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拓海くんと、わたしの独り言。

 幼稚園の頃、私の家は拓海くんが住んでいる街に引っ越した。

 お隣とかじゃ無かったので、拓海くんとの出会いは幼稚園。

 

 それから、ずっと私の隣には拓海くんがいる。当り前のように……。


「なんで、あんたなのよ。好きでも何でもないんなら、離れてよ」

 中学生の頃、女子に囲まれ、そう言われて突き飛ばされた。


 『なんで、あんたなのよ』

 

 そんなの私が一番思っている。

 だから、

「別に、私からくっついてる訳じゃないもん。邪魔しないから、告ったら?」

 そう言った。


 だって当時の私は、少し太めで外見も中味も磨こうなんて思ってなかった。

 鏡を見るのが嫌になるような、そんな女子力も何もない子ども……。


 それでも、拓海くんは私の後を付いてくる。


 私は努力を始めた。


 拓海くんは、何でも出来た。

 休日、親が居なかったら昼食を作るのは、拓海くんだ。

 勉強だって余裕で私に教えている。

 何で、部活に入らないの? ってくらい、スポーツも出来る。

 容姿は、まだ可愛い部類かな? 

 中二になって、いきなり身長伸びたけど……。

 

 私は、ダイエットをして、お肌の手入れもして、拓海くんの後を追うように色々なことが出来るようになっていった。

 高校は、後を追って来られないように女子校にしたけれど、努力は続けた。


 朝、電車で一緒になる拓海くんは、友達の輪の中にいた。

 女の子が多いところは相変わらずだ。

 私も友達としゃべっていた。時々、目が合う。


 高校一年生。学校が休みの度に、拓海くんはやってくる。

 二年になって、私は休みの日でも外出するようになった。

 もう、何のために努力しているのか、分からなくなっていた。


 図書館のガラス戸に私が映る。

 スラッとしてるけど、ちゃんと胸もある。自分で言うのも何だけど、可愛くなったと思う。

 勉強も自分で何とか出来るようになった。運動は、平均的だけど出来ない方じゃない。

 家事も、母親代わりが出来る程度にはこなせる。


「美佳ちゃん。こんなところに居たんだ」

 振り向くと、拓海くんがいた。

「勉強、大変なの? 毎週、ここに来てたの?」

「えっと……」

 拓海くん笑顔だけど、目が笑っていない。

「い……今、帰るところ」

 ここは、図書館だ。静かにしてないと、いけないところだ。

 万が一でも、ここで言い争いなんかできない。


 図書館の敷地にある公園で、私たちはベンチに座った。

 ボール遊びが出来ないようにか、木が点在してる。

 休日の午後、誰もいない公園は静かだった。

「僕を避けてた?」

「そういうわけじゃないけど、なんかおかしいよね。子どもじゃ無いのに、四六時中一緒って……」

 私は、笑って言った。ちゃんと笑えてたと思う。

 だって、拓海くんが家に来ても、たわいの無い話をして、勉強をちょっとして、ゲームしてご飯食べて……だよ? 子どもの頃とかわらない。

 拓海くんの反応が無いので、どうしたのかと拓海くんの方に向いたら……唇同士がくっついた。

 拓海くん目をつぶってる。

 キ……キスしてる? 私たち……。

 唇から離れたら、今度は頬にもチュってして離れた。


「子ども……じゃないよ」

 そう言って拓海くんはニッコリ笑った。




「今考えたら、当時の拓海くんってストーカーだよね」

「何? いきなり」

 拓海くんは、サラダに入れるレタスの葉を適当な大きさにちぎっている。

 今日の食事当番は、拓海くんなので、私はのんびりソファーに座ってた。


「だって、ずっと私の後を付いてきて。高校の時、図書館に現れた拓海くん見たときは、恐怖だったよ」

「必死だったんだよ。好きな子から避けられて……」

「だって、拓海くん。モテてたじゃない。何でも出来て、イケメンで……」

「そりゃ、努力したからね。幼稚園の時に一目惚れした美佳ちゃんのそばにいてもおかしくないように」

「へ?」


「あの頃の美佳ちゃんの可愛さったら、尋常じゃなかったじゃない? 可愛い上に世話焼きで、優しくて、大人受けも良かったから、将来あんな子がうちの息子の嫁に……って、お母さんも多かったんだよ?」

 そうだっけ? 知らなかったよ、私。

「だから、美佳ちゃんの為に努力したのに、他の子にモテたって仕方無いでしょ?  なのに、高校生になって、また可愛くなって僕から離れようとしたから……」

 笑顔なのに、目が笑ってない。

 もしかしたら、拓海くんって……。


「で……でも、努力の甲斐あって結婚出来たから……」

「うん、そうだね。良かったよ、結婚出来て」

 そう言って、夕飯の準備を再び始めた。


 怖い……もしかして、結婚出来てなかったらやばかった? 

 私は、拓海くんが料理している後ろ姿をチラッと見て、考えるのをやめた。

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