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俺はテンプレが嫌いだ。大嫌いだ。

作者: 陽乃優一

 ちょっと試してみたいことがあったので、さくっと書いてみました。

 俺は、テンプレが嫌いだ。巷に溢れるラノベでのそれは特に。何がチートだ。何がハーレムだ。

 じゃあ読むなって? 期待したいんだよ! そのテンプレを覆してくれる、熱い作品を!

 俺には文才がない。だから、探すしかない。探して探して、そしてようやく…!


「すみません、手違いであなたを死なせてしまいました。同じ世界では生き返らせることが(略)」

「テンプレかよ!?」


 奇跡的に蘇生したとかでもいいじゃんか! なんだよ、なんでダメなんだよ! 神だろ!?


「あなたにチート能力をいくつか付与しました。剣と魔法の異世界でも問題なく(略)」


 チートなんかいらねえ! 自力で生き延びてやる! 

 テンプレなんて、クソくらえー!!



 そして、不本意にも森の中で倒れていた俺は、身に着けていた装備やら格好やらを見てorzした。


「こんな、いかにも剣と魔法の世界のテンプレの…くそう、くそうくそうくそう!」


 しかし、更に不本意にも、早速ゴブリンの群れと遭遇した。

 いや、ここまでだ! こんなテンプレまみれに負けるかよ!


「チート能力なんて、ぜってー使わねー! ナニかを感じるが無視だ無視! うおおおお!」


 くぎぇー!

 がっ、がっ、がきっ!

 があーっ…


「はあ、はあ、はあ…。なんとかナニかを耐えて、拾った木の枝だけで撲殺できた…」


 人型生物を初めて殺してガクブル? そんなテンプレ感情は俺にはない! 遠慮なく何匹も倒す。

 それよりも、実は無意識に身体強化魔法を使ってたとかいうテンプレはないよな…うん、ないない。


 とりあえず、ゴブリンの体から魔石みたいなものを取り出し、ポケットに入れる。

 普通のポケットだぞ? 無限収納魔法やらアイテムボックスやらとかいうテンプレではない!


「とにかく、街に行こう…」


 道中、盗賊に襲われていた貴族一行らしき馬車に遭遇したが、無視して遠回りした。

 罪悪感? なんとでも言え。俺はテンプレが嫌いだ。大嫌いだ。



 ようやくたどり着いた街に入ろうとしたら、門番に止められた。


「身分証はないのか? 怪しい奴め! こっちに来い!」

「これで、なんとか…」


 森で手に入れた魔石をひとつ、門番に握らせる。そうしたら、すんなり通してくれた。

 偉い人を助けて信用を得るとか、元の世界の雑貨を高く売るとかいうテンプレは要らんのだよ。


 街の冒険者ギルドに入り、冒険者登録をする。


「おら、この紙に名前を書け。サインを兼ねてるから代筆はしねえぞ」


 受付は、いかついおっさんだった。いいねいいね、テンプレじゃない。

 ギルドカードは問題なく発行される。登録料も魔石で払う。チート入手の金貨とかではない!


「よし、宿代と装備代を稼ぐぞ!」


 入ってきた門とは逆の方向の門から街を出て、反対側の森に出かける。

 なぜ反対側かって? 門番と顔なじみになるとかいうテンプレを回避するためだよ!


 森に入り、草でしかけた罠でコケたゴブリンを、背後から襲って倒す。卑怯バンザイ!

 またいくつも魔石を稼ぎ、街のギルドに戻る。


「税金を差し引いて、これくらいだな。ほれ、報酬だ」


 一週間分の宿代と初心者用装備のレンタル代になった。いいねえ、レンタルってとこが特に。


 たたたっ


「おい、領主様と御息女が盗賊に襲われたってよ!」

「なんだと!? 殺されちまったのか!?」

「いや、一命はとりとめたらしい。だけど、護衛が全員盗賊と相討ちで瀕死の重体らしい」


 そっかー、それは残念だったねー。まあ、盗賊倒したし、懸賞金で神官による回復とかできるよな。

 え? お前助けることできたんじゃないかって? 何言ってんの、俺は神の使徒とかじゃないんだよ。


 受付でレンタル装備を手に入れた俺は、そんな騒ぎを無視してギルド近くの宿に向かった。



「いらっしゃいませー!」

「チェンジで」


 ネコ耳もふもふ獣人な看板娘? 要らん。



 市場近くの宿に入り直した。


「ひとりかい? ほれ、鍵だよ。晩飯は別料金だからね」


 愛想のない、ふくよかなおばちゃんが対応した。うむ、リアリティあふれていていいね。

 ちなみに、別料金の晩飯の味は可もなく不可もなく。この、すぐ飽きが来そうなスープがなかなか。


 部屋の固いベッドで横になる。野宿よりはマシだよな!


