67話 態勢を立て直す
トップギルド合同でダンジョン深層へのアタックを行っている。
5層まで余裕だったのだが、6層からいきなりキツくなった。
他のギルドも7層へ到達している猛者ばかりなのだが、今回は手こずっているようだ。
ギルドが共同して、高レベル冒険者の人数も増えているので、ダンジョンが難易度を調整しているのではないだろうか?
まるでゲームなのだが、今までもゲームらしいところはあったし、なにを今更――という感じでもない。
レベルやらアイテムドロップなどがある時点でゲームだし。
大量のレイスに手こずり、ギルド黄金の道のリーダーが脱落してしまった。
彼は、実際のレベルより高く申告していたようだ。
ちょっと前までは、そのレベルだったらしいのだが、高レベル冒険者として持ち上げられて、ダンジョンの巡回を怠ってしまったわけだ。
まぁ単純に言えば――調子に乗ってサボってるうちにレベルダウンしてしまったということらしい。
レイスの大群で、魔導師たちの魔法も消耗し、高レベル冒険者は1人戦力外に――。
これは一度立て直す必要がある――というわけで、6層入口の安全地帯まで一旦戻ることになった。
「散開しろ!」
暗闇に姫の声が響く。
「&*%**!」
安地に戻る前に、俺たちは再び、あの赤くて3倍速い魔物とエンカウントした。
魔物の周りに赤い光が集まり始める。
「魔法です! 射線近くにいる子たちは、私の後ろに!」
悲鳴を上げながら、魔導師の女の子たちが幽鬼の後ろに隠れる。
「ウゴァァァ」
魔物の巨大な口が不気味に開かれた。
口内は真っ赤に染まり、鋭い牙がいくつも並んでいる。
その瞬間、空気が震え、魔物の喉元から低いうなり声が響き渡っていく。
口の奥から、眩しいほどに赤い光がゆっくりと集まり始めた。
光は次第に強さを増し、まるですべての光を吸い込むかのように集中していくのが見える。
その光が限界に達した瞬間、魔物が咆哮を上げ、それが一気に解き放たれた。
赤い光線は鋭く、直線的にダンジョンの暗闇を貫いた。
「聖なる盾!」
幽鬼が唱えた魔法で、透明な壁が出現して敵の攻撃を阻んだ。
防御魔法に衝突した赤い魔法は、四散してダンジョンの壁を削る。
上からバラバラと岩の破片が落下してきた。
かなりすごい魔法の攻撃だったが、幽鬼は無事のようだ。
俺は魔物の攻撃を見ながら、素早く魔物の後ろに周り込む。
もちろん反撃をするためである。
アイテムBOXから、ミサイルを取り出して投鎗器にセット。
赤いやつは一度倒しており、弱点である魔石の位置も判明している。
この魔物は防御魔法も持っており、正面からの攻撃は避けられる可能性があるだろう。
それならば――後ろに回って死角からの一撃必殺を狙う。
俺は、投鎗器を構えた。
全身に力を巡らせ、大地からの力も背中を通り、腕に送る。
ミサイルが進む軌道が闇の中に白く浮かび上がった。
「おらぁぁぁ!」
それをなぞるように、放たれた飛翔体が闇を切り裂く。
敵の背中に命中すると、一瞬の閃光がダンジョンの中を照らした。
おそらく魔石が破壊された光だろう。
「ゴァ!」
のけぞり天井を向いた赤い魔物が、身体を少しひねり俺の方を向こうとしたのだが、そのまま崩れ落ちた。
「ふう……」
なんとか一発で仕留められたらしい。
「皆、大丈夫か?!」
姫が仲間の安否を確認して回る。
俺は、赤い屍をアイテムBOXに収納した。
収納できるってことは、完全に死んでいるってことだ。
それはいいのだが、唯一金になりそうな魔石を破壊してしまったので、本当に骨折り損のくたびれ儲けだ。
いや、立派な角があるし、なんらかの素材にならないだろうか?
