ジェファー家にやってきたものの
「手紙のやり取りを何度もさせていただいたが、実際にお会いしたのは、はじめてなのだから、はじめまして。というべきかな。私があなたの夫となるエドワード・ジェファーだ。遠いところから、わざわざこのような田舎に来てくれてありがとう。」
「はじめまして、ジェファー卿。どうぞよろしくお願いいたします。こちらこそ、私を受け入れていただき、誠にありがとうございます。一日でも早く馴染めるようにかんばりますね。」
「いえいえ、そんな頑張らなくとも!あなたは、居ていただけるだけで、私は満足ですよ。そして、私のことは、是非エドワードと呼んでください。そうそう、紹介いたしますね。この子は私の娘でクリスティーナといいます。さあ、クリスティーナ。新しい母上にご挨拶を」
「は、はじめまして、お義母様。クリスティーナ・ジェファーと申します。14歳です。どうぞよろしくお願いいたします。」
と緊張の為か、少しぎこちなさが残るが、とてもかわいいカーテンシーを披露してくれた。
娘?娘といいましたか?ちょっと聞いてないんだけど!
いや、いやだとは言わないわよ。
でも、初婚でいきなり14歳の娘ができるのか...。
務まるのか私に、彼女の母親?
いや、嫁にいくと決めた時から、腹をくくってきたじゃない私!
よしっ!
「初めまして、クリスティーナ。カメリアよ。お母様と身構えず、ちょっと年の離れたお姉さん位に思ってくれて構わないわよ。これからいっぱいお話しましょうね。」
と彼女の目線に合わせて挨拶を返してみたところ、少し緊張がとけふわりと出たその笑顔は、まるで花の妖精のようにかわいかった。
かわいい////
なんて、かわいいのかしら!
お肌は雪のように白くてすべすべだし。
目だってアーモンドのようにくりくりクッキリぱっちり大きく愛らしい。
まつ毛だってバシバシだし、唇もきれいなピンク色でぷっくりしていてかわいい。
対して、私はというと多少整っているとはいえ、ちょっと釣り目がね、いつも威圧感を感じるって言われるのよね...。はぁ。
うちには、全くかわいげのない弟しかいなかったから(いや、あれはあれでかわいい弟なのだが)、なんだか癒されるわ。
その日は、「お疲れでしょう」という事でそのまま部屋へと通された。
通された部屋に入るとノックがして、40代くらいの女性と10代くらいの女性が入ってきた。40代の女性はロンバートと同様に無表情で、10代の女性はどこかおどおどしていた。
「はじめまして、カメリア様。私は侍女長をしておりますモリスと申します。そして、こちらは、カメリア様付きとなります侍女のマリーになります。何かご入用の際は、何なりとお申し付けくださいませ。」
「はじめまして、カメリア様。マリーと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしくね」
その日は、就寝の支度が整った段階でマリーには下がらしてもらい、一人 部屋をぼーっと見回してみる。私に用意された部屋は、侯爵家という事でやはり立派な装飾の部屋だった。ちょっと時代遅れなカーテンやクッションなど気にはなったが、これはこれでアリだ。気になったといえば、出迎えてくれた使用人の人数。この大きさのお屋敷にしては、少し少ないように思えた。多額の持参金が必要だったという話は、本当なのかもしれない。
にしても、子供がいたとは...。まあ、後妻に入るのだから、前妻との子がいてもおかしくないのだが、手紙のやり取りをしていたのだから、一言あっても良かったのではないだろうか。そもそも、お父様はこの事をご存じだったのかしら。母にこれ以上怒られない為に言わなかったのか、それとも知らなかったのか。もし知らなかったとしたら、父のリサーチ不足に今後の当家の行く末が心配だ。それにしてもエドワード様もカッコよかったが、クリスティーナかわいかったな...。とつらつら考えながら眠りについた。
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「カメリア様、お時間でございます。お目覚めください。」
と昨日紹介されたマリーが起こしにきていた。
「マリー、おはよう。今日からよろしくね。」と私の吊り目が威圧しないように挨拶すると
「は、はい!おはようございます!こちらこそよろしくお願いいたします!」
と少し早口であったが、笑顔で返してもらえた。この娘と上手くやっていけると良いなぁ...。
「ところで今日の予定はどうなっているのかしら?」
「今日の予定ですか?えっとーなんだったけかな...。
あっロンバート様がもうすぐお伺いすると言ってました!」
「そ、そう。ありがとう。では、ロンバートさんがいらっしゃる前に身支度を整えたいから、手伝ってもらえる?」
「はいっ!」
「...。」
「...。」
「マリー、そしたら着替えをクローゼットから適当にもってきてもらえるかしら?」
「はいっ!」
「カメリア様、お持ちしました!」
「ありがとう...。」
「...。」
「では、着替えるから袖を持ってもらえるかしら?」
「はいっ!」
...。大丈夫かしらこの娘。
男爵家とはいえ、お金はあったので、使用人がたくさんいた為、着替えは自分でできるが、基本使用人任せであった。格上の侯爵家でも当然使用人任せと思っていたが、どうやらそうではないらしい。家が違うとやり方がきっと異なるのだろうと思い、また初日からバンバン指示するのもアレなので、どうしてもできない所をマリーに手伝ってもらうことにした。
マリーは私より背が低く、華奢。髪はブルネットで、クリっとした目にとても良く似合っていた。クリスティーナに比べてしまうとあれだが、かわいい年ごろのお嬢さん。という感じだ。無表情な使用人が多いこの家では珍しく笑顔で接してくれるのは、うれしいのだが、如何せん一つ一つ指示を出さないと動けないのだ。指示されたことはしっかりできるのだが、これは、モリスに言うべきかと思うのだが、せっかくの笑顔要員だし、気まずくなるのも嫌だなと思い、もう少し様子を見ることにした。
初日に顔を合わせて以来、エドワードは仕事と結婚式の準備との両方に追われ忙しいらしく、あまり顔を合わせていない。そんな中毎日届くお花とそれに付随してあるメッセージは大切にされている気がしてうれしかった。クリスティーナとも彼女の勉強の時間とタイミングが合わないらしく、彼女とも殆ど会えなかった。結婚式が終わって落ち着いたら、3人で顔を合わせる時間も増えると良いなと思いつつ、式までの間の準備に私自身も追われあわただしく過ぎていった