118話 テツオと一緒にダンジョンアタック開始
テツオの力を借りて、ダンジョン7層の攻略に挑む。
彼のシャザームの力があれば、高さ100mも余裕のはず。
最初、彼と出会ったときにも、空を飛んできたしな。
空を飛べるなら、多少の高さなんて関係ない。
そう考えると、飛べるなら地上にポップする魔物も全部キャンセルできるってことだよな。
これはとんでもないチートだ。
このダンジョンを作ったやつも、まさかこんな男がやって来るとは夢にも思ってなかっただろう。
神のみぞ知るっていう言葉があるが、このダンジョンを作ったのが神さまなら、神さまの予測つかないできごとだったに違いない。
どうだろう――ダンジョンそのものから、なにか妨害工作があるだろうか。
チートなんてゆるさねぇぞ?! って感じで、絶対攻略不可能トラップやら、絶対死ぬトラップを連発してくるとか。
そこまでされたら諦めるほかないだろう。
姫も解ってくれるはずだ。
神さまVS神さまの戦争に巻き込まれるわけにはいかないからな。
そんなわけで、密かに7層の攻略の準備をしていると、イロハとサナに嗅ぎつけられてしまった。
「桜姫! あたいたちをのけ者にしようとしたのは、てめぇだろ?!」
「今回は私たちだけでやる」
「「ぐぬぬ……」」
2人が睨み合っている。
「ダイスケさんも、ひどいですぅ!」
サナが俺に抱きついて泣いている。
女の子に泣かれると、オッサンは弱いんだよなぁ。
「すぅってな――もしかして、今回はかなり危ないかもしれない」
「ダンジョンはいつだって危ないじゃないですか!」
「そりゃ、そうなんだけど――今回はなにか違うような気がするんだ」
「あの人がいるからですか?」
「テツオの力を借りないと攻略できない事実はあるんだが、それがまた大きなトラブルになりそうでなぁ」
あくまでも、俺の勘でしかないが。
「それより、イロハ。自分のギルドはどうするんだ」
「ちゃんと皆にも話してきた」
「君になにかあったらどうする?」
「それも、いつもギルドの面々にちゃんと話してる」
冒険者は、ダンジョンに入ったら戻ってこられないかもしれない。
浅層でも油断していると、死ぬこともあるし。
常にその覚悟をしておけ――と、ギルドのメンバーに言ってるそうだ。
イロハと姫が言い争っていると、ドアのベルが鳴った――客だ。
「はいよ~」
出ると、テツオの顔が。
「神さまの話だと、サナちゃんが来てるだろ?」
「ああ、ちょうどきてる」
「ちょっと邪魔するぜ」
テツオが部屋に入ってきた。
「今回のダンジョンアタックとなにか関係があるのか?」
「神さまは、サナちゃんも連れていけって言ってる」
「神さまと話ができるのか?」
「はは、信徒が増えたからな、色々とこの世界にも力を行使できるようになったみたいだな」
どうして信徒が増えたのか?
それは――以前、特区で知り合った青い目の動画配信者だ。
彼はアメリカで有名な配信者らしい。
確かに、彼からもその話は聞いていたのだが――。
特区で撮った動画をアップすると、全世界で賛否両論の大バズリ。
イザルという神さまに興味津々の新しい信徒の獲得に成功したってわけだ。
そりゃ、目の前で奇跡を起こされたら、やっぱりな~と、いう感じはしてた。
実際にイザルを拝めば力を貰えることがあるってんだから、他の動画配信者も神さまを拝み始めた。
動画配信界隈は、神さまからもらった力の自慢合戦の様相を呈していたし。
まぁ、流行りのネタってやつだな。
動画サイト黎明期に、メントスコーラの動画が沢山アップされたのと同じようなものだろう。
あれと違うのは、実際に奇跡を行使できるってことだろうか。
もちろん否定的な意見もある。
神は唯一! って方々もいるからだが――聖人しか起こせない神の奇跡を、一般人が簡単に起こせるのだ。
宗教関係者からすると、苦虫を噛み潰したような顔をしているのかもしれない。
「サナは、イザルの聖女だからか?」
「まぁ、そういうことになるな。大回復や、広域回復が使えるから、戦力としては貴重だろう?」
「しかし、今回は危なそうなんでなぁ……」