漢方薬になるとか……。
そんなことを考えていると、イロハが不満の声を上げた。
「まったく、なんなんだよ! いつもとまったく違うじゃねぇか!」
皆の声を聞くと、いつもはこんな難易度ではないらしい。
「それってやっぱり、高レベル冒険者が集まっているから、バランス調整が入っているんじゃないのか?」
「くそ! 誰がダンジョンをやっているのかしらねぇけど、根性ババ色だぜ!」
「うう……」
イロハが憤慨している横で、幽鬼が倒れ込んだ。
「どうした? 魔力切れか?」
暗いので、顔色は解らないが、苦しそうだ。
以前、カオルコが魔力切れになったときの症状とよく似ている。
「ええ……そんなところです……」
「歩けるか?」
「……」
彼が立ち上がろうとしたのだが、無理っぽい。
こりゃ駄目だ――俺が背負うことにした。
「申し訳ない」
「お姫様抱っこのほうがよかったか?」
「い、いえ――それはちょっと」
「ははは」
個人的には背負うなら女の子がいいが、そんなことは言ってられない。
もたもたしていると、また敵とエンカウントするかもしれないし。
早く安全地帯に向かわないと。
幽鬼を背負った俺のあとを、女の子たちがついてくる。
こういうことがあるから、男の冒険者のほうが人気があるんだよな。
まぁ、男を背負っても平気――イロハみたいなパワータイプもいるが、あくまで特殊な例だし。
「ちょっと聞きたいんだが」
俺は背中にいる幽鬼に質問をした。
「なんでしょう?」
「俺は魔法が使えないから解らないが、初期魔法も術者のレベルが上がると、強力になったりするのか?」
「ええ」
そういえば、光弾の魔法も幽鬼は5発ぐらい出していた。
それを束ねれば、威力も5倍ってことにならないだろうか。
なるかもな。
「ギャ! ギャ!」「ギャ!」
上の暗闇からハーピーの声が聞こえる。
「お? ハーピーが戻ってきたか。それじゃ、もう魔物とはエンカウントしないかもな」
「あれも、魔物なんですが……」
「ははは、そういえばそうだが、あいつらは見逃してやってくれよ。役に立つからさ」
「はぁ……」
幽鬼は本気にしていないようだ。
ゴーレムやレイスも、エンカウントする前に教えてくれたのに。
まぁ、魔物と仲良しの俺が変といえば、変なのかもしれないが。
「ギャ!」
ハーピーが俺の頭の上に降りてきた。
「お~い、重いぞ!」
「ギャ」
「ぎゃあ! ちょっとちょっと!」
背中にいる幽鬼がパニックになっている。
もう1羽も降りてこようとしているようだ。
俺はハーピーから逃げるように安地に戻ってきたのだが、周囲を警戒する。
魔物とエンカウントする気配もないし大丈夫だろう。
背中から幽鬼を降ろす。
「本当に、魔物とエンカウントしませんでしたね」
「だから言ったろ? 気配があれば、あいつらは真っ先に逃げるからさ」
「なるほど……」
これでちょっとは信用したのかもしれない。
「おい、ダーリン! 置いていかないでくれよ!」
イロハもやって来た。
「悪いな。ハーピーたちもいるから、もう魔物とはエンカウントしないと思ってな」
俺は傍にいて片翼を上げている彼女を指した。
「そいつら、本当に魔物探知機になるんだな」
「まぁな、他の魔物が来たら真っ先に逃げるし、はは」
他のギルドのメンバーも戻ってきたので、アイテムBOXから荷物を出す。
ついでに、お湯が入った瓶を出した。
「これを試してみるかい?」
「これは? お湯?」
幽鬼が瓶を手に取った。
「実は、7層に温泉があるんだけど」
「え? 温泉ですか?!」
彼が驚いて、瓶を落としそうになった。
「エンプレスとの研究で、そこのお湯に魔力回復効果があることが解ったんだよ。回復薬みたいな即効性じゃなくて、ゆっくりだけどな」
「もしかして、魔力回復薬?! まだ、見つかってなかったのでは?!」
「まぁ、そうなんだけど、それがその代わりになるかは解らないが」
通常なら、寝て起きて12時間はかかる魔力の回復が6時間ほどで完了することを話す。
