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第二十六話 勧誘

 



「あんちゃんのお蔭で助かったぜ、マジでありがとな」


「皆が生還できたのも貴方のお蔭よ、ありがとね」


「俺だけじゃないですよ。山田さんや木下さん、皆が頑張ったからですよ」


 真摯に感謝してくる山田さんと木下さんにそう答える。

 今言ったのは本心だ。俺一人だけだったら死んでいたし、そもそも家康像と戦う気すら起こらなかっただろう。


 セイバー達が戦う姿を見て、俺も最後まで諦めずに戦えたんだ。


 突如力がみなぎってきて、俺が家康像を倒した後。

 勝利して喜んでいたら、全身の力が抜けて動けなくなってしまった。恐らく魔力切れによるものだろう。調子に乗って瞬間移動しまくった時にぶっ倒れたのと同じ感覚だったからな。


 体力も魔力もガス欠になっちまったんだ。それに加え、家康像にやられたダメージもぶり返してきたし。


 動けない俺に代わって、山田さんと木下さんがダンジョンコアを破壊してくれた。ダンジョンは消滅して俺達はやっと解放されることになった。


 すると、表門から一斉に警察が入ってくる。

 柳葉さんから聞いた話だと、外からも中の状況が分からなくなってしまったそうだ。見えなくなったタイミングは、家康像が出現した時だったらしい。


 俺達をダンジョンに閉じ込めていたのは、やはり家康像だったんだな。


 それから警察は負傷して動けないセイバー達を運び出し、重傷者は救急車に乗せられ病院に運ばれた。


 山田ギルドとBelieveギルドのセイバーは全員無事らしい。帝国ギルドのAチーム部隊も無事だったんだが、武藤を出し抜いたBチームの隊長と他数名は家康像によって殺されてしまったそうだ。


 武藤も重傷を負っていたので、帝国ギルドは早めに帰還していた。別れ際、武藤は俺に感謝を言っていたな。


 リーダーシップもあってレイドチームを引っ張っていたし、武藤は良い人だったよ。ムカつく帝国ギルドにも、あんな人が居るのを知れてちょっと嬉しかった。


 俺もさっきまでは疲労と痛みで全然動けなかったんだが、少し休憩したら歩けるぐらいには回復した。その後、心配してくる柳葉さんや宮城さんにダンジョンの中で起きたことを報告する。


 二人はC級ダンジョンにドラゴン級のガーディアンが出てきたことに驚いた後、よく倒した、よく生きていてくれたなと凄ぇ褒めてくれたんだ。彼等も忙しくて、すぐに仕事に戻っていく。


 それで今、山田さんと木下さんと話しているって訳だ。


「それにしてもあんちゃん、マジで強ぇな。ドラゴン級をぶっ倒しちまうんだからよ」


「そうよ、貴方本当にC級なの? B級上位……いえ、A級並みの強さじゃない。しかも途中から消えては現れて~みたいな、魔法みたいな事もやってたし」


「いやぁ……なんか俺もよくわかんないですよね。なんか急に力が湧いてきたっていうか……」


 強いねと褒めてくる二人に、俺は話を濁した。

 実際、何で急にあんな力が湧いきたのかわからねぇんだよな。今までできなかった戦いの中で瞬間移動を使うのも、なんかできちまったし。


 瞬間移動のことは話したくなかったから、追及される前に濁した。


 すると山田さんが、気軽な感じでこう言ってくる。


「な~あんちゃん、もしよかったら俺のギルドに入らねぇか?」


「え?」


「攻略しに来れたってことは、あんちゃんも栃木県このへんに住んでるんだろ? まだ無所属だってんなら、俺のギルドに入ってくれねぇか」


「ズルいわ! 私も誘おうと思ってたのに! ねぇ君、こんなアフロのギルドより私のギルドに入らない? うちは社会保険も完備してるし、楽しくてアットホームなギルドよ。それに可愛い女の子も沢山いるわ」


「おいテメエ! 人が誘ってる最中に横から割り込んでくるんじゃねぇよ!」


「別にいいじゃない、先に言っただけでしょ?」


 山田さんと木下さんが言い争っている中、俺は驚いていた。


 まさか、他のギルドから入って欲しいなんて誘われるとは思ってもみなかったからだ。ギルドは会社だし、普通に自分から入りたいギルドに希望して入社するもんだと思っていた。