「神さま的には、デカい力を授けたんだから、しっかりと働いてもらわんと困る――ということになるんだが……」
「やりますよ! 私はやるんです! ダイスケさんと一緒に行くんです!」
俺たちの話を聞いていたサナが、ガッツポーズでフンスフンスと気合を入れている。
「まぁ、俺からも頼むよ」
テツオにそう言われてしまってはなぁ。
今回のアタックは、彼の協力なしではありえないし。
「あんたが、サナから聞いた神さまがどうのこうのって言ってるオッサンかい?」
「テツオだ」
「うさんくせぇ! 神さまとかから一番遠そうなツラしやがってよ~」
「わはは! そのとおりだな」
「そこは否定しないのか?」
俺の言葉に彼が反応した。
「前にも言ったかもしれんが、神さまとか信仰みたいなものから、一番遠い人間だと自覚しているからな。それが使徒とか、なんの冗談かと自分でも思うぜ」
確かに、そういったことを言ってたような気がする。
「実力は高レベル冒険者並だから心配いらんよ」
「あいにく、冒険者ってやつの適性はなかったけどな」
「それで大丈夫なのかよ!」
「大丈夫だ」
「ダーリンがそう言うなら……」
イロハの言葉に、テツオがスケベそうな顔をしている。
「おいおい、ダーリンがなん人いるんだ?」
「皆が、俺のことをダーリン呼びするんだよ。男もダーリンって呼ぶんだぜ」
「わはは! 愛されてるねぇ……」
「俺みたいなオッサンを、それはありがたいんだけどなぁ」
イロハとサナが同行することに姫も諦めているっぽいが、信徒を死地に送り込むのも神さま的には問題ないんだな。
テツオの話では、神さまから見たら俺たち人間は、微生物みたいなものらしいし。
生き死には関係ないのかもしれんが――。
テツオのような使徒や、サナのような聖女クラスになると、多少は気になるんじゃないかと思うがなぁ。
そんなわけで、ほぼトップランカーでのアタックが決まった。
イロハとサナはギルドではなくて、個人での参加となる。
それゆえ、今回は補助魔法を使う中堅どころは、連れていかない。
まぁ、悪い予感しかしないしな。
「テツオをダンジョン攻略に巻き込んでしまったのか、それとも俺たちが神さま同士の勢力争いに巻き込まれてしまったのか……」
「多分、後者だな」
俺はテツオの即答にため息をついた。
「やっぱり? 上手く嵌められたのかな?」
「まぁ諦めろ、わはは! 可能な限り協力はするし」
「頼むよ」
ダンジョンアタックに備えて、魔導師の幽鬼を尋ねた。
ロープや縄梯子に、固定の魔法をかけてもらうためである。
「聞きましたよ。ダンジョン7層にアタックするんですね」
「今回誘わなかったのは、悪いと思ってるよ」
「参加するギルドが増えると、調整が大変になりますからねぇ」
「そういうわけだ」
「私も、今回は個人的に時間が取れませんから、致し方ないとは思いますが、誘ってくれなかったことに関しては、ちょっと恨んでますよ」
「はは、悪い――それなら、イロハのように押しかけたらどうだ?」
「はぁ……リーダーがそんなことをしては、下に示しがつきません……」
彼がイロハの行動について、不満を漏らす。
幽鬼の言いたいことも解る。
「……」
彼がなにか考えごとをしている。
「どうした? なにか心配ごとか?」
「いえ、動画を見ましたよ。神さまの使徒を名乗る男が、あなたの所にいるのでしょう?」
「俺のところじゃないが――隣の部屋だな」
「……実は、ウチのメンバーの中にも、ダンジョンに由来しない不思議な力に目覚める子が現れまして」
「なるほど、あいつが喜ぶな」
「神さまというのは、本当なんでしょうか?」
「彼の不思議な力を見ていると、本当にいるような気がするよ。そもそも、ダンジョンじたいが、人智を超えた存在だろ?」
「それは、そうなのですが」
ダンジョンを鉱山に見立てて、ダンジョン由来の不思議な力とともに、この世界が回り始めている。
これは、一種のモノカルチャー経済だ。
「画一的なシステムは崩壊する可能性が高いって知っているだろ?」
「ええ」
「ある日突然にダンジョンがなくなったらどうする?」
「それは――困りますねぇ」
「でも、若い冒険者が授かった不思議な力は、ダンジョンが消えても残り続ける」