「それでもすごいのでは?! 発売はしないのですか?!」
「あ~、実際に売るとなると、どういう副作用があるか解らんし……はは」
ダンジョンでドロップした回復薬を使うのは自己責任だが、市販となるとそうではない。
訴えられでもしたら、たまらんからな。
「あの~……」
他の魔導師たちもやってきた。
「試してみるかい?」
「は、はい」「はい」
「消毒はされていると思うけど、調子悪くなったりしたら、普通の回復薬などを使ったほうがいいかもしれない」
「あの、これの消毒ってどうやっているんですか?」
「ああ、アイテムBOXには生物は入らないんだ。逆にいえば、アイテムBOXに入った時点で細菌などは全部死滅している」
「そうなんですね」
ただ、細菌などが出した毒素などは消えることがないので、注意が必要だが。
自己責任ということで、試してもらうことになった。
効果のほどは確かめてあるので、間違いないのだが。
幽鬼も少し回復して、歩けるようになったので、皆で集まり会議をする。
当然、ゴリラの件だ。
彼の話を聞くと――レベルが低いのは間違いないらしい。
同じギルドの女性が思っていた以上にレベルダウンしていたようだ。
自分のレベルは、自分にしか解らないからな。
地上に帰れ――と言っても、レベルが低いんじゃ危険がある。
このまま俺たちに同行して、サポートの魔導師たちと一緒に後方待機してもらう――ということになった。
彼の相棒である女性魔導師は、俺たちの所に組み込まれる。
彼女はレベルの詐称などはないようだし、それなりの実力者。
後方に下げるのはもったいない。
もちろん、無理やりではない。
彼女にも了承を取っている。
「……」
ゴリラはなにも言わず下をむいたまま。
反論もしようもないだろう。
レベルが足りないのに、トップランカーたちのアタックにのこのこついてきて、迷惑をかけてしまったのだから。
まぁ、穴があったら入りたいところだろうが、あいにくとここはダンジョン。
穴もないし、逃げ出すこともできない。
彼のレベルで、逃げ出したらどうなるのか?
死にかけたことで、身をもって知ったことだろう。
「よろしくな、久保さん」
「ミカンでいいから」
「解った」
「でも、彼のことはいいのかい?」
俺は、魂が抜けたようになっているゴリラを指した。
「いいのよ、あんなやつ! 自業自得だからさ!」
「む~」
臨時とはいえ、女性がパーティに加わることになったから、姫の機嫌が悪い。
「仕方ないだろう」
「解っている!」
「あいつにも愛想が尽きたんで、ここに入ってもいい?」
ミカンが俺の腕を掴んできた。
「断る!」
姫の即断だ。
「なんでぇ?」
「組むのは今だけだ」
「なんだよ、ケチぃ!」
まぁ、ギルド桜姫は私的なギルドだからな。
仲間が増えることはないだろうと思う。
「まぁまぁ――」
一旦、なだめる。
「それじゃ、ダーリンがサブギルドを作って、私はそこに入るとか?」
「なんで、ミカンまでダーリン呼びなんだよ」
「みんなダーリンって呼んでるじゃない」
「断る!」
「なんで、ダーリンのギルドなのに、桜姫が断るのよ!」
「私のダーリンだからに決まっているだろ!」
「ずるいじゃない!」
「ずるくない!」
「「ぐぬぬ……」」
睨みあっている2人を止める。
「ちょっとサブギルドまで作っている余裕はないなぁ。そもそも歳だから、いつ引退するか解らんし」
「ええ~?! そんなに強かったら、レベルダウンするまで、相当稼げると思うけど」
「はは――まぁ、金もあるしなぁ……」
「え?え! お金もあるの?!」
「それなりに……」
「それじゃ、私を愛人にしない?」
いったい、なにを言い出すのやら。
変わり身の速さに、おどろ木ももの木さんしょの木。
「はぁ?」
「駄目に決まってるだろ!」
即座に姫が否定して、間に入った。
「なんでよ! オガは愛人やってるんでしょ?!」
「なんでバレてんの?」
