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β版白雪姫物語  作者: 鹿島きいろ
15/35

トルタイム領の白雪姫

翌日、朝からお屋敷は騒がしかった。


そりゃあ、そうだ。

侯爵令嬢が突如として、消えたんだもん。

何食わぬ顔をして、朝食を取りにダイニングルームへ行く。


「全ての出入り口は、確認したのか?」

「はい、確認いたしました。」


「どうか、なさいましたの?」

眉間に皺を寄せたエドワードと顔に疲れが見えているロンバートに、話しかけてみる。


さあ、最後の仕上げよ!

上手く演じなさい、私!


「奥様、実は...。」


「クリスが、クリスがいなくなったんだ!」


「何ですって!どういうことなの?」


「今朝、侍女がお嬢様を起こしに行ったところ、ベッドの中にはいらっしゃらず、今、屋敷内を総出で探しているところです。」


「なぁ、カメリア、何か知らないか?気づいたこととか、物音をきいたとか...。

 何でも良いんだ、何でも...」


「パーティーで疲れてしまってて、ごめんなさい...。」




「なあ、カメリア。君、本当にずっとパーティーにいたよね?」

いつも優しい顔のエドワードが(対応はそれにあてはまらず!)一瞬にして顔を強張らせ、

一歩一歩、私に近づいてきた。


「え...っ」

  怖い...。背中に寒いものを感じる...。




「やだなぁ、叔父上!姉上は、叔父上と挨拶回りした後、私と踊っていたじゃないですか!」


気がつくと、後ろにロビンがダイニングルームに入っていた。


ナ、ナイスだロビン!

あのダンスがこんな時に役に立つとは!


「そ、そうだったな。すまない。気が動転していて。」


「いえ、お気になさらず。わ、私も探して参りますわ。」

と言ってふらつき倒れそうになる私。


「奥様、大丈夫でございますか?

さ、奥様は、部屋でお休みになっていて下さい。

クリス様は屋敷の者で、探しますので。」


そして、侍女に連れられ自室に戻り、少し休みたいと言って人払いをした。


懸命な捜査にも関わらず、クリスは見つからなかった。

私は、そっと胸をなでおろす。


あれからエドワードの表情が抜け落ち、日に日にやつれていった。

屋敷の中は、より一層どんよりとし、まるで、お葬式のようだった。

私もバレない様、クリスは突然消えたと思い込むようにし、なるべく部屋に閉じこもり、食事の量も減らしてみたりと工作に勤しんでいた。


クリスの様子を見に行きたかったが、せっかく上手く逃がしたのに、足がつくのを恐れ、ぐっと我慢した。イーサム一家の面々とクリスの性格を考え、きっと大丈夫だろうと思うようにする。



□□■□□■□□■□□■


厨房に水を取りに行くのが、もはや日課となってしまったある日、

いつものように厨房に水を取りに行こうと廊下を歩いていると、侍女たちの井戸端会議に遭遇してしまった。


「旦那様、すっかり気落ちしていまって。」

「白雪姫様も、いったいどこに行ってしまったのかしら...。」

     

 ん?


「カメリア様も食が細くなっているらしいわよ!」

「またまた、あの女に限って、そんなことあるかい!」

「それもそうね。」

「ロンバート様の髪も白髪がずいぶん増えたんじゃないかしら。」


      今、白雪姫って言った?

      なんだ、なんか引っかかるぞ...

      何だ、何が引っかかるんだ 

      継母、魔法の鏡、白雪姫...。

      まさかっ!


気がつくと侍女たちに突進していっていた。


「ちょっと!あなた達!」


「「「ひっ!」」」


「今、何て言ったの!?」


「ロンバート様の白髪が...。」


「その前!」


「カメリア様の食が...」


「もっと前っ!」


「白雪姫様が...」


「そう!それ!何、白雪姫って!」


最初こそ、ビックリしていた侍女たちだが、だんだんいつもの調子を取り戻してきたらしい。


「クリスお嬢様の愛称ですよ!旦那様が、雪のように白いお嬢様に因んだ愛称ですよ!」


知らないんですか?と馬鹿にしたようにクスッと笑っていたが、そんなことはどうでも良い。


血の気が段々引いていくのがわかる。

私は、急いで自分の部屋に戻った。




「ねぇ、スリン!」


「は~い、カメリア。なんだい?二件目かい?」


「ええ、二件目で良いわ!

 ここって、白雪姫の、童話の白雪姫の世界なの!?」


「へ...。何で君が、そんなこと知ってるの?」


「質問に質問で返さないで!」


「君は、正しい。ここは現実の世界であるけれど、童話の白雪姫の世界でもある。」


なんてこった。

前世(ほとんど役に立たないけど)持ちだとは思っていたけど、いわゆる異世界転生だったとは...。


にしても、ゲームとかじゃなくて、まさかの童話。

シンプルだけど、逆に難しくない?

うっかり、スリンに「世界で一番美しいのは誰?」とか、ノリで聞かなくて良かったわ...。

聞いていたら絶対フラグ立ってたわよね。

いや、スリンに白雪姫って答えられても、嫉妬するどころか、

「ですよね~、スリン分ってるぅ~」とか思いそうだけど。



「おーーーーい、カメリアーーー。」



話の強制力って、どの位なのかしら?

えっ、待って!ということは私、悪役令嬢じゃない?

違うか、悪役継母か?

いや、この場合、継母は悪役と相場が決まっているから、「悪役」継母とは言わないのか。

どおりで、自分の顔が、ちょーーっと威圧感のある顔なわけだわ。


しかも、だいぶ話進んでいるわよね。

あれ、白雪姫って、ストーリーいくつか諸説なかったかしら?

どれだ?どの話が進行しているんだ?



「カメリアったらーーーー!返事してよーーー。」



てか、自分自らが狩人になって、屋敷から連れ出してるし!


待て待て待て、落ち着け私。

どの話だって、最後は毒リンゴに行き着くわよね。

私は、作らないけど、でも、誰かが持ってくる可能性あるし...。


よしっ



「ねえってバーーーー!」


「ねえ、スリン、三つ目よ!

 毒リンゴの解毒剤の作り方、教えて!」


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