129話 8層を巡回する
俺たちは、異世界からの使者であるテツオを助っ人に再びダンジョン深層へのアタックを始めた。
7層で人助けをするという、ちょっとしたトラブルはあったが、あっさりと出口付近の中ボス部屋に到達。
通常、ここの中ボスはリッチだったのだが、今回はレッサードラゴンだった。
眼の前にデカい身体が横たわっている。
アイテムBOXに収納してみれば、死んだのかすぐに解るのだが、こいつは尻尾を入れると少々収納からはみ出るようだ。
「ダイスケ、やったな!」
「ふう……手助け、サンキュー!」
「わはは、まさかドラゴンも人間にケツ穴処女を奪われるとは思ってなかったろうな」
「おいおい、セクハラセクハラ」
「わはは! 悪い」
俺の所にテツオが、拍手をしながらやって来た。
「それよりも――獲物がちょっと大きくて、アイテムBOXに入らないようだ」
「半分に切るか?」
「山分けって話だったから、真っ二つでもいいが――頭と尻尾、どっち取ってもいいぞ」
「尻尾も意外と人気あるんだよなぁ。美味くて評判がいいのは尻尾の肉だし」
「そうなのか」
「ほいっと!」
彼がシンバルを鳴らすような仕草をすると、ドラゴンの巨大な屍が、横に真っ二つになった。
切り口から、大量の体液が流れ出し、熱気と生臭いにおいが充満する。
「うっぷ! これだけデカいと、においもすごいな」
「本当は、ドラゴンの血液や精液も高く売れるんだが、しゃーない」
「とりあえず、俺のアイテムBOXに入れておくか?」
「ああ、大丈夫だ――シャザーム」
彼の下から、黒いものが伸びて巨大な掌になると、レッサードラゴンをむんずと掴み、そのままどこかに消えた。
「それって、テツオの黒い穴の中に入ったのか?」
「そうそう、中はほぼ時間が止まっているから問題ないんだが、ずっと入れておくと魔力でゾンビになったりグールになったりする」
「やばいじゃん」
「まぁ、大丈夫だ。ヤバくなったら、もう少し切り分けて魔法の袋の中にいれるし」
そこにイロハがやって来た。
「おっさん! ドラゴンの鱗も関係ねぇのかよ!」
「あん? ドラゴンの身体を切ったやつか?」
「ああ」
「こいつは神の奇跡で切ってるから――まぁ、金属だろうが岩だろうが、切れないものはねぇな」
「チートかよ!」
「わはは、そのとおりだが、弱点はあるぞ?」
「弱点? なんだそりゃ?」
「近づかないと駄目ってことだな」
彼の黒い穴は、自分の周りにしか出せないらしいが、信徒にしか見えないし、攻撃に使われたらヤバい。
「そういえば――カオルコもイザルの信徒になったってことは、テツオの黒い穴が見えるのかい?」
「はい、見えます」
「そうなのか」
「ダイスケも神さまに気に入られてたみたいだから、なにか加護をもらえると思うぞ?」
「とりあえず、俺が望まないと駄目なんだろ?」
「まぁ、そりゃそうだが……ダイスケならいつでもOKだと思うからな」
今のところアイテムBOXで困ってないからなぁ。
「はは、気が向いたらということで」
「ダーリン、ドロップアイテムだ」
姫が、アイテムを指している。
近寄ってみると――ファンタジーもろ出しの鎧。
銀色で、なにか丸い宝玉みたいなものもついている。
昔のアニメに登場するようなデザインだ。
オッサンには、ちょっと恥ずかしい。
「わはは、ダイスケが着たら似合うんじゃないのか?」
テツオがからかってくるのだが、これは勘弁してもらいたい。
それに、どう見ても動きにくそうだ。
「いやぁ、ちょっとオッサンにこれはヤバいだろ?」
「このダンジョンの常として、変なデザインは高性能の証だと思いますけど……」
カオルコが、イロハの装備を指した。
「はは……とりあえず、アイテムBOXに入れておいて、ヤバい場面になったら着るのを一考してみる――ということで」
――7層の中ボスのレッサードラゴンを撃破した俺たちは、8層に進むことにした。