俺も驚く。
「オガが自慢してるし!」
「あちゃ~」
自慢するかぁ。
そういえば、ギルドの女の子たちに服を選んでもらったとか言ってたな。
その女の子たちからも広がっているってことか。
こりゃもう、公然の秘密ってやつになってるな。
「オガのやつはいいんだ。私がいいって言ったし」
「それじゃ私もOKね?」
「駄目に決まっているだろ!」
「なんでだよ!」
「最初に戻るんじゃないっての!」
とりあえず、2人を離す。
力も持って金も持っているというのは、こういうことか。
金に群がられても、あまりうれしくはないがなぁ。
とりあえず保留ということにしておく。
ミカンは不満そうだが、彼女が今所属しているギルドのこともあるだろう。
黄金の道は、女性の副リーダーがしっかりしてそうだったから、潰れることはないと思うが……。
リーダーがレベル詐称していたって話が広まると、抜けるメンバーも増えるかもしれない。
ここが踏ん張りどころだな。
それに――ちょっとサボってレベルダウンしてしまったけど、元々はそのレベルにいくぐらいの実力はあるってことなのだろうし。
副リーダーの彼女は、ゴリラと幼なじみということだったが――幼なじみイコール負けは確定というパターンからひっくり返したのではあるまいか。
それはさておき――そういえば、気になることがあったので、幽鬼のところに聞きにいく。
背負って運んでやったし、温泉のお湯を提供した。
ギブ・アンド・テイク――ちょっとぐらい質問をしても答えてくれるだろう。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「なんでしょう?」
座っている彼の顔色もだいぶよくなったようだ。
「ダンジョンにものを放置すると吸収されちゃうけど、それを防ぐ手立てがあるとかなんとか……」
「ああ、そのことですか――ありますよ」
「それは……?」
どうやら、「フィックス」という魔法らしい。
「最初はなんの魔法なのか、まったく解らなかったのですが、色々と試して――ダンジョンのものを固定する魔法だと解りました」
「つまり、その魔法を使うと、放置したものでもダンジョンに吸収されなくなると――」
「そのとおりです」
「画期的じゃないか!」
「そうです」
「その魔法だけで、めちゃ稼げそうな気がするけど。ダンジョン内の公共設備に魔法をかけるとか……」
「実はもうやってます」
「そうなんだ」
「ええ――どうぞ、このことはご内密に」
「承知した」
なんと、ダンジョンに吸収されなくなる魔法があるとは。
そんな魔法があるなら、ダンジョン内の建築がはかどることになるな。
幽鬼の話だとすでに利用されているようだから、新しく発見された階層の施設には利用されているのかもしれない。
この魔法だけで一生食うに困らないかもしれん。
まぁ、攻略が進めば、他の冒険者がフィックスの魔法を覚える可能性もあるが。
「――ということは、その魔法があればダンジョン温泉施設が充実しそうだな……」
「温泉の話は本当なのですか?」
「もちろん、お湯を飲ませたじゃないか」
「にわかには信じられませんが……」
「いや、俺も信じられなかったよ。お湯がどこからやってくるのか、不明だし」
「はは――まぁ、このダンジョンじたいが、冗談みたいなものですから、なんでもありですが……」
彼が皮肉るように笑う。
俺のアイテムBOXがあれば、大量の資材の搬入もできるし。
ダンジョン温泉スパ――実現が見えてきたな。
ダンジョン鉄道が充実して一気に7層まで通るようになれば、観光客も増えるかもしれない。
ここは、姫の実家――八重樫グループの協力を得られないだろうか。
そうすれば、色々と実現しそうだ。
まぁ、6層や7層の強力な魔物をどうするのか?
――というそもそもの問題もあるけどな。
7層の入口には、広大な安全地帯がある。
温泉から、安全地帯までお湯を引っ張ることはできないだろうか?