 おやすみー。

 明日もテンプレを回避できるといいな。



 異世界転移してから、はや数週間。


 ギルドのクエストを順調にこなし、装備も自前で購入したものになった。

 今では俺も、いっぱしの冒険者だ。テンプレじゃないぞ? たとえば、こんな感じだ。


「おいおい、ギルドはボウズみたいなのが来るところじゃねえぞ? しかも、女はべらせやがって」

「…ウザい」

「てめえ、なめてんのか! 表に出ろ、教育してやる!」


 ドガッ

 ガキッ

 ドサッ


「ごほっ…な、なんで…」

「けっ。これに懲りたら、もうイキがるんじゃねえ! 女共も解散させろ!」

「なぜ、絶対防御スキルが効かない…!?」


 そりゃあ、満を持して転移特典の相殺スキルを使ったからな!

 『鑑定』で見たが、こいつも転移者だった。チートでイケメンとかテンプレにも程があるわ!


「おい! 初心者に絡むとか、冒険者として恥ずかしくないのか!」

「あれあれー、ギルドは冒険者の間のトラブルには口を出さないんじゃ? ギルマスさんよー」

「そ、それは…」


 ちなみに俺は、同じく『鑑定』を使ってギルマスの弱みを握りまくっている。

 『王都のギルド本部に伝えたら、どうなるかなあ?』という脅しも、既にしている。

 証拠の品々もアイテムボックスに入っている。魔物の死体や食料とかは入れてないがな!


「御主人様になんてことを! 私が相手になります!」

「エルフな奴隷とかいうテンプレの塊に用はねえ! 『転送』!!」

「きゃっ!?」


 その場からふっと消える、御主人様(笑)の奴隷少女。今頃は、エルフの里にいるだろう。

 田舎娘が都会に憧れるとかテンプレなことするから、盗賊にさらわれて奴隷堕ちするんだよ!


「そんな…御主人様は、魔王討伐の命を神託で…」

「魔王だと!? そんなテンプレな存在は特に要らねえ! おい、そいつどこにいるんだ!」


 御主人様(仮)にもうひとり付いていた聖女っぽい女の言葉を聞き、俺は決意した。

 さっくりいこう、そうしよう。俺は、テンプレが嫌いだ。大嫌いだ。



 そびえ立つ、魔王城。

 その城を、少し離れた丘の上から眺める俺。


「お前らー、退避したかー」

「し、しましたが…」

「じゃあ、いくぞー。『廃墟の城』!」


 ふっ


 …ひゅるるるる


 ドゴオオオオオオオオオオオ!


 ぱらぱら…


「あー、もうちょっとか。次、いくぞー!」

「は、はあ…」

「『接収した四天王の砦』!!」


 ふっ


 …ひょおおおおお


 ガシャアアアアアアアアアッ!!


「もう、いっか。司令官、あとよろしくー」

「ぜ、全軍突撃!!」


 うおおおおおおおおおお!


 ドドドドドドドドドドッ


 よし、もう俺の出番は必要ないな。あとは、魔王討伐連合軍とやらに任せるか。

 無限収納魔法使って城や砦を落とすとか、変に噂が広まると面倒だからな。撤収撤収。



 そして俺は、今日も冒険者稼業を続ける。もちろん、テンプレではない。


「おら、もっと腰を入れて薬草を探せ!」

「いやあの、探索魔法があれば簡単に…」

「そんなテンプレは俺が封印した!」


 魔王を除去した後もひっついていた聖女とやらを孤児院に放り込み、御主人様(旧)をこき使う。

 ちなみに、全てのスキルを封印しても、イケメンはイケメンのままだった。なんというテンプレ。

 とりあえず、そんなイケメンテンプレは無視して薬草採取に精を出させた。


「あと数時間も採取すれば、今晩の飯と宿代くらいにはなる!俺も最初はそれもやっていたんだよ!」

「うう…元の世界のブラック企業から、ようやく抜け出せたと思ったのに…」

「そんなテンプレは要らねえ!」


 俺はテンプレが嫌いだ。大嫌いだ。


 たとえ、元の世界で適当に買った宝くじでウン十億円手に入れるほど幸運だったとしても!

 たとえ、転移後に性転換して、ビキニアーマーが似合う超絶美少女になっていたとしても!

 たとえ、審判とやらを下しに来た神々を返り討ちにして、神界を制圧済みだったとしても!


「(ぼそっ)テンプレ主人公…」

「やかましい!!」

 あらすじにも書きましたが、作者はテンプレ大好物です。チート&超展開最高。

 ところで、今頃知ったんですが、文章が続く『!』や『?』の後には全角空白を入れるものなんですね。ずっと気づかなかった…。

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