「中ボスがリッチなら、サナの出番だったのに、経験値を取ってしまったな」
「いいえ、私の魔法じゃ自信がありませんし……」
「そんなことはないぜ、サナちゃん。俺とダイスケがドラゴンをひっくり返して、ケツの穴に光弾かファイヤボールを打ち込めばいい」
「ひでぇ……」
イロハが言葉を漏らした。
「弱点を攻めるのは攻撃の基本だしな」
テツオの言うとおりだ。
「け……排泄器官はともかく、腹の鱗は背中よりは柔らかいはず」
姫が顔を赤くしている。
「俺が仕留めたドラゴンも、腹はあまりカチカチじゃなかったな」
「ワニなんかも、腹の鱗は柔らかいですよ」
カオルコの言葉どおり、ドラゴンも爬虫類の一種だとすると、構造が似ているのかもしれない。
話をしながらダンジョンの第8層に足を踏み入れた瞬間、まず圧倒されるのは、その天井の高さだ。
見上げても天井の輪郭は闇に溶け込み、どこまで続いているのかさえ判然としない。
まるで巨大な空洞の中に立っているかのような錯覚に陥る。
その広大な空間には柱も梁もないのだが、この空間をどうやって支えているのだろう。
「光よ!」
カオルコの魔法が、闇を照らした。
床も滑らかで平坦、何の装飾も凹凸もない灰色の石材が果てしなく広がっている。
障害物も、岩陰も、隠れる場所も一切なく、視界を遮るものがまったく存在せず、音すら吸い込まれてしまいそうな静寂。
俺たちの足音が反響して返ってくることもない。
目印になるものは何ひとつなく、北も南も区別がつかず、方向感覚を失いそうになるほど均質な空間。
どこから来て、どこへ向かっているのか、それすらも曖昧になる。
まるでこの層そのものが、迷わせ、惑わせるために存在しており、この階層の難易度を上げている。
深層に飛ばされて、逆アタックで戻ってきた俺も、ハーピーたちの案内がなければ、戻ることができなかったはず。
「は~、前に見たけど、マジでなにもないんだな」
イロハが暗闇に目を凝らしている。
魔法の明かりで照らされているのは、ほんの狭い範囲。
夜目が利くといっても、なにもないから真っ暗にしか見えない。
「そうなんだ。これじゃマップも描けないから、冒険者で共有することもできない」
「こりゃ、攻略はめちゃ大変だぜ……」
「そこで、彼女たちの出番だ――お~い!」
俺は天井に向かって呼びかけた。
「ギャースケ!」「ダイスケ!」
すぐに反応がある。
広い場所に出たので、飛び回っているハーピーたちに声をかけたのだ。
降りてきたハーピーたちに、食べ物をやる。
「9層へ案内してくれ」
「ハグハグ! ギャ!」「ダイスケ!」
「ダーリン、大丈夫なんだろうな?」
イロハが心配そうだ。
「大丈夫だ、多分」
「多分かよ!」
「帰り道も案内できるんだから、行きも案内できるだろ?」
「帰り道は帰巣本能みたいなものなのでは……?」
カオルコの言葉にも一理あるが。
「イロハの妹さんが潜った穴を見つけたりできたし、大丈夫だよ」
「う~ん、確かに……それはありましたね」
「それに、8層と9層の境目は崖だったし、その方角だけ分かれば」
「ダーリンの言うとおりだが、果たしてそこまでたどり着けるのか――と、いう問題もある」
「桜姫の心配も解るが、ダーリンもいるし、神さまのオッサンもいるじゃねぇか」
イロハが気楽そうに笑っている。
「オガは、冒険者としての矜持がないのか!」
「キョウジ?」
イロハはその単語を知らなかったようだ。
「自分の能力についての、プライドみたいなものだよ」
「それならあるに決まってる! ――が、ダーリンがいれば、あたいたちも安心して戦えるってわけだろ?」
「イロハさんの言うとおりですよ」
サナはイロハの味方をするようだ。
「ぐぬぬ……た、確かにそうだが……」
俺たちは、暗くてただ広い8層を進み始めた。
「ギャースケ!」「ダイスケ!」
ハーピーたちが反応する――魔物とのエンカウントだ。
