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第68話 豪華な宿泊先。

 海の幸を食べに小旅行……!


 が、現実になっている!


 馬車で順調に視察先へと進みながら、馬車内の空気の入れ替えと称して時々小窓を開けていたクラウディア。

 森に敷かれた綺麗に整備されている道を優雅に進むうち、懐かしい潮の匂いを感じていた。

 それは段々としっかり香ってきて―――


「美味しい! 」


 カルパッチョというものだろうか、オリーブオイルと細かく砕いた岩塩に生魚の切り身が美しく装飾された皿に綺麗に盛り付けてある。


 その切り身を一切れ口にした瞬間思わず大きな声が出てしまったクラウディアである。


 クラウディアと対面する形でテーブルに座っていたシュヴァリエは、クラウディアを眺め満足そうに微笑む。


「そうか、気に入ったか?」

 シュヴァリエに問われ、口に入れたものを咀嚼しながらコクコクと頷く。

 大きな瞳は蕩けてうっとりとしていた。


「……俺のも食べるか?」

「絶対お兄様にも食べて欲しいのでいらないです! 美味しいものを独占するのも好きですけど、お兄様と美味しいものを美味しいねって分け合う方はもっと好きですから」


 咀嚼したのをごくんと飲み込んだ後、テーブルに置いてある果実水のグラスを持ち上げ一口飲むと、クラウディアはキリッとした顔で話す。


「……そうか。では、頂こう」

「ええ、是非! 驚く程に美味しいですよ!」


 満面の笑みで勧められ、生魚を食した事のなかったシュヴァリエは恐る恐る一切れ口に入れた。


 ゆっくりと咀嚼し嚥下する。

 どの所作ひとつとってもクラウディアとは次元の違う優雅さが漂う。


(同じヒト科な筈なのにどうしてこう違うのかしら)


 厳しいマナー講師にビシバシ教育され、クラウディアも所作に自信を付けてきた所ではあるが、シュヴァリエは年季が違うからか分からないが、食事をする姿すら思わず見惚れてしまう程に美しい。その指の先まで美しいってこういう事なのだとシュヴァリエを見て理解した。


 これって容姿が人外めいて美しいからかなー? 見た目は天使様だもんね。

 などとクラウディアが考えていると、


「本当だな、驚く程にうまい。生魚とはとろけるように柔らかいな」

「油と塩でしか味付けしていないのに、それだけでこれ程美味しいんですから凄いですよね」


 クラウディアの話に頷き耳を傾けながら、ひとつまたひとつと口に入れていくシュヴァリエ。


 シュヴァリエの皿に乗せてあったカルパッチョは綺麗に完食された。


 カルパッチョの無くなった皿を寂しそうに見ている気がして、クラウディアは最後の一切れをシュヴァリエにアーンしてあげたのだった。


「最後に食べた一切れが一番うまかったな」

 と甘い笑顔でシュヴァリエは感想を口にしたのだった。



 大貴族御用達の宿の部屋の室内装飾は皇宮には当然及ばないものの、たいへんに豪華である。


 前世でネズミの国が大好きだったクラウディアは、某姫のお城に似たこの宿を目にした時からときめきが止まらない。


 美しい布が天井からいくつも垂れ下がる天蓋ベッドや、艶々と輝く白い浴槽の足が金色の猫足である事や、置かれている小物が青と白である事も甘すぎない配色で大変に好ましい。


「ふぅ……いいお湯だった……」


 アンナにお風呂上りのお手入れをして貰いながら、クラウディアはうっとりと満足の吐息を零す。


 艶やかな髪から丁寧に水気をふき取った後は、クラウディア専用に配合した特別なオイルを万遍なく髪に塗り込み、クラウディアがドライヤーがない世界を憂いて何となく思いつきでアンナに伝えた火と風の混合魔法を使用して貰い髪を乾かす。


「それはようございました」

 アンナが嬉しそうに微笑んだ。


「アンナも入ってきてもいいよ? アンナの部屋に浴室ってある?」

「私の部屋は姫様の横にある護衛騎士用の部屋になりますので……お風呂は無いかと思われます、ただ一階に大きな浴場があるらしく―――」

「えっ、大きな浴場があるの「姫様は絶対に入る事は出来ません。貸切……ならいけるかと思いますが、まず陛下が許可されないかと」あ……そう。」


 クラウディアの発言を遮るようにアンナに断定されて、一旦上がったテンションがスンと下がる。


(まぁそうだよね……浴場っていう護衛しづらい場所でいくら貸し切りとはいえ皇女が入るわけだし、そのあたりの護衛のやり方を考えるのだって大変だしな。それに貸切なんて他に入りたい人に迷惑しかかけないよ。諦めよう……)


 この世界の大衆浴場がどうなっているのかとか興味津々なのだが、周囲に無茶を敷いてまで叶えたい事でもない。

 人に迷惑をかけると分かっている我儘は極力言わないクラウディアである。


「じゃあアンナはこの部屋のお風呂を堪能したらいいよ。ゆっくり入ってきて大丈夫だから」

「いえ、皇女様である姫様の部屋で入浴など……」

「その皇女がいいって言ってるんだから、入ってきて! 凄くいいお湯だったよ!

 ここら辺の水質がいいのかもねぇ」

 何やらブツブツいっているが、アンナが断っても一切引く事がなさそうである。


「……では、お言葉に甘えまして……頼んだ」


 クラウディアの提案を受け入れ、アンナが頷いた事に喜ぶクラウディアの耳にはアンナの囁く声は聴こえなかった。


 アンナが入浴するという事は、就寝前の無防備な時間帯にクラウディアの警護に隙が出来るということ。

 就寝してからなら大勢の影や護衛が張り付いているのだが、お風呂上がりの就寝前のお手入れタイムは皇女ということもあり配慮されて、メインで警護するがアンナなのである。

 

 お手入れタイムに付けている影を二倍の数の指示を出して、アンナが入浴をささっと終えるまで配置させたのだった。


 イレギュラーな影増員……今回は姫様の提案……これはもしや……もしかしたらご褒美が…!? と影達は色めきたち警護にも常にない力が入ったが、残念な事に今回の件ではご褒美はアンナから差し出される事はなかったという。



本日ラストでした。

ご覧下さいましてどうも有難うございました!


イイネ、ブックマーク、評価、誤字脱字報告いつも有難うございます。

拙作をご覧下さっている皆様に感謝を。


皆様もリラックスした良い日曜の夜をお過ごし下さい。

また明日よろしくお願いします。

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