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第八話 アニメ制作部は作れませんでした



「ということで愛理、俺はアニメ制作部を作ろうと思う」



 愛理が仕事の合間でも俺のアニメ制作の為の原作作りに参加してくれることになったことで、環境を整えたいと思ったのだ。

 俺が一人でアニメを作った時は自分の小遣いなどを費やし、ものによっては代用品などで済まして原作を書き絵を描いていた。

 いわゆるプロがアニメを作るような環境ではまるでなく、低クオリティの糞アニメが出来上がった要因の一つに違いなかった。


「いいんじゃない? 毎回参加出来るか分かんないけど、私も部員になるよ」

「助かる!」


 これで俺と愛理で、部員候補は二人。

 同好会として認められるにはあと一人、部活動として認められる為に必要なのはあと三人だ。


「うーむ、最低でもあと一人か……誰か入ってくれる人いるかな」


 ライトノベルやマンガにありがちな、初期の部員集めに難航する経験を実際にすることとなろうとは。

 残念ながら俺はそこまで交友関係が広いというわけではない、中学時代の男友達も体育会系クラスで部活も決まっていることだとう。


「アニメーターの岩舘とか北金ヶ沢とか椿山とかが部員になってくれると近道なんだけどな……」

「チラッ」


 スケジュールが常にひっ迫したアニメ業界で働く上に学生もする三人に余裕はないだろうしなあ。

 昼休みにも作監作業とかコンテ作業してるし……マジで時間無いんだな。


 それにアニメの前に原作を作らなければならない、おおよそ本になる程度には仕上げないといけないと思っていた。

 それならば――


「俺が原作を書く上では、現役ライトノベル作家の東とかも入ってくれるとなあ」

「チラッチラッ」


 あの中二病女子作家の作品は何作か読んだことはあるものの、超速筆な上に見た目と裏腹に文章はかなり上手くて驚いた。

 しかし何作も色々な出版社から作品を出している割には、いまいち売れ線でないようで数巻で完結する作品が多い印象だった。

 文章を書くコツとかご教授願いたいところだが……


「あー、妹が女子高生ならなああああ! 中学二年生だからなああああああああああ」

「チラァッチラァッ」

「ねえシロー、さっきからものすっごいアピールしてる変人がいるんだけど反応してあげたら?」


 …………いや気づいてはいたんだよ。

 でもなー、確かに生き返らせてくれてやり直しの機会与えてもらってありがたいのは確かだ。

 しかしそもそもアンパンの袋を落したことが俺の死因に直結していると自白もしていて手放しに感謝もしきれない。

 そんな彼女は――


「アイがいるじゃない!」


 松神アイ、自称『神』の能力を持ち、実際に神っぽい能力を発揮した銀髪で結構に巨乳な女子生徒である。


「あー、うん。アイも入ってくれるのか」

「ちょっ! そこの滑り台幼馴染に対してアイへの反応淡泊じゃない!?」

「す、滑り台……?」


 よかったな愛理、その滑り台のアイが言っている意図が分からなくて。

 たぶん分かったら怒るだろうから……。


「いやだって、アイって何か出来ることあるのか」

「癒し……かな」


 少なくとも俺は癒される気がしない。


「ところでシロー、松神とそんな仲良かったっけ? それに名前呼びって……」

「それはだな――」

「こう見えてもアイ、シロー君の未来の花嫁だからねっ♪」


 こ、こいつ!?


「な、ななななななな何言ってんのよこいつ! どういうことか聞かせなさいよシロオオオオオ」

「な、ななななななななんかこじらせてるんだよよよよよよよよよ」


 愛理に肩をガックンガックン揺らされて絶叫アトラクションもビックリなほどの前後動作、吐いちゃうぞ。


「まあでもアイが本妻なら、二番目三番目とか全然オッケーだけどね……」

「ど、どういう意味よ?」

「実はイラストを見せることを口実にシロー君と話せることが嬉しい幼馴染ちゃんのことだよ?」

「は、はあああああああああああああ!? ち、違うし! 売り上げの為だから! 勘違いしないでよねっ!」


 完璧なツンデレがさく裂したで候。


「ま、とにかくシロー君と幼馴染ちゃんの仲間に入れてよ。まぁ~多少のイチャイチャも見てみぬフリしてあ・げ・る」

「イチャイチャってなによ! なんなのよこの女、シロー説明しなさいよおおおおおおおおお」

「俺も知らねえよおおおおおおおおおおおおおおお」


 胃の中をリミックスされながらも、このアイの参加で一応の同好会人数には達したのだった。





「無理です」

「どうしてですか!?」


 放課後職員室を訪れ担任の若ハゲ先生に同好会を作りたい旨を伝えると、そんな非情な言葉が返ってきた。


「いやー、同好会は認められるんだけど……もう部室が一杯だし、どうしても同好会よりも部の方が優先されるからね」


 この学校は文系・理系・体育会系、それぞれの特性を含んだ部活動が数多く存在している。

 文系でメジャーなものなら料理部・手芸部・美術部だろうか。

 理系だと科学部・植物部・発電部……発電部ってがなんなのかは分からない。

 体育会系では野球・サッカー・ボクシング・ストライド……ストライドが何かも分からないが、耳に残っていたので。


「そこをなんとか!」

「いやそうは言ってもねえ、似たような現代視覚文化研究会があるからね……」


 げんしけ……なんでもない。


「とにかく無理です諦めてください」


 そうして俺のアニメ制作への夢は終わってしまった。

当作品はスポンサーの撤退(読者数の少なさ)、監督の降板(作者のモチベーションダウン)、制作会社の倒産(特に意味はなく)により打ち切りとなりました

ここまでのご視聴ありがとうございました

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