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102話 なにか面白い企画を


 ダンジョン鉄道の復旧工事が終わったので、打ち上げパーティみたいなことをやった。

 俺が作ったオークの角煮が主役だ。

 特別ゲストで、小野田さんも呼んでみた。


 沢山作ったので結構大変だったが、皆に好評でよかった。


 パーティをしていると、スマホに連絡が入る。

 俺のアイテムBOXに入ったままの、エメラルドドラゴンの買い手がついたという。

 サナやイロハも見学したいというので、一緒に羽田の倉庫群に向かう。


 魔物の解体の現場にドラゴンを出したのだが、そこに現れたのは姫の姉――カコだった。


「やっと来たわね!」

 彼女が派手なスーツで仁王立ちしている。


「全部買ったって、八重樫グループで、丸ごと買ったのかい?」

「そうよ! あ! 中身の肉やら内臓は要らないわ。外のエメラルドだけね」

「確かに大きいけど、ダンジョン産だから、なにか希少性があるとか?」

「ダーリンから、この石をもらったじゃない」

 彼女がドラゴンを指した。

 その巨大な身体の傍で、センセがなにかやっている。

 サンプル採集だろうか。


「ちょっとまて、なんでカコさんまでダーリンなのよ」

「大きなエメラルドくれたじゃない」

「私のダーリンだぞ!」

 姫が抗議しているが、べつに俺に惚れたとかそういうわけではないだろう。

 珍しいものを沢山ダンジョンから拾ってくるから、唾をつけておくか――みたいな感じじゃないか。


「俺のあげた石のサンプルを調べたのか」

「そう! 今までにない、組成の石だったわ」

「それじゃ、緑色に見えるけど、エメラルドではないと……」

「そういうことになるわね!」

 彼女が腰に手を当てて、胸を張っている。


「新発見の素材だから、なにか新しい利用価値があるかもしれないということだな」

「察しがいいじゃない。もしかして、画期的な素材かもしれないのよ」

「へ~」

 ありえない話ではない。

 実際に、ダンジョンから出てくる魔石が、半導体の材料として利用されているしな。


「ダーリン、この緑色がなにかに使えるっていうのかい?」

 イロハが山のような魔物のかばねを指している。


「それが魔石だったら魔力を貯められるからな。今の所、あまり役には立たないけど、新たなエネルギー源として利用できるかもしれないし」

「魔力の元になれば、ダンジョンの中でも使えるしな」

 姫の言うとおりだ。


「あ、あの~」

 サナが俺の服を引っ張った。


「ああ! この人は、姫の双子のお姉さんだよ」

「そうなんですか……似て――そっくりですね」

 そりゃ、双子だからな。

 髪型が違うから、すぐに解るが。


「よろしくね」

「こちらこそ。よろしくお願いいたします」

 おお、なんか挨拶などもしっかりとできるようになってるなぁ。

 キララから、色々と教わっているのだろうか。


「どうでもいいけど、ダーリン。こんな若い子まで手を出しているの? このロリコン!」

「人聞きの悪いことを言わないように。この子――サナも冒険者だから、成人しているよ」

「それはそうでしょうけど!」

 そこに姫が割り込んできた。


「なんで、お前までダーリン呼びなんだ!」

「いいでしょう? ベつに」

「よくはない!」

「「ぐぬぬ……」」

「すごいです~!」

 今度はセンセだ。


「どうですかね?」

「こんなすごい生き物がいるなんて……感動です!」

 彼女が自分の前で手を合わせて、目をキラキラさせている。

 学者冥利に尽きるって感じだろうか。

 地球上じゃ、デカくて新しい生物が見つかるなんてことは、もう滅多にないからな。

 それがダンジョンなら次々と新しい生物が出てくる。


「ドラゴンって、火を吐いたりするんですけど、どういう仕組なんですかね?」

「そうですねぇ――腸内細菌の発酵で可燃性ガスを溜め込んで、なにかで着火するとか」

「手術中に腸内のガスに電気メスで発火したなんて話を聞いたことがあるような」

「体内の特殊なバクテリアによって、化学物質を作って溜め込んだり……」

 なんだっけ? 自分の体内で、アルコールを合成してしまって、自分で酔っ払う人がいるとニュースで見たな。

 アルコールが合成できるぐらいなら、バクテリアによっては他の有機物質も作ることが可能なのか?