「敵だ! 来るぞ!」「おう!」
もう、姫もハーピーセンサーを信頼している。
「ハラヘッタ!」「ギャァァァ」
不気味な声に暗闇が揺れた。
闇の奥から、重く低い唸り声が響いてきたかと思うと影が現れた。
その身体は、全身は濃い黄金色の体毛に覆われており、動くたびに筋肉が波のようにうねる。
身体はライオンみたいだが、顔は人間。
「ゲハハハ!」
彫りの深い男の顔をしており、笑い声とともにこちらを見下すような視線を送ってくる。
その背から伸びる尻尾はサソリのようで、節くれだった尾の先には鋭く曲がった毒針が黒く光っていた。
その魔物が咆哮を上げた瞬間、空を切り裂くような叫びが重なった。
見上げると、もう一頭の魔物が舞い降りてきた。
翼を広げれば十数メートルにも達しそうな巨大な鳥で、全身が白い光る羽に覆われている。
鋭い嘴と黄金色の目、鳥の尾羽の位置から伸びているのは、一本の生きた蛇。
まるで尻尾の代わりに蛇が生えているように、その頭をもたげ、口を開いて威嚇の声を発している。
赤く分かれた舌が空気を舐め、目には獰猛な光が宿っていた。
「ダーリンの動画で見たぜ! これってマンティコアとコカトリスだよな!」
イロハが叫ぶ――強敵の同時襲撃だ。
人面の獅子が、咆哮とともに巨大な四肢が地を蹴り、俺たちに迫ると――エンプレスの瞳が鋭く細められた。
「我敵を穿て!」
青い光が集まり、暗闇が裂ける。
束になった輝く光の槍が、獣の身体を貫いた。
轟音――光の爆風。
魔力の奔流が辺り一面を飲み込み、地面が波打つように震えた。
煙の中、マンティコアは立っていたが、もう動けない。
その巨体には穴が空き、黒く焦げ、赤く焼け爛れている。
サソリの尾は断ち切られ、地に落ちていた。
まだ生きてはいるが、魔力の余波に身体が削られていく。
魂ごと、削り取られていくような、神罰にも似た光の洗礼。
以前は、こんな大魔法は1回だけしか使えなかったが、今は魔石に蓄えた魔力を利用できる。
俺やテツオの潤沢な魔力がそのまま利用でき、大魔法を連発できるのだ。
もちろん、この前にエンプレスがぶっ倒れたような、魔力酔い副作用もある。
「おらぁぁぁ!」
カオルコの魔法がマンティコアに風穴を開けた隣では、コカトリスにイロハと姫が斬りかかっていた。
大地を引き裂く嵐の化身のごとく、彼女たちの剣は空気を唸らせながら舞った。
鋼の刃が描く軌跡は風そのものであり、目にも留まらぬ速さで次々と繰り出される斬撃が、コカトリスの硬い羽毛すら容易く切り裂いていく。
高レベル冒険者の力で、彼女らの体は重力を無視するかのように軽やかに宙を舞い、刃が風と共鳴して旋風を巻き起こす。
コカトリスが咆哮をあげる間もなく、脚を、翼を、そして首を、鋭く正確な斬撃が次々と切断し、見る間にその巨体は血飛沫と羽毛の嵐となって四散した。
戦闘が終わる――その直後、彼女たちのレベルアップが始まった。
ずっとレベルが足踏みしていた彼女たちだが、じょじょに上昇して俺に近づいてくるはず。
俺がさらにレベルアップするためには、8層の魔物でも足りない。
9層のドラゴンなどを多数倒す必要があると思われる。
その先の階層はどこまであるのか解らない。
俺たちが9層に飛ばされたときに、地面の裂け目から感じた巨大な敵意らしきものが、このダンジョンのラスボスだろうか。
8層と9層の境目と思われる、巨大な崖に到着した俺たちは、一旦キャンプをすることにした。
食事をしながら、テツオとラスボスについて話してみた。
「9層にはドラゴンなどがいるんだが――地面の裂け目から、巨大な敵意を感じたことがある」
「なるほど――その下の10層にいるらしい、そいつが俺の目標だろうな」
「やっぱりそうなのか……」
それは理解したが、いくら不思議な力でバフがかかっている状態でも、あんな敵意の塊のようなものと対峙できるのだろうか?
