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にっきちょう  作者: ara
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5.娯楽

 昨今の情報化社会において、私たちは情報の海に溢れている。多くの人々が全世界に向けて自由に情報を発信できる世界だ。私たちが一日に得られる情報よりもネット上にアップロードされる情報の方が多い。全ての情報を得られないのならば、必然的に情報を取捨選択することになる。情報に限らず、私たちは捨てているという自覚無しに多くの物を捨てている。AとBから選ぶならば、Aを選ぶということはすなわちBを選ばないということだ。自分の興味のある情報を得て、興味のない情報は捨てている。

 娯楽分野にも変化が見られていて、お手軽さとインパクトの強さが重視される。作品についてよく知らなくても楽しめるようにお手軽さが、数多くある作品群に埋もれないようにインパクトが重視される。娯楽を大量に消費する文化では一つの作品に多くの時間を割くわけにはいかない。より手軽な作品ならば浮いた時間でまた別の作品を消費できる。なにしろいくら消費したところでこの世のコンテンツが尽きることはないのだ。長く複雑な話は理解するにも骨で、途中で間が空けば記憶を照合するのも大変だ。わかりやすいストーリーであれば取っつきやすいし、思い出しやすい。もちろんこれが一概に悪いわけではない。シンプルに伝えるには無駄を省く必要があり、そのために工夫を凝らすことは作品をよりシャープにする。インパクトの強さはやはり大量の娯楽の中で既視感を打破しなければならないために必要である。目新しさのある設定は常に求められるものである。個人がSNSなどで作品を手軽に公開できるが、インパクトが無ければ目に留まらないだろう。漫画などでは出版社の編集者は新人を立派に育てるよりも、売れている素人に声を掛けることに躍起になっているらしい。一消費者である私から見れば、出版社に求めるのは面白さの保証である。面白いものだけを提供してくれる安心感こそが最も求めるものだ。逆に素人投稿ものに無いのはそこだけで、それが出版社が厳しくなっている理由だと思う。

 この二つが重視された結果、奇抜な設定のみが売りの、いわゆる出オチ作品が大量に世界を闊歩することになってしまった。娯楽はよりインスタントなものへと変化を続けるのだろうか。しかし流行りの出オチ系のお話では、いずれまた既視感の波に飲まれる時が来るだろう。その時はまた小難しい話が受けるようになるかもしれない。

 かつて一般人の移り気な興味に逆行し、ただ一つの興味の対象への深い知識を蓄えることを喜びとした人種をオタクと呼んだが、今日ではまるで真逆の、旬な作品を波に乗りながらただただ消費する人種をオタクと呼ぶようだ。これも時代の変化か。

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