嫁に欲しいと望まれて
「カメリア、お前に結婚の話が来ている。」
一家団欒を楽しむ為仕事の話をしない父に、珍しく執務室に呼ばれたと思ったら、そんな話だった。
「そうですか。」
私に来たという結婚話、とうとう来たかというべきか、やっと来たかというべきか...。
「詳細を聞いてから返事を決めて良いからな。」
と父は言ってくれたが、遅くとも18までには結婚するのが常識とされている中、24にもなってまだ実家にお世話になっていた私は、どこか肩身が狭かった。両親は、気にしなくて良いと言ってくれたが、去年、次期当主である弟が結婚してからは、より一層肩身が狭く感じていた。
私もかつて婚約者がいて、それこそ18歳で式を挙げる予定であったが、ちょうどその前の年に隣国との武力衝突が起こり、婚約者は出征。すぐに収まると思われていたため、無事帰還してから式を挙げるつもりであったが、だらだらと続いてしまい、2年後になんとか終結。しかし、終結宣言が出されてからも、彼は帰ってこなかった。かといって死亡の報告も来なかった為、そのまま行方不明者扱いとなり、3年目のおととし、とうとう国から死亡者として扱う旨の通知が届いた。
親同士が決めた結婚話であったとはいえ、顔はそれなりに合わせていたし、出征してからも何度か手紙のやり取りはしていた。確かに物語のような熱烈な恋とは異なるけれど、それなりに恋しい人であった。
とまあ、そういう理由で私のこの結婚話に決着がついた時には、既に22歳になっており、気持ちの整理をしながら、家業をそれから2年手伝っていた為、今現在私は立派な「行き遅れ」となっていた。
そんな中で父が持ってきた新たな結婚の話だった為、行かず後家の私を貰ってくれるのならば、私は受けるべきであろう。
「それにしても、お父様。こんな行き遅れの私を貰っていただける奇特な方は、どこのどなた様でしょうか。」
「うむ。トルタイム領のジェファー侯爵家だ。」
貴族年鑑と王国の地図をパラパラと、頭の中で引っ張りだしてみる。
確か、トルタイム領って、宝石やら魔石やらが採掘される鉱山がいくつもあったようなと考えていると、共に話を聞いてきた母が、
「あなた、ジェファー侯爵家っていったら、何年か前に奥様を亡くされて...。
え、後妻ってことですか?」
「うむ...。」
「...。」
まあ、しょうがないか...。
「確かご当主も40過ぎていたんじゃなかったかしら...。いくらなんでも、それではカメリアが...。」
「だがなぁ、あちらから直々に是非にと話が来てな...。」
と歯切れが悪い父の様子。
確かにあちらは、歴史ある名家の侯爵家。それに比べ、うちはたかだか数代前に爵位を賜った男爵家...。断りづらいよね...。
「お父様、謹んでお受けいたします。」
と笑顔で受けることにした。