「本当ですか?」
彼が胡散くさそうな顔をしている。
まぁ、信じられないのは無理もない。
「神の使徒である、彼がそう言っている」
「なにごとにも保険は必要ってことですか……」
「まぁ、しっかりと拝めば、力を授けてくれることがあるというのだから、損をするわけじゃない。拝んでみればいいじゃないか」
「あいにく、神を讃えたことがないので」
「ははは、信者と書いて儲かると読む。信じる者は足を掬われるってな」
「駄目じゃないですか……」
とりあえず、魔法はかけてもらった。
これで準備万端整ったな。
――ダンジョンアタックの準備が整って、数日あと。
早朝、ダンジョンの自動改札前で待ち合わせをした。
――と言っても、ホテルに住んでる面々は一緒だし、残りはイロハだけ。
ホテルから、キララたちやテツオの連れのイチローやアオイもやって来た。
女性陣は、みんな深いフードを被っている。
派手な戦闘装備だと、目立ちすぎるからな。
それに、すぐにトップランカーだとバレてしまう。
「サナ、気をつけてね」
「キララさん、ありがとうございます」
「お姉ちゃん! 頑張って!」
ミオちゃんも、学校に行く前にお見送りにやってきた。
「兄貴も頑張ってください!」
「馬鹿野郎! 毎回死ぬほど頑張ってるわ! 俺がなん回死んだと思ってるんだ」
イチローの言葉に、珍しくテツオが声を荒げている。
マジで死んでるのか?
気になったので、聞いてみた。
「異世界って、蘇生魔法とかあるのか?」
「ない」
「それじゃ、それも神さま関係の奇跡ってやつ?」
「まぁ、そんなところだな。話したくないんで、聞かないでやってくれ」
「わかった」
いつも飄々としている彼が、真剣な顔をしているので、そうなんだろう。
待っていると、若い連中を10人ほど連れてイロハがやって来た。
彼女の妹のカガリも一緒だ。
「おはよう――って、若い子たちを連れていかないよな?」
「心配すんなダーリン。こいつらは、見送りだ」
「愛されてるねぇ」
「まぁな」
わらわらと、イロハの周りに女の子たちが群がる。
「イロハ姉さん、気をつけてください!」「姉さんになにかあったら、私たちどうしたらいいんですか」
「いつも言っているだろ。冒険者なんていつ死んでもおかしくねぇって」
「そ、そうですけど」
俺のところに、カガリがやって来た。
「ダーリンさん、ねーちゃんを頼むよ」
「任せろ――と、安請け合いはできないが、心配するな」
「うん」
今生の別れではないが、皆に見送られて、俺たちはダンジョンに突入した。
「今回も5層までは鉄道を使う」
リーダーは、いつもと同じように姫だ。
皆で、ダンジョン鉄道のプラットフォームにやって来た。
「へ~、本当にダンジョンの中に機関車が走ってるんだな」
彼が、蒸気を噴き上げている黒い鉄のイノシシを見上げている。
「ここは、電気やら火も使えないので、魔法でボイラーを沸かして走るんだ」
「おもしれ~と、思ったら、やけに混雑してないか?」
「1層~2層は、利用客が多いからな」
「それじゃ、シャザームで行こうぜ」
「いいのか? あとで魔力切れとかになられると困るんだが……」
「はは、大丈夫大丈夫」
皆としても、混雑の中で他の冒険者たちに揉まれるよりはいい。
トップランカーだとバレると、騒がれるし。
「それじゃ、頼むよ」
「よしきた! シャザーム!」
なにもない所から漆黒の液体のようなものが這い出してきた。
まるで闇そのものが形を持ったかのようで、どろりと粘つく質感をまといながら、地面を這うように広がっていく。
まるでダンジョンの暗闇に溶け込むように巨大な手の形になった。
「おお~っ?! なんだこりゃ!」
突然出てきた黒いものに、イロハが仰天している。
「これが、テツオの能力の一端だよ」
「……」
彼女が言葉をなくしている。
「わはは! 神の奇跡ってやつよ」
「マジなのか? 魔法じゃなくて?」
「「マジマジ」」
オッサン同士の言葉がハモる。
「はぁ……」
なんだか、彼女が呆れている。
信じたのか、単に呆れただけか。
「へ~、やわらけぇ」