「可燃性といえば――ガソリンみたいなものですか?」

「複数の薬品を混ぜるだけで、発火する物質もあるんですよ」

「そういえば、昆虫でお尻から数百度のガスを噴出するのがいるってネットで見たような気が……」

「それは、昆虫体内の化学反応で作り出された有機物と水蒸気ですね! 温度が高いので、攻撃にも使えると思いますよ」

 有機物はタンパク質を腐食するらしい。


「電撃に関しては、デンキウナギみたいなやつもいるから、電撃攻撃も不可能ではないってことか」

「そういうことです!」

 センセがフンスと自慢げに話している。


「アイテムBOXに入っている、もう一つのデカい魔物は、最初は燃えていたんですよ」

「え?! 燃える?!」

「そうです、全身から炎を出して、燃えてました」

「全身から可燃性ガスを出す生物なんでしょうか? それとも、魔法のような超常現象?」

「まぁ、あれが魔法の可能性もありますけど……」

 どういう魔物なのか、センセは解体したくて興味津々のようだ。


 そこにオッサンがやって来た。

 すでに解体が始まっている。

 緑色の石が分けられて、洗浄されたあと、コンテナに入れられていた。


「兄さん、本当に肉はいらないのかい?」

「いい忘れていたことがあった」

「なんだい?」

「――今回は劣化ウラン弾を使ってないから、皆使えると思う」

「そういや、身体に穴は開いてなかったな」

 彼が、振り返って解体され始めた、魔物の山を見ている。


「肉は、そっちの取り分としてくれていいよ。あと、前に言ったけど、魔石だけこっちな」

「わかっている――それじゃ、売値は全部そっちで、こっちの手数料やらは肉やその他素材で回収していいのかい?」

「いいぜ、好きなだけ取ってくれ」

「うほ! こいつは豪気だな! デカいしのぎになるぜぇ」

 オッサンは舌なめずりをしている。


「肉質はどうなの? 事前にチェックはしたと思うが……」

 魔物の素材が、毒やら人体に影響がないか、調べる専門機関がある。


「かなりいいぜ。脂肪は少ないが」

「それじゃ、肉は少しだけもらおうかな。う~ん、50kgほど」

「ガッテン! わはは! 兄さんとつき合ってから、儲かって仕方ないぜ」

 俺の最初の買い取りで、オッサンが声をかけてきたところがターニングポイントだったのだろう。

 彼は作業に戻っていった。


 かなり儲かると解って、作業員たちの動きもマシマシになっている。

 現金なやつらだ。


「はぁ~、なんだか難しいことは、あたいにはさっぱりだぜぇ」

 黙って話を聞いていたイロハが、ちょっとつまらなそうにしている。


「私も全然わかりませんでした」

「まぁ、冒険者には必要ない知識かもなぁ」

 冒険者には数学も国文も要らないが、科学的な知識は少々あったほうがいいかもしれない。

 生物学とかな。


「ダーリンは詳しいのだな」

「俺は、生物とか昆虫とかSFとか、そういうのが好きなオッサンだったからな。世界が静止する前には、そういうのは巷にあふれていたし」

「へ~、そうなんだ」

 イロハが変なところで感心している。

 まぁ、ネットがまた使えるようになったのは最近のことだし、あとの世代が少々知識不足になっているのも致し方ない。


「それはさておき、カコさん」

「カコでいいわ」

「あのドラゴンはいくらでお買い上げになられたので?」

「500億円よ」

「500億ぅ~!?」

 デカい金額に、イロハの目が丸くなる。

 サナは状況が理解できていないのか、口を開けたまま。


「いやいや、未知の素材を使って、画期的な発明を作れれば、市場を独占できるんだ」

「そのとおり――それを考えたら500億円の投資なんて安いものよ」

「まぁ、なんの役に立たなくても、他にない宝石なら希少価値もある」

「なるほど、それもそうだ」

 話を聞いていた姫が頷いている。

 まだ状況を理解していないサナに説明をしてやる。


