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星のカケラに祝福を  作者: 四条月妃
白紙の世界
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空白

 

       第一章「白紙の世界」

       プロローグ「空白」


 扉を開けるとそこには何もなかった。

 いや何もないというのは少し表現が曖昧かもしれない。

 全てが、そう昨日まであったであろう建物が、多いにいたであろう人がそこに形だけ残して真っ白に染まっていたのだ。

 

 「寝ぼけてんのかな」

  

 いや本当はわかっているのだ。

 ただ目の前に広がっている俄かに信じがたいこの出来事を現実として受け止めることができるはずがない。

 

 一歩足を進めてみる。

 本来ならばコンクリートの地面があったはずの場所は雪でも積もったかのように真っ白だ。

 それでいて感触は硬い地面のままだった。

 家も人も同じくそうだった。


  ――どうなってんだ。

 

 頭が状況に追いつかない、いや追いつくわけがない。

 こんな映画や漫画の世界みたいな出来事が急に起きれば当然だ。

 建物も人も何もかもが雪像のように白く染まったこの状況をどう理解しろと言うのか。


 ――情報だ、情報がいる。

 

 もしかすると自分の住んでいる地域でこの特殊な現象が起きているのかもしれない。

 安全な、被害に遭っていない場所があって避難している人もいるはずだ。

 そう考え情報を集めることにした。

 

 まずは自分の部屋に戻る。

 戻る途中で部屋の中まで真っ白になっているのではと考えたが、この雪像のような現象は建物の外側を覆うように起きていた。

 そのため部屋はそのままだった。


 「もしかすると雪像のようになった人も元に戻ったりするのかもしれないな」

  


 だがそんなに甘くはなかった。

 テレビやラジオで避難場所や状況を確認できると思ったが‥

 どちらも砂嵐のようなザァーという音が聞こえてくるだけだった。

 頼みの綱であるスマホも電波が無ければ情報など得られるはずもなかった。

 

 ――これはもしかすると…

 

 考えたくなかった。

 いや考えないようにしていたのかもしれない。

 頭の片隅にあった最悪の状況に陥ったのだと。

 全てが雪像のようになった世界で生き残った、いや残されたのは自分しかいないのではないかと。


 「流石に俺だけってことはないだろ、世界の人口は76億人くらいいるんだからな」

 

 よく考えればそうだ、こんな馬鹿げた現象が世界中で起きるはずもないし人が自分しかいなくなるなんてありえない。

 そのうち自衛隊や警察の人が助けに来てくれるに違いない。

 そう考えて心を落ち着け、気持ちを楽にする。

 ふーっと大きく深呼吸をした。

 

――パニックになっても仕方ないしな。

 

 

 落ち着いたところで外をもう少し見て回ることにした。

 外に出るのは危険かもと思ったが、家の中にいるだけでは救助に来た人に見つけてもらえないかもしれない。

 そして何より食料品がないこともあった。

 腹を満たしておかねば何かあった時動けないし、今はテレビが砂嵐ではあるがついたところを見ると電気はまだ生きている。

 だがこれもいつ止まるかわからない。

 電気が止まれば冷蔵の食品は腐ってしまう。

 その前に食べれるものから食べておきたい考えだった。

 それに今日は何も食べていない。

 お腹は十分にペコペコだった。


 「近くのコンビニでも行ってみるか」


 とりあえず家の近くにあるコンビニへ行ってみることにした。

 電波の立たないスマホと大きめのリュックサックを背負い家を出る。

 

 いつも通っていたはずのコンビニへの道もなんだか知らない道のように感じた。

 当然と言えば当然なのかもしれない。

 全てが白一色、やはり気味が悪い。

 

 コンビニまでの道中の家の中を見てみることにした。

 やはり家の中はなんともないらしい。

 鍵が閉まっていなかった数件の家を開けさせてもらったがどの家も同じ結果だった。

 そして家に人がいることは無かった。

 不思議ではあるがこれなら食料を無事に手に入れられるかもしれないと思った。


 だか俺はコンビニへ辿り着くことは出来なかった。

 その子は突然現れた。

 真っ白な世界の中で周囲と同じ白い髪を持ちながらも比べ物にならないその白さ。

 人と同じ見た目をしながら何か違うと感じさせるその存在感。

 それでいて可愛らしいと感じてしまうほどの幼い少女であった。


 そして少女が口を開く。


 「もうあなたしかいないのよ。お願い世界を救ってください。」と。

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