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にっきちょう  作者: ara
7/9

7.ドクターマリオ

 ドクターマリオと言うゲームを知っているだろうか。他のゲームに登場したりもするが、本来の『ドクターマリオ』はパズルゲームである。簡単に説明すると、赤青黄のいずれか二つを持ったカプセルが降ってきて、ウイルスと一緒に4つ同色を縦か横に並べて消していくゲームだ。初期配置されるウイルスを全て消せばクリア、カプセルが天井まで積みあがればゲームオーバーとなる。


 さて、このゲーム、非常に簡単に思えるが、私がミニファミコンで初めてプレイした時にはあえなくゲームオーバーしてしまった。不慣れなパズルゲームと、レトロゲーム特有の操作性の不親切さが私の前に立ちはだかっていた。考えてみると、三色しかないので二つの色の組み合わせは6通りしかない。横で見ている時は非常に簡単に見えたのに、どうして上手くできないのだろう。そう思った私は一旦プレイをやめ、上手い友達のプレイを見ていた。上手いプレイを見ていると、とにかく無駄がないことが分かった。無駄をなくすにはどうすればいいのかもわかった。極単純だが、各最上段に対応した色をそれぞれ置いていけば無駄なく消えるのだ。早速実践してみると、明らかに実力の向上が感じられた。しかし、上手くいっているように思っても、咄嗟の判断を間違えると間違いが重なり、あれよあれよとカプセルが積みあがってしまう。動揺すれば思考力が落ち、下がった思考力は悪手を誘発し、また動揺を生む。これが負けのパターンだった。場面場面を切り取れば、容易に最善解がわかるにも関わらず、時間的制約があるだけでここまで判断力が鈍るのかと感じたものだ。思考能力の限界を超えた処理はできない。まずはこの事実を認めなければならない。そう思った私はカプセルを横向きにしか置かないというルールを定め、もしも縦に置いたらどうなるか、という考えを一切排除した。最上段の色の把握に努め、カプセルをゆっくりと落とす。この思考の制限が劇的にプレイを改善した。

 同時にしなければならないタスクを減らすことこそが、ドクターマリオの攻略方法だったのだ。


 ドクターマリオは私に色々なことを教えてくれる。あらゆる場面で「同時にしなければならないタスクを減らす」ということは非常に重要である。慣れてきたから上達した、と私たちは当然のように口にする。なぜ慣れると上達するのか。『慣れ』というものはなんとなくわかるという部分、つまりいちいち考えずに済む部分を増やすということだ。思考能力は有限なのだから、考えずに済むことが増えれば、逆に考えられることが増えるのだ。だから慣れれば、上達する。歩くときにいちいち右足が着地したらすぐに左足を出さないと、なんて考えていたら他のことをまともに思考することはできないだろう。もしかしたら究極のスポーツ選手はどんな状況でも考えるまでもなく最善の行動が取れるようなあらゆることに『慣れた』人物かもしれない。


 我々は必ずしも最善を求める必要はなく、最悪を回避できるように心がけることができればいいのだ。最悪を取り除けたなら、その次の最悪を回避できるようにすればいい。そうして残ったものは最善かもしれないし、次善かもしれない。しかし私たちはいつでも、制約のある中で答えを出さなければならない。できるだけ良い答えを欲するならば、悪い答えを容易に排除できるようにしておく必要がある。

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