「やったなサナ! 俺と分けても、250億の収入だぞ」

「……」

 彼女がまだ固まっている。


「お~い」

「ニヒャクゴジュウオクエンっていくらですか?」

「250億円は250億円だよ」

「……えええ?!」

 彼女が倒れそうになっている。

 やっと状況を把握できたようだ。


「やったな! これでいつ冒険者を引退しても大丈夫だぞ」

「そ、そんなつもりは……」

 彼女が混乱しているが――まぁ、当然だろう。

 こんな若い子が、突然の超大金をゲットしたのだからな。


「おおお!スゲーな! それじゃ、あたいもダーリンといっしょに戦ってドラゴンを倒す機会があれば、一攫千金もありえるってことだな」

「普通のドラゴンじゃそこまで値段が上がらんけど、こいつは全身が宝石で覆われているっていう特殊個体だからなぁ」

「それもそうかぁ。まぁ、あのドラゴントラップにひっかかって、ダーリンとサナがいなかったら、あの段階で詰みだったろうしなぁ」

「そのとおりだな」

 イロハの愚痴に、姫が頷く。


「サナ! お金が入っても、全部使うんじゃないぞ? まずは税金で半分はもっていかれると――ん? 違うか?」

 こいつは冒険者としての取引だから、源泉を引かれて終了か。

 たしか、税金の累進などはなかったはず。


「ダーリン、普通の魔物の取引と一緒で、一律の20%の天引きじゃね?」

「ん~? 多分そうだと思う。250億の20%が引かれるから、200億が入ってくる」

「えええ?! そ、そんなに入ってくるんですか?」

「これで、君の爺さんもいい施設や病院に入れてあげられるぞ?」

「それは嬉しいんですけど……まだ、なんというか……」

「金を持っていると解ると、怪しい連中がGのように集まってくるから、それは注意な」

「それは間違いないな」

 腕を組んだ姫が頷いた。


「ど、どうしよう……」

 彼女はかなり動揺している。


「大丈夫だ、心配するな。なにかあったら、俺に相談してもいいから、投資ならカオルコがいるし」

「私でもいいわよ」

 話を聞いていたカコが名乗り出た。


「ほら、カコさんも相談に乗ってくれるってさ」

「よろしくお願いいたします」

「まかせて」

「彼女は姫のお姉さんだから、信用はバッチリだし――あ! そうだ」

「なんでしょう?」

 いいことを思いついたが……。


「この素材を渡したら、八重樫グループがなにか新しいものを作るかもしれないじゃん。今のウチに株を買っとけばいいんじゃね?」

「株ですか? なんだか難しそう……」

「あ~、でも、これってインサイダー取引になるのか?」

「今の段階で新発明ができるとは限らないから、微妙にグレーね」

 確実にできるとなると、もちろんアウト。


「姫は、ストックオプションかなにかで、グループの株は持ってないのかい?」

「ストックオプションではないが、株は持っているぞ。実家の会社だし」

 まぁ、創業者グループのお嬢様だしなぁ。

 カオルコも持っているんだろう。

 その配当金だけで、暮らしていけるはず。

 やっぱり、生まれ持って銀の匙を持っている人種は違う。


「ダーリンは、いろんなことに詳しいんだな。あたいなんか、なに言っているのか、さっぱりだぜ」

「世界が静止する前は、勉強する時間が沢山あったんだよ」

 あとの時代は、食料を確保するのが大変になってしまって、勉強やらそれどころじゃなくなってしまった。

 やっぱり豊かじゃないと、学問は発達しない。


 ドラゴンの解体には時間がかかるらしいので、終わったら連絡を入れてもらうことにした。

 さっき話した、ヘルハウンド(仮)の解体がまだ残っているからな。

 そっちは値段がつかなくてもいいや。

 正直魔石だけでいい。


 俺たちは倉庫街を出て、羽田で食事をすることにした。

 目についた、レストランに入る。

 どうやら、八重樫グループのレストランらしい。

 お嬢様が来たということで、タダにならんかな?