それなら、安地に温泉ができるぞ、ははは。
その前に、どうやって7層を攻略するかって問題もあるが。
問題は山積みだ。
ダンジョン内は真っ暗なので、時間の感覚はあやふやだが、カオルコの時計によれば――。
朝に出発して、レイスとの戦闘は昼前。
そこで、魔導師の魔力を使い果たして戻ることになってしまった。
通常なら12時間ほどかかる魔力の回復も、俺の温泉水のお陰で6時間ほどで回復できる。
寝て起きて、明日の出発には間に合う計算だ。
これは攻略に対する結構大きなアドバンテージになるだろう。
ちょうど昼頃なので、昼食にする。
皆が戦闘のあとなので、食欲旺盛だ。
俺たちの所には、イロハパーティのほか、ミカンまでやって来ている。
ゴリラは――1人寂しくインスタントを食べていた。
もう帰りたいだろうが、ここからじゃ1人では帰れない。
今の彼では5層の敵もギリギリといった感じだろう。
そのことは彼が一番解っているはず。
「お前たちは、自分たちの食料を食べればいいだろう! なぜウチの食事を食べるんだ!」
俺の料理を食べている女の子たちに、姫が切れた。
「え~、だってダーリンの料理、美味いじゃん」「コクコク」
イロハの言葉に、魔導師の女の子――コエダも頷く。
「え~?! これってダーリンが作ったのぉ!?」
ミカンも驚くのだが、なんでこいつまでダーリン呼びなんだ。
「そうなんだよ」
「お前たちが食べたら、私たちの食い扶持が減るだろ!」「そうですよ」
姫だけではなく、カオルコも抗議し始めた。
「カオルコはかなり大飯喰らいだしな」
「魔導師はお腹が空くんです!」
「いいだろ? トップランカー桜姫がケチケチすんな」「そうそう」
イロハとミカンがもくもくと料理を食べている。
「イロハが料理だめなのがわかったけど、ミカンもなのか?」
「なによ、ダーリン! 料理は女とかいう前時代的な考えを押しつけるつもり?!」
「そうは言わんが――男女平等って言うなら、俺と同じぐらい料理できるようになってほしいな」
「「「うぐっ!」」」
そこにいた女の子全員が言葉に詰まる。
まぁ、味音痴という人やアレンジャーって人もいるから、無理強いはしない。
それなら俺が作ったほうがいいからな。
食事が終わったら各々が休む。
再出発は明日の朝になるが、それまで暗いダンジョンではやることがない。
魔法の明かりの下で、本を読むか、ミーティングをするか。
幽鬼の所は、かなり綿密なミーティングをしているようだ。
レベルが上がった子もいるから、その能力もチェックだろう。
秘密にしないで、しっかりと報告をさせている。
それにくらべて、ウチはテキトーだな。
まぁ、テキトーでも、上手くいっているから問題ない。
暗い中、俺は思いついた武器を作ることにした。
レイスという魔物には、魔法かエンチャントされた武器しか通用しないことが解った。
このダンジョンではドロップしたアイテムを鑑定する方法がなく、魔法が付与された武器を用意するのが難しい。
俺がやったように、ドロップアイテムを実際にレイスに使ってみるというのも1つの方法だろうが、もっと簡単に魔法の武器を作れないだろうか?
それが思いついた武器だ。
アイテムBOXから小さな魔石を取り出す。
魔法を使えない俺だが、魔石に魔力は込められると解ったので――魔力を込めた。
成功した証拠に、魔石の中が青く光る。
それを紐で包むように結んだ。
「よし!」
とりあえず、振り回してみる。
今の俺が全力で振り回したら、紐が切れて飛んでいってしまうだろうから、力加減が難しい。
「ダイスケさん、それはなんですか?」
カオルコが、俺の行動に不思議そうな顔をしている。
「これは―― 一応、即席の魔法武器のつもりで作ったんだけど」
「え? それがですか?」
「レイスにエンチャントした武器が通用するなら、魔力を込めた魔石も武器になるんじゃないかと思って……」
「確かにその可能性は考えられますが……」
「そういう話を、いままで聞いたことは?」
「ありません」
話を聞いていたイロハが大笑いをした。
「ははは! それでレイスが倒せるようになるなら、レイスも雑魚敵に早変わりだな!」
「これが本当に通用するなら、魔石を棒につけたり剣につけたりしただけでも、簡易なエンチャント武器になる」
「うむ! 私はダーリンのことを信じるぞ」
姫は俺の考えを支持してくれるようだ。
試してみないことには解らないが――。
さて、どうなるか。