解ったし、一度帰るか……」

 冊子にかかれている魔物は、4層で終わりだ。

 あとはネットなどで情報収集しないとだめだろう。

 それ専用の掲示板なども多数存在しているので、利用することになる。

 戻って泊まる所も探さないとダメだしな。


 引き返そうとした俺の耳に、つんざくような鳴き声が飛び込んできた。


「ギャーッ! ギャーッ!」

 どうやら上から聞こえるようなので、そちらを見ると――大きな翼を持ったなにかが飛んでいた。

 ダンジョンにいるから鳥ってことはないだろう。

 その証拠にクチバシなどはなくて、人の顔が見える。

 髪が長いように見えるので、女の顔か?

 なんだか、胸も露出しているように見えるし。


 ははぁ――あれが、ハーピーってやつか。


 

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