 まぁ、金があるのに、そんなセコいことを言う必要もないが。

 とりあえず俺は、ハンバーグステーキと、パフェを頼んだ。

 俺はこういう所に来ると、パフェを頼む。


「俺のおごりだから、好きなだけ頼んでもいいぞ」

「やったぜ!」

 俺の注文を見て、女の子たちもパフェを頼んだようだ。

 イロハは3人前ぐらい料理を注文していた。


「それにしても、サナはいきなり金持ちじゃんか!」

 イロハにそう言われた彼女は、少々困惑しているようだ。


「まだ、実感が湧かないです……」

「さて、俺はなにに金を使うかな……」

「さっき、株の話をしていただろう」

 姫の言うとおりだが、もっと面白いことは……以前からちょっと考えていたことを実行に移してみるか……。


 食事が終わると、テーブルには層になった美しいビジュアルと多彩な味わいを楽しめるデザートが運ばれてきた。

 透明なグラスや器に、アイスクリームやホイップクリーム、フルーツ、ソース、シリアル、スポンジケーキなどが何層にも重ねられ、見た目も華やか。

 スプーンを入れるたびに、新しい味と食感が現れるのがパフェの醍醐味ってやつだ。


「実は――金があるから、映画に出資したら面白そうだと思ってな」

 俺もパフェを食いながら、話を進める。

 女の子たちもスプーンを持つと、パフェを口にした。


「映画?! へ~」

 イロハはちょっと呆れている。

 まぁ、興味がないのだろう。


「私は映画なんて無理だぞ」

 ――と、言いつつ、もう姫が主役をするつもりでいる。

 違うんだなぁ。


「……」

 なんだか、サナが話を振ってほしいように、こちらを見つめている。

 残念ながら、主役の構想はすでに決まっている。


「俺の構想は――主役はイロハなんだよ」

「え~っ?! あたいかよ!」

 さすがに予想もしない被弾だったのか、彼女が椅子から転げ落ちそうになっている。


「ダーリン!」

 主役は自分だと思っていた姫は、抗議のために立ち上がった。


「待て待て、姫も出たいっていうなら、敵のボスの魔王で」

「なんで私が魔王なのだ!」

「ええ? 格好いい悪役ヴィランって人気が出ると思うけど……作品によっては、主人公より人気がでちゃうとか」

「……う、うむ……そう言われてみれば……」

「カオルコにも参加してもらって、魔王の片腕――悪魔大将軍辺りかな?」

 普通に考えても、姫の魔王とカオルコの将軍のほうが人気が出そうな気がする。

 もう頭の中にビジュアルが浮かんじゃうもん。


「ええ~? ダーリン、あたいは無理だぜ」

「大丈夫大丈夫、無口で寡黙な凄腕女戦士ってことにすればいい」

「う、う~ん」

「世界が静止する前の有名な映画で、サイボーグお民さんって知らないか?」

「し、知ってるけど――ネットで観たし」

 知っているのか、それなら話は早い。


「ああいう感じでいいんじゃない? 無口のまま、敵をバッタバッタと斬り飛ばしていく」

「う~ん」

「ダイスケさん、カモクってなんですか?」

 サナが小さく手を挙げた。


「口数少なくて、無口なことだよ。むくちと言っても、口が6つじゃないぞ?」

「あ~わかりました」

「か~でもなぁ……」

 イロハがパフェのスプーンを咥えて腕を組んでのけぞり、後ろに倒れそうになっている。

 ちょっとはその気があるのだろう。

 誰しも、映画の主役になれる――なんて聞いたら、ちょっと考えてしまう。

 実際には、無理だと断るかもしれないが。


「イロハ」

「な、なんだよ」

「俺に借りがあるから、なんでもするって言ったよね?」

「う! そ、そこでそれを使うのかい?」

「ははは、もちろん」

「わ、わかったよ……」

 彼女も了承してくれた。


「でも、本当に実現するかは解らんぞ。俺は映画の素人だから、プロに撮ってもらうことになるけど、引き受けてくれる人がいるかどうか」

「そうだよなぁ……」

「イロハは半信半疑だろうが、現役トップランカーの映画なんて、受けるに決まってるぞ?」

「そうかぁ?」

「戦闘シーンは、ダンジョンでの本物の映像を使うつもりだし。特撮や作り物じゃない本当の戦闘シーンだ」

 そう考えると、これは映画というか、ドキュメンタリーとも言えるな。


「確かに、そんなシーンは、ダーリンにしか撮るのは無理だな」

 話を聞いていた姫が唸っている。


「絶対に受けてくれる映画監督がいるって」

「ダーリン、映画界につてでもあるのか?」

 姫が心配しているが……。


「う~ん、俺は動画サイトに動画を上げているじゃない」

「うむ」

「その動画を編集している人が、映画関係者なんだよ。その伝を使えないかな?」

 駄目なら、クラファンでぶち上げてスタッフを募集してもいい。

 俺のサイトは、1億再生を達成した動画が数多くある。

 それだけアクセスがあるってことだろう。

 そこでクラファンの告知をすれば、すぐにネットに広がる。


 もしかして、広告代理店が飛びついてくるかもしれんが――。

 あくまで、俺が全部金を出して、俺の考えたストーリーでやってみたいんだよなぁ。

 金を出すから、口も出す。

 そんな素人のわがままを引き受けてくれる映画スタッフが必要だ。


 まぁ、資金は俺が出すんだから、どんな駄作を作って回収できなくても無問題。

 それも人生の記念になるだろう。


「はは――まぁ、話半分で聞いておくよ」

「でも、マジで決まったら主役をやってもらうぞ?」

「わかったよ、ダーリン」

 イロハも覚悟完了しているようで、よかった。

 現役トップランカーのガチ戦闘アクション映画――これは売れるだろ?