「俺が感じたそれは、ただの悪意なんかじゃなかったんだが……」
「まぁ、そいつは、そういうもんだからさ」
テツオは、敵の正体に気がついているような感じだ。
人間の想像を遥かに超えた、世界の深淵に根ざす、原初の闇。
光すら届かぬ虚無の底で蠢き続ける、永劫不変の邪悪の意志――それは時間の流れにも、空間の境界にも縛られず、万物の調和を崩壊へと導く、混沌そのもの。
言葉では到底言い表せない不快感と戦慄が、魂の奥底から這い上がってきたのだ。
見てはいけない、触れてはいけない、存在そのものが禁忌とされる何か――まさしく、大宇宙に巣食う"悪の根源"みたいな……。
「そいつと対峙するのは、俺の使命みたいなもんだから、無理につき合わなくてもいいんだぜ?」
「そうはいかないぜ、神さまのオッサンよ! 美味しいところだけ持っていこうとしても、そうはいかねぇ」
イロハが、オッサンたちの話を盗み聞きしていたようだ。
「そのとおりだ。このまま9層まで行って、レベルが限界まで上がれば、我々にも好機が訪れると思う」
姫も引き下がるつもりはないようだ。
オッサンとしては、ほどほどのところで、止めたいところなんだが。
金も十分に稼いだしな。
俺は止めたいが、やる気を出している若い女の子たちだけを行かせるわけにはいかない。
それはオッサンとしての矜持があるし。
「わはは、無理なら逃げるのも手なんだぜ? 若い頃に失敗しても、やり直しが利く」
「ああ、オッサンってすぐに説教を始めるから嫌なんだよ」
イロハがテツオの言葉にしかめっ面をしている。
「そりゃ、オッサンってのは若いやつに説教する生き物だから、仕方ない」
まぁ、テツオの言うとおりだが。
「ダイスケさんは、そんな感じじゃないですよね……」
サナの言葉だが、そうでもない。
「言いたくはあるんだが……俺の若い頃を考えると――説教しても聞かないし、どうせ突っ込んでいっちゃうし……」
若さゆえのナントカってやつだ。
それでも、蹉跌は青春の1ページだし。
ガチで危険なことは止めるが。
「わかるわかる……」
テツオがうなずいている。
オッサンになると解るのだ。
――とはいえ、世界が静止した経験をした若い世代は、それなりに苦労をしている。
そのせいか、オッサンズが説教するシーンもあまりないし、若い子のほうがしっかりしてるまである。
テツオが異世界経由でもたらしてくれた魔法文化が花開いて、少しでも世の中がよくなってくれればいいのだが……。
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その日から、俺たちの深層攻略が始まった。
地上と行き来して、8層を周回――ひたすら魔物を狩って、十分にレベルを上げる。
一度戻ると、また7層の中ボスと戦わないと駄目――という、面倒な仕様のせいで、ひたすら8層を回った。
俺のアイテムBOXには、可能な限りの物資が詰め込まれているし、水はダンジョン温泉のお湯がある。
以前と違い、今は姫の洗浄の魔法もあるし、温泉のお湯で身体も洗える。
地獄を巡回していると、皆のレベルが、徐々に俺に近づいてくる。
俺も10層に突入すれば、さらにレベルアップが望めると思う。
はたして、10層にはどんな敵がいるのか?
あの得体のしれない悪意みたいな敵だけなのか?
それとも、更に魔物がいるのか?
