後編1
お互いの唇がはなれ、私は呆然と彼を見た。今さっき起きたことに愕然と驚きと怒りが隠せなかった。私は思いっきり彼の頬を叩いた。パンっと鈍い音が室内に響いた。だが、私を見た彼は蔓延の笑で抱きついてきた。この子は狂っているのではないのか...そんな恐怖に体が震えた。身長は、私より高く1年生の割には体が出来上がっており、強く抱きつかれているせいか全身が痛い。逆に私は今彼の顔が見えない。全く身に覚えのない男にこんな事されているのだ、恐怖で体の震えがとまらず瞳から涙がこぼれ落ちた。そんな私を見て動揺したのか、彼は私の拘束をときこう言ったのだ。「姉さん...」と、信じられない言葉だった。嘘でもそんな言葉を発しないで欲しかった。その言葉は一生、私にとって無縁で残酷な言葉。
「そんなはずない。」
私は真っ先に否定した。彼は私とは比べられないくらい頭がいいのだ。そんな彼が、何処にでもある公立高校に入ってくるはずがないと一生懸命に頭の中で否定する。彼は私の事なんて覚えてるはずがないのだ、いや今頃忘れ去っているかもしれない。彼にはずっと嫌われていると自覚があったからだ。そんな私に気づいたのか彼はまた話だした。
「最初、父さんに連れられて亜子さんとそして...あんたにあった、7年前にな。」
私は彼の発言に驚き、そして確信したのだ。気づいていなかったと言ったら嘘になる。少しだけ、前の面影があった。ただ、似ていると思ったがそれはただ似ているだけで私の勘違いだと納得したかったのだろう。いや、そうであって欲しかったのだろか。私をしっかりと見すえた彼は、無愛想に顔を逸らした。あの時の、結城の顔だ。もう7年も前の事だから、成長して幼い面影がなくなり、男の人の顔になっていた。だが今、ここにいる彼は紛れもなく私の弟だった人。
「なんで、ここにいんのよ。」
私な皮肉げに彼を見た。なんて、素直じゃない姉だろう自分でも自分の性格を疑うほど出てきた言葉に驚いた。普通なら今の行為を水に流して再開を喜ぶだろうか?だが、私は彼の行為を許せなかった。いくら、元姉弟でも。今の彼は、姉をみて馬鹿にでもしにきたのだろうか、確か弟はエスカレート制のはずだ。今頃名門校のエリート候補であるにも関わらず今ここの新入生である彼には皆目検討もつかった。
「亜子さんに勤め先聞いて、あんたに会いに来た。」
弟はまたソファにどさりと座り足組をして当然だろう何を言ってるんだという顔を私に向けた。何を言ってるんだと言いたいのはこっちのセリフだ。それよりも、うちの母である亜子が関わっているとはろくな事にならない。結城と母は家族関係になった時、仲が良かった。だから、今も母と連絡を取っているのは可笑しくはないのだが問題なのは何故私の事を聞いたのかだ。一緒に生活はしたが弟とはろくな思い出なんてない。私が覚えている中で一番関わったのは結城が病気の時、看病した時のみのはずだ。そんな、仲良くもない姉と会って何がしたいのかさっぱりだ。私は負けじと教卓の椅子に座り冷めかけたコーヒーに手を掛ける。1口飲んで、彼の様子を伺う。私は、日誌に取り掛かる素振りを見せ「用がないなら返りなさい」と溜息をついた。「用ならあるからいるんだろ。それ、終わるの待っててやるから。」待たなくていいと、振り返るが彼にはここに居座るつもりであろう鞄から本を取り出し読書をしだす。いきなり押しかけてきた弟に戸惑いつつあるが、目の前の日誌を終わらせない限り今日は帰れない。私は急いでペンを走らせる。そんな私を弟がジッと見つめているなんて気づきもしない夕暮れ時。キーンコーンカーンコーン。鈍いチャイム音が教室内に響き渡る。午後6時を示す鐘は教室内にいる生徒に帰宅を促す。それにしても、さっきの登場といいかなり強引だった弟に内心焦ったが、前よりはちゃんと会話が出来た。いつも顔を逸らされていたのにちゃんと顔を見てくれた。これなら、弟と上手くやっていけるかなと感じたが、いや待って…生徒とキスしちゃってるよね!?!?!?しかも、元弟と…戻りつつある思考回路がやっと上手く回ってきてさっきの出来事を思い出し1人であたふたとこれからの事を考えてたいたが、そんな私の様子をお構い無しに弟はソファで寝ている。冷めたコーヒーを無理やり飲み干し、誰も見てないことを祈って彼を見据えた。
これからどうなるんだろ、とりあえず母親を詳しく絞らんとなと考えて私は彼を起こした。
土曜日更新できません!
日曜日頑張ります!
ラストスパート、頑張ります。
よろしくお願いします