 ストーリーはなくても、アクションだけで押せるはず。


「ダンジョンの殺戮の日々ばかりじゃなぁ。ちょっと他のこともやってみたいんだ」

「それは解るぜ、こんなこといつまで続けられるんだろうと、あたいも思う」

「それに関しては、オッサンの俺のほうが、早く引退がくると思うが、ははは」

 黙って話を聞いていたサナが加わってきた。


「あの~、どんなお話になるんでしょう」

「それは、イロハの戦闘シーンとアクションを見せる映画なんだから、単純でいいんじゃないか?」

 ダンジョンを進んでいって、地底にいる魔王城にいる、魔王と悪魔大将軍を倒す。

 最後は、武器を捨ててのステゴロ勝負。

 アクション映画の定番だ。


「わかりやすいだろ?」

「そんなのでいいんですか?」

 サナの反応を観ると、「なんだかつまらなそう」――みたいな顔だ。


「この映画を観にくるのは、イロハのファンだろうし、彼女の肉体美とアクションで満足じゃなかろうか? ちょっとエッチなシーンも入れれば、大満足だろうし」

「エッチシーンって、まさか……」

 イロハが、赤くなっている。

 いやいや、マジでそんなシーンを入れたらR18になってしまうだろうが。


「違う違う、ちょっと薄着で筋トレしたりとか、そのあとのシャワーシーンとか――定番だろ?」

「まぁ、そのぐらいならどうってことない」

 彼女はいつも際どい格好で、戦ったりしているしな。

 それがダンジョン内での日常だが、イロハのファンはそれを観ることができない。

 異空間の中では電気も使えないし、撮影もできないせいだ。

 唯一、撮影が可能なのは、アイテムBOXを使った俺のチートだけ。


 あ、そうだ。

 カオルコにも撮影に協力してもらえば、マルチアングルでの撮影が可能になるなぁ。

 頼んでみるか~。


「じ~っ」

 サナが俺の顔を見つめている。


「そうだなぁ――ヒロインがいるなら、その相手も必要かなぁ」

「相手ならダーリンがいるじゃねぇか」

「俺? そこら辺にいるようなオッサンがスクリーンに出ても、客は喜ばんだろ?」

「あたいは、ダーリンでいいんだけど……」

「べつに売上はどうでもいいが、オッサンじゃなぁ……」

 だって、俺が客だったら、そんなの楽しくないぞ?

 それは解っちゃいるが……さて……。


「ん?」

 俺の頭に、ある男の顔が浮かんだ。

 以前、知り合った、金髪の美少年だ。

 あいつなら、耳を伸ばしたら100%エルフだし、客受けバッチリだろ。

 美少年が出れば、イロハのファンじゃない女性客も呼び込めるかもしれん。


 特殊メイクで、彼の耳を長くして異世界からやって来たエルフにする。

 それを守るヒロイン――ということで、イロハには寡黙な戦士として戦ってもらう。

 エルフは世界を統べるための、重要な秘密を握っており、それを狙って魔王と悪魔大将軍が攻めてくる。


 最後は、魔王の城で最終決戦――いけるんじゃないか。

 帰ったら、簡単な企画書とシナリオを書こう。


 そう思っていると、スマホのメッセージが入った。

 買い取りのオッサンからの連絡だ。

 ドラゴンの解体が終了したらしい。


 あんな巨大なものを簡単に解体できるもんなんだな。

 俺たちは、倉庫街に戻り、残りのヘルハウンドを出して、そのまま帰路についた。

 またまた珍しい魔物に、センセは狂喜乱舞していたが。


 彼女は全身が燃えてたという魔物に興味津々だ。

 解剖をしたくてウズウズしている様子。


 まぁ、好きにしてもらいたい。



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