まったく解らない。
俺は戦闘シーンを動画に収めて、動画サイトに次々とアップ。
観たことがない魔物とのど迫力戦闘シーンの連続に、再生数もうなぎのぼり。
金があるから、もうこんなことをする必要もないのだが、俺たちがダンジョン攻略した記録だし、楽しみにしている視聴者が全世界にいる。
その他の冒険者たちは、7層の攻略に手こずっているようだ。
「姫、物資はまだあるが、いったん休みを入れたほうがよくないか?」
「そ、そうだな……」
高レベル冒険者なので、肉体的な疲れはないだろうが、精神的な疲労はある。
皆の顔からも、覇気がないように感じられた。
そりゃ、こんななにもない空間で、延々とゲームのレベル上げみたいなことをやっていれば、精神がすり減るだろう。
ここはゲームじゃなくて、油断すれば命を失う危険もある地獄の一丁目だしな。
皆も賛成してくれたので、いったん8層から戻り、ダンジョンの温泉でキャンプを張ろうと7層に戻る。
途中で、知った顔に出会った。
「おっと! ダーリンさんじゃないですか」
俺をそう呼ぶのは、魔導師の幽鬼だった。
彼の他に4人の魔導師、他の戦闘職がいない5人パーティだ。
男1人と女性が3人――女性たちのドレスの裾から覗く太ももが、光苔の淡い光に白く輝く。
その滑らかな肌には、汗が滲んでいる。
彼女たちの表情や身のこなしには、これまでの強行軍の影が色濃く表れている。
装備の生地は荒れ、肩で息をしながら足を止める者、怪我をしたのか痛む足を庇うように歩く者もいる。
地上では背筋をぴんと張っていたであろう彼らも、疲労が容赦なくその体に刻み込まれていた。
ここまでやってくるということは、この4人もそれなりのレベルということになるだろうが、魔導師だけというのはかなりハンディキャップになりそうなものだが。
「幽鬼か、ここまでやってきたんだな」
「はい、苦労しましたよ――って、なんですか、それは?!」
俺たちは、テツオのシャザームに乗って移動していたのだが、彼はそれに驚いたようだ。
話を聞くと――ここにいる魔導師全員がイザルの信者になったようだ。
幽鬼が信徒になったのは聞いていたが――やはり、このダンジョンを攻略するとなると、魔石を魔力の電池として使う技術がどうしても必要になってくる――と、いうことか。
「ギャースケ!」「ダイスケ!」
シャザームの上で、ハーピーたちがパタパタしている。
「ハーピーたちも無事でしたか。ちょっと待ってください……人語を話してます?」
「とりあえず、俺の名前は言えるようになったみたいだな」
「う~む、興味深い……」
ハーピーたちを彼が覗き込む。
「おお~、信徒が増えたか~。神の使徒として歓迎するぜ」
信徒が増えて、テツオが喜んでいる。
「彼は、この世界でのイザルの使徒――つまり神さまの代行者なんだよ」
「え~、本当ですか?」
俺の言葉に、女の子たちが訝しがっている。
「本当ですよ」
そこにカオルコが助け舟を出してくれた。
「信徒なら乗っていきなよ。目的地は温泉だろ?」
「は、はい」「これって、だ、大丈夫ですか?」「噛みついたりしませんか?」
魔導師の女の子たちが、得体のしれない黒いものにビビっている。
その言葉に反応したのか、シャザームの身体の一部が変形して、大きな口を開いた。
「きゃぁぁぁ!」「ぎゃぁ!」
驚いた女の子たちが、後退りしてそのまま尻もちをついた。
股間にカラフルなものが見える。
「わはは、シャザームの悪ふざけだ。大丈夫大丈夫」
「ほ、本当ですか?」
「ほらほら、乗った乗った」
「は、はい」
シャザームが変形して乗りやすいように、階段状になってくれた。
「わぁ」「ありがとう」
「……」
女の子たちは乗り込んだのだが、幽鬼ともう1人の男性魔導師が固まっている。
「幽鬼、大丈夫だ」
業を煮やしたのか、姫が言葉をかけてくれた。
「わ、わかりました」
姫の言葉なら信頼できると思ったのか、彼らもシャザームに乗り込んだ。
「よっしゃ! ハイ・ヨーシルバー!」
テツオの掛け声で、シャザームが進み始めた。
「それが、魔法の詠唱ですか?」
幽鬼も、このネタは知らなかったようだ。
「違う違う、ははは」
皆でシャザームに乗り、温泉に向かうことになった。
今年最後の更新です。
今年もご愛読ありがとうございました。




