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β版白雪姫物語  作者: 鹿島きいろ
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それでも、心が折れそうな事もある。

季節は春から夏へと変わったが、私の穀潰しライフは相変わらず、継続中だ。


最近では、侍女たちも私のことを「ご穀潰し」と陰で話をしている声が聞こえる。私に聞こえるくらいなら、陰で言わなくても良いのに。しかも散財しているわけじゃないから、穀潰しってわけじゃないんだけど。いや、何も仕事をせず衣食住提供して貰っているから、穀潰しに入るのか?


エドワードとも相変わらずで、ほぼ顔を合わせることもなく、たまに会う食事の時にやさしく声をかける。ただそれだけど関係だ。白い結婚、絶賛継続中!これは、もう夫婦と思わず、「同居人」と気持ちを入れ替えたほうが、楽な気がする。いや、居候か。


エドワードといえば、頻繁に彼は、夜中にどこかに行って、早朝に戻ってくるという事があることに気が付いた。別に壁に耳を充てていたわけではないが、シーンとした部屋で、ぼーっとしていると聞こえてしまうのだ。なんせ、隣の部屋なもんで。


どこに行っているかは、知らない。後をつけてみようかと、うっかり思ってしまったが、止めた。後をつけていっても碌なことがない気がするし、なんだか自分がみじめだ。


そんな中で、クリスと私の仲は順調!キャハハ、ウフフなお茶会をしたりして、私の癒しの時間を提供してくれる。ただ、最近勉強が大変らしく、暗い顔をしている時が、たまにある。本人は「大丈夫だ」と言っていたが、続くようであれば、もう少し踏み込んで訊いてみようと思う。


そうそう、この前、一人遠乗りの際、森の中で、偶然イーサムの家を見つけた。こじんまりしていたけれど木を組んだ作りで、すごく温かなお家。うらやましい。彼はビックリしていたけれど、すぐに彼の奥さんと子供達(なんと5人!)を紹介してくれた。みんな彼と同様、小柄な体をしていたが、鉱山の仕事をするには、都合が良いらしい。


それからというもの、私は時々だが、イーサムの家へ遊びに行った。奥さんの手料理やパイをごちそうになったり、イーサムに森のことや鉱山の話を聞いたり、ロビンの小さいころの数々の逸話を聞いたり、子供達と遊んだり。ちなみに、ロクサムは、私にべったりくっ付いて、帰るというとべそをかいてくれる。かわいい!クリスとはまた違う癒しを、彼らは私にくれる。本当にありがたい。



□□■□□■□□■□□■



北の国では珍しく、茹だるような暑さの日、私は喉が渇いたので、水を取りに厨房へ向かった。


侍女にお願いすれば良い事なのだが、みんなが忙しいと言っていた日中の時間帯だったし、私と彼女たちの関係上、頼みづらかったので、「水くらいは自分で」と思ったのが、間違いだったらしい。



廊下の角を曲がろうとした先の部屋から、マリーが出てくるのが見えて、つい見えないように、もと来た角の壁に隠れてしまった。そーっと除いてみると、マリーは誰かと会話をしていた。よく見るとマリーの髪と服は少し乱れており、顔もほんのり上気しているような気がする。


「あらま、逢引かしら?」

出歯亀根性的な気持ちを落ち着かせて、再び除いてみると、マリーは相手と抱き合い、熱烈なキスをしていた。


相手の方は誰かしら...








ああ...エドワードだったのね...。





私に気が付いたらしいマリーは、いつもの少女らしい笑顔ではなく、勝ち誇った女の顔で笑っていた。


足が段々震えてくる。

息が苦しいし、胃から何か逆流してくる。


手に持っていた水差しを、割らない様になんとか静かに床に置くと、私は元来た道をたどり、馬場へと向かった。最初は、歩いていたが、だんだん速足に、気づけば走っていた。


お屋敷の中を走るなんてはしたないが、一刻も早くこの屋敷から離れたかった。

途中、ロビンとすれ違った気がしないでもないが、そんな余裕は私にはなかった。


馬に乗ると森を抜け、領を一望できるあの場所へと目指した。よくわからない考えが、形になる前に浮かんでは消え、浮かんでは消えていったが、深く考えるのは、あの場所に着いてからにしよう。



私は、ひたすら、あの場所を目差した。



実際に、「あの場所」に着いてみると、気持ちは少し落ち着いていた。泣くと思ったが、意外にも泣けなかった。


どの位、ここで立ちすくんでいたかわからないけど、ふと気が付くと、馬に乗ったロビンが目の前にいた。どうやら、追いかけて来てくれたらしい。


「カメリア、いったいどうしたんだ。そんな顔をして、馬に乗って飛び出していくなんて。」


「...。」


「俺に話してもらえないか?」


  

言えない。

自分の旦那と自分の侍女の逢引を目撃したなんて。

浮気なのだろうか、本気なのだろうか...

私に手を出さず、向こうに手を出しているんだから、向こうが本気か。

  

悲しみ通り越して、笑えてくるな。ハハ。

  

「私のね、覚悟が足りなかったみたい。

 腹くくって、嫁に来たはずなんだけど、実際目にしたら、ダメだった...。」


「君は、いったい何を目撃したんだ?」


「ごめん、これ以上は、言えない...。」

    

気が少し緩まったせいか、力が抜け、ペタンと土の上にお尻をつけてしまった。

きっと侍女が嫌な顔するだろうな。


「...。」


少し戸惑った気配を感じたと思ったら、頭の上に大きな手が乗って、ゆっくりとな撫でていた。

すると目の前が段々霞んできて、気が付けば私は泣いていた。



ロビンは、それ以上何も話しかけてこなかった。ありがたい。




□□■□□■□□■□□■


翌朝、マリーはいつもの笑顔で私を起こしに来た。


マリーは「あの時」気が付いていたと思ったが、私の気のせいだったのだろうか。


こちらから聞くのもあほらしく、そのままにした。私の笑顔は引きつっていなかっただろうか。


モリスに部屋付きを別の誰かに変えてもらおうかとも思ったが、うまく説明できる自信もなかったし、変えてもらったところで、どの侍女になったとしても、あまり変わらない気がして、止めた。後々考えてみると、この時私は結構疲れていたっぽい。



そして、今夜もスリン相手に管を巻く...

と止まらないので、楽しい話をしてくれるよう頼んだ。

スリンが飽きて、消えるまで。


すまん、スリン!


イーサム一家は、奥さんと子供5人の7人家族!

奥さんも森の民なので、みんな小柄!

Hi-Ho♪ Hi-Ho♪と言って、鉱山行っているかは、不明...

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