彼女がシャザームの身体を触ってブヨブヨを確かめている。
「さぁ、乗ってくれ」
シャザームの身体の一部が階段状になったので、それを駆け上ると巨大な掌の上に乗った。
「も、もしかして空を飛んでいくのか?」
イロハの声は震えていた。
目の前で起ころうとしているできごとを、頭では理解しようとしても、心が追いつかない。
そんな現実感が遠のくような感覚の中で、言葉が思わず漏れたらしい。
俺は一番最初に、シャザームが飛んできたのを見ている。
それを見て、テツオを仲間にしようと思っていたし。
「そのとおり」
「すげー!」
「こういう能力を当てにして、彼を仲間にしたんだよ」
「これがあれば、7層のあの入口も楽勝じゃねぇか!」
最初は、テツオの能力を疑っていたイロハだが、シャザームを見て考えを改めたみたいだ。
「そのとおり」
「神の奇跡ってのが嫌なら、ただのチートでもいいぜ、わはは」
俺もシャザームの上に座り、手で感触を確かめた。
「柔らかいから、尻は痛くならないだろうな」
手で触ると、ブヨブヨしていて、ほんのりと温かい。
冷たいと、それだけで体力を奪われるから、これはありがたい。
「自由な格好でいいぞ。寝転がっても大丈夫だ」
「へ~、そいつはいいや!」
早速、イロハは黒いベッドの上に横になった。
「よし! 出発進行!」
テツオの声とともに、音もなく黒い生き物が暗闇の中を疾走し始めた。
結構なスピードが出てるような気がする。
「本当に空中を飛んでいるぜ! これってマジで魔法じゃないのか?」
イロハが、身を乗り出して下を見ている。
「イロハ、危ないぞ?」
「大丈夫だよダーリン」
「これは魔法じゃないな。シャザームと俺の能力の複合技みたいなもんだ」
「すげーな」
彼女がテツオの能力に感心している。
「オガ! お前の装備は走っていれば体力が回復するんだろう? ずっと走ってついてくればいいじゃないか」
「走ったら腹も減るんだよ!」
姫の嫌味にイロハが反論した。
そりゃ、体力が自動回復しても、腹が減るんじゃいずれ動けなくなる。
「テツオ、暗闇は見えるのか?」
「ああ、そういう加護を神さまからもらっている」
「そう言われると、ダンジョンからもらう能力も加護と似たようなものなのか……」
「まぁ、十中八九同じものだろうな」
「なにか確信があるのか?」
「俺というか、そうでなきゃ、ウチの神さまがここに固執する意味がねぇし」
俺とテツオの会話に姫が入ってきた。
「この黒いのは、どのぐらいのスピードが出るんだ?」
「時速100kmぐらいでも出せると思うが、風がしんどい」
「なるほどな」
風に当たっているだけで、結構疲れる。
バイクで高速道路を走っているようなもんだし。
「まぁ、どうしても超特急で急ぎというのなら、シャザームの身体の中に入るとか、衝立を作るという手もある」
「急ぎじゃないし、ゆっくりと行こうぜ、あはは。こいつは楽ちんだ~」
イロハの言うとおりだ。
「緊張感のないやつだ」
姫が愚痴を漏らしているが、黒いベッドの上に寝転がっているイロハは、完全にリラックスしている。
ここで踏ん張らないと世界が破滅するRTAとか、そういうのじゃないからな。
話をしていると、すでに1層の終点が見えてきた。
そのまま連絡通路を下って、2層に到着。
沢山の冒険者たちの頭をすっ飛ばして、浅層を爆走する。
飛んでいる音もしないので、俺たちが上にいるのを、皆は気づかないようだ。
まさか、自分たちの頭上を誰か飛んでいるとは、夢にも思うまい。
「そのまま突っ切っていいんだろ?」
「ああ、5層までノンストップで」
「オッケー!」
冒険者たちの頭上を、俺たちを乗せた黒い空を飛ぶ絨毯が駆け抜けていく。
漆黒の布地は暗闇に溶け込み闇そのものと見紛うほど。
しなやかに波打ちながら、音もなく空気を切り裂く。
その動きはまるで、夜の静寂を引き裂く影。
ふと視線を上げた冒険者の1人が、かすかな風圧と共に通り過ぎるその姿に気づくが、次の瞬間にはすでに闇に溶けていた。
2層には空を飛ぶ魔物のコウモリがいるが、シャザームに追いつくことはできないようだ。
他に空中に魔物はいないから、ここは安全地帯ってことになるな。
