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三幕目 2

旅は順調だった。

見えない所であの護衛の人達が活躍する事があったかもしれないけれど———表向きは大した問題もなく。

…何日かに一度は朝起きるとアルフ様に密着されていたり額にキスされたりしてパニックになるという個人的な問題はあるけれど。

私たちは無事に神聖帝国へと入った。




「っネーロ?」

人気のない山道を走っていると、突然ネーロが立ち止まった。


「ミア?どうした」

「ネーロが突然止まって…」

まさか…強盗とか?!

嫌な思い付きに身体を強張らせると———前方の茂みに人影が見えてぎくりとする。

私の緊張が伝わったのか、アルフ様がすぐ後ろににじりよってきた。


「———あ…」

「ミア?」

「ええと…ジュード、さん?」



「やあ。名前覚えてもらえてたんだ」

姿を見せたのは護衛のジュードさんだった。

その後ろにカーティスさんの姿も見える。

「どうして…」

「アルフ様に伝えたい事があって。乗せてもらっていい?」

そう言うと、二人は馬車へと乗り込んできた。

私はゆっくりと、馬車を走らせた。




「何かあったのか」

「公爵家の動向を監視していたのですが…思いがけない事態が起きました」

「思いがけないとは?」

「まずモナ嬢はやはり侯爵家へと戻られ、ネイト様と婚約なされました」

「そうか」

相槌を打つアルフ様の声には、何の感情もこもっていないようだった。

「それから…公爵様が病気となられ、カーラ様が追放されました」


「———は?」

今度の声にははっきりと、驚きの感情が含まれていた。

「義母上が追放?それに父上の病気というのは…」


「女ですよ」

それまで黙っていたジュードさんが言った。

「女に溺れて仕事を疎かにしているので、病気という事にして蟄居させられているのです」


———うわあ、お家騒動あるある!

お芝居でよくあるよ、ボンクラ若君が廓遊びに夢中になってしまい、対外的には病気という事にさせられて実権を奪われるの。

それは大抵お家乗っ取りを企む悪役家臣に唆されたからなんだけど…


「あの父上が女に溺れる…?」

困惑したアルフ様の声が聞こえる。

お父様はとても厳しくて真面目な方だとアルフ様は言っていた。

貴族として当たり前ともいえる側室や愛人を持つ事もなく、アルフ様のお母様が亡くなってから周囲の強い勧めにより今の奥様を迎えたのだと。



「公爵様は、アルフ様に呪いを掛けたのがカーラ様だと確信はしていたものの…確かな証拠を得られず苦悩していたようです。それでカーラ様との仲が拗れている所に現れた女に心を奪われたようです」

「…しかし…だからといって、仕事を疎かにするような真似をするなど」


「———これはまだ調査中ですが」

カーティスさんが声を顰めた。

「公爵様は、媚薬を盛られたようです」


「媚薬…」

アルフ様が絶句する。

「色に溺れた公爵様にカーラ様が嫉妬し、暴れたために公爵家から追放されました。実家に戻されたようですね」

「…何故そんな事が…媚薬を盛られたとは誰に……」



「どうやらアシュベリー侯爵のようです」

アシュベリー侯爵って…確かモナ様のお父様……


「侯爵が?何故…」

「こちらも調査中ですが…実はアルフ様の呪いの件は、アシュベリー侯爵とカーラ様が共謀した可能性が高いです」

「何だと?」

「その後不和が生じたのか侯爵がカーラ様を見限ったか…ともかく、公爵様への言動を理由にアシュベリー侯爵がカーラ様を追放したのです」

はい黒幕ー!

まさにお家乗っ取り!

時代というか、世界が違ってもこういう事はあるのね!

———って野次馬気分で盛り上がってしまうけれど。

アルフ様は当事者なのよね。

お父様が媚薬を盛られたとか…色々ショックだよね。


アルフ様は項垂れるように黙り込んでしまった。

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