 だからこんな風に、勧誘されるとは思わなかったんだ。


 でもそうだよな……優秀な人材が居たら、勧誘するって手段もあるよな。自分でギルドを作る際に、俺もやろうかな。

 そんな事を思いながら、俺は二人に謝った。


「すいません、折角誘ってもらったところ悪いんですけど、二人のギルドには入れません」


「え~なんでだよ~」


「もしかして、もうどこかのギルドに入る予定だったりするの?」


 残念な顔を浮かべる山田さんと、理由を尋ねてくる木下さんに、俺は自分の思いを告げる。


「いえ、俺は自分でギルドを作りたいんです」


「あ~……そうだな。あんちゃんぐらい強ければ、自分のギルドを作りてぇって思うわな」


「残念ね……」


「誘ってくれてありがとうございました。山田ギルドとBelieveギルドと一緒に戦えてよかったです。また栃木こっちのダンジョンにも攻略しに来ると思うので、その時はよろしくお願いします」


「ああ、こっちこそ頼むぜ」


「よろしくね」


 最後に挨拶を交わして、二人は自分のギルドメンバーの所に戻っていく。


 こうして、俺の初めてのC級ダンジョン攻略は終わったのだった。



 ◇◆◇



「はぁ……全然駄目だな」


 C級ダンジョンから早くも一週間が経ち、家康像から受けたダメージも完治している。


 病院に行った時は骨が折れていたりヒビが入っていたりしたんだが、大人しく飯食って寝ていたら五日ぐらいで回復したんだ。


 病院の先生もめちゃくちゃビックリしていたな。「いやいや、おかしいでしょ。何で治ってんの?」って。


 俺の身体って、ガキの頃から丈夫だったんだよな。大抵の怪我は次の日には治ってたし。セイバーになってからはそれに拍車がかかっている。


 なんか俺って……段々化物染みてきてないだろうか? ちょっと恐ぇんだけど。


 身体が回復した俺は、リハビリがてらE級ダンジョンを攻略していた。

 徐々に温まってきてから、家康像と戦った時みたいに戦ってみようとする。しかし、中々上手くいかなかった。


 全身に魔力が注ぎ込まれて力が漲ってくる感覚も、戦っている最中に瞬間移動を使おうとしても全然できない。家康像と戦った時のようにできず、歯痒く感じていた。


「強くならねぇと……俺はまだ弱ぇ」


 家康像と戦って、自分の弱さを痛感した。

 たまたま自分の限界を超えた力を発揮できたからよかったものの、それがなかったら確実に死んでいた。


 このままじゃ駄目だ。

 今のままじゃB級どころかC級ダンジョンにだって通用しない。C級ダンジョンを攻略しようとしたって同じ轍を踏むだけだ。俺はもっと強くならなきゃならねぇんだ。


 でも、どうすれば強くなれるのか。それが俺には分からない。


 悩みながらE級ダンジョンのガーディアンを倒した俺は、ダンジョンコアを破壊するとふと思いついた。


「そっか……分からないなら聞いてみればいいんだ」



 ◇◆◇



「何でC級ダンジョンに行ったんですか新田さん! それに全然顔を見せに来ないし! もう、心配したんですからね!」


「ちょ、結賀さん声抑えて……他の人に迷惑ですよ」


「はぁ……ごめんなさい。でも本当に心配していたんですからね」


 ため息を吐いた後、結賀さんがギロリと眼鏡の奥から睨んでくる。


 彼女が本当に俺のことを心配してくれていることは伝わってきたので、「ごめんなさい」と素直に謝った。


「新田さんからC級ダンジョン攻略のメッセージが届いた時は心臓が飛び出るかと思ったんだからね。あれだけまだ早いって言ったのに……」


「結賀さんから注意されていたから行くか迷ったんですけど、救助とか避難とか、俺でも何かできればって思ったらつい……まぁ結局、一緒に戦ったんですけどね」


「そうね……新田さんの功績は警察からも報告を受けたわ。貴方が赴いたことで、多くの民間人……いえ、民間人だけではなくセイバーも助けられたって。凄く感謝していたわ。

 それに、ドラゴン級のモンスターも倒しちゃったんでしょ?」


「まぁ……はい」


「よく頑張ったわね。凄いわ、新田さん」


「ありがとうございます」


 険しい表情を浮かべていた結賀さんが微笑みながら褒めてくるので、俺は嬉しくなった。誰かに褒められたいからやった訳ではないけど、こうして直に褒められるのってやっぱり嬉しいもんだよな。


 しかし結賀さんは、再び険しい顔を浮かべて注意してくる。


「でも、お願いだから無茶はやめてね」


「はい、気を付けます」


「よし、ならいいわ! それで今日はどうしたの? 魔石の換金?」


「それもあるんですけど、他にも用があるんです。実は結賀さんにお願いがあって……」


「私にお願い? (お願いってなんだろう……新田さんがそういうのって珍しいわね)」


 怪訝そうに首を傾げる結賀さんに、俺は事情を説明したのだった。



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