「こいつは、マジでチートだな」
「まったく、ダーリンの言うとおりだぜ!」
俺の声に、イロハがデカい声で同調した。
「なんか、飲み物でも出すか?」
俺はアイテムBOXを漁った。
「いいねぇ! あたいには食い物を!」
「オガ、ちょっとは、遠慮しろ!」
「いいじゃねぇか。あたいとダーリンの仲だしぃ」
「私のダーリンだぞ!」
皆に飲み物と、イロハにはおにぎりを出してやった。
「ゴチになるぜ~」
テツオが缶コーヒーを飲んでいる。
「異世界にコーヒーは?」
「似たような飲み物はあるな。それに門からたまにコーヒーが出てきたりするからな」
「なんでも出てくるな」
「異世界じゃガラスやプラを生産できないから、そこから出てくるものに頼ってる。マジで鉱山と同じ扱いだぞ」
「それだと、今の世界のダンジョンと同じ感じだな」
「まぁな」
テツオと話していると、いきなり後ろから抱きつかれて大きなものを押し付けられた。
この気配の消しかたは、カオルコだろう。
「なんだ? 俺を風よけにしているのか?」
「はい」
「プロテクションで風を防げるだろうけど、魔力を消費するだろうし」
「寒いなら、衝立を出すぞ?」
テツオの合図で、シャザームの前方に出っ張りができた。
「少し出っ張りがあるだけで、大分違うんだな」
「空気が上に流れていくからな」
カオルコは俺を風よけにしているから、温かいだろうが、俺も彼女の身体を押し付けられて温かい。
そこにサナがやって来た。
「それじゃ、私がダイスケさんの風よけになってあげますよ」
そう言って、彼女も前から大きなものを俺の胸に押し付けた。
柔らかいものを前後から押しつけられてギュウギュウのサンドイッチ。
これはまさに男のロマン。
確かに、めちゃ暖かい。
「ダーリン!」
「姫は、カオルコの後ろにいくと、温かいぞ?」
「そうじゃない!」
そんなことをしている間にも、シャザームは2層を抜けて3層へ。
ここにも空中に魔物はいないから、華麗にスルー。
「こりゃ、楽ちんすぎる!」
「毎回これなら、攻略もはかどりますねぇ」
カオルコの言うとおりだ。
「とりあえず、神さまからのお使いを片付けるまでつき合うぜ」
「そりゃ頼もしいな」
空を飛び続けて、4層に到着。
「ダイスケさん、もう4層ですよ」
サナがちょっと興奮している。
「サナも神さまとのつき合いが深くなれば、シャザームみたいなのが貰えるんじゃないのか?」
俺の疑問にテツオが反応した。
「さて、それはどうかなぁ。こいつはちょっと特殊だから」
「それじゃ、異世界に空を飛ぶ魔法はなかったのか?」
「それはないが、落下をゆっくりにする魔法なら見たことがある。ドワーフが使ってたな」
「おお、ドワーフ! エルフがいるって言ってたから、ドワーフもいるのか? やっぱり仲が悪いのか?」
「俺が異世界に行ったときには、そういう知識はなかったんだが、それは有名な話なのか?」
「まぁ、そうだなぁ」
だいたいのファンタジーものでは、エルフとドワーフの仲が悪いのが定番だ。
それにしても、落下コントロールの魔法か。
それだけでも、かなりすごいことだがな。
空や崖から落っこちても死ぬこともなくなるし。
異世界の話は、見知らぬ魔法へのなにかヒントになるかもしれんし。
実際、彼の話から魔法のアイテム――魔道具などがあると解ったし。
テツオと話していると、暗闇から鳴き声が聞こえてきた。
「ギャ! ギャ!」「ギャア!」
「おっと、あいつらか。いつもと違うものに乗っているから、困惑しているのかもしれん。お~い! こっちだ」
「ギャ!」「ギャ!」
暗闇の静寂を裂くように、ふたつの翼が現れた。
漆黒の夜に溶け込むようなその姿は、音もなく、俺たちと並行に飛び続けている。
「いつもと違うけど、大丈夫だぞ!」
「ギャ!」「ギャ!」
彼女たちが、相対速度を合わせると、俺の所に飛んできた。
そっとキャッチしてやる。
温かく柔らかい羽毛に指が埋まる。
相対速度がゼロだと、こういうことができるんだな。
突然やってきた魔物にも、テツオは驚いていないようだ。
彼がいたという異世界でも、普通にいた魔物なのだろうか?




