表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

釜上海途 2時間目

自習で盛り上がっても

監視の先生がいるのがほとんどです

 「自習、か」


黒板には「自習」と大きく書かれているだけで、あとはなにも無かった。

皆はなにも無かったように振舞っていた。

もしかしたら、気付いていないのかもしれない。


 隣の席の女子__栄歩美がいないことを。

殆ど教室で、僕の隣の席で一日を過ごしているはずなのだけれど、

初めて彼女の椅子を全て目にした気がする。

いや、あの時は席を立っていたから、二回目か。

でも、あの時以上に僕は焦っていた。


 見てしまった。


つい5分前、

彼女が倒れてしまった所を。


そして


そして、

彼女は立ち上がり、一人の女子の襟をつかんで

去って行ったところを。


思い出すだけで汗が出る。背筋がこわばる。


僕を見た彼女の眼は光のあるようでない水色だった。

毛先は外へ丸まり、そこも色が抜けて白くなっている。


それはもう、同じ人間だと信じたくない雰囲気を持っていた。

体温なんて持ってそうに無かった。


「君は……●▲■」


全て聞き取れていたら

僕はもっと恐れたかもしれないし、

少しは安心したかもしれない。


つかまれた女子もまた、クラスメートだった。

冨士原愛菜__同じ班の人だった。

涙を浮かべ、大きく口を開けていたが、声は聞こえなかった。

口の動きから、「たすけて、たすけて、たすけて……かいとくん、たすけて!」

と、いっていたような、気がした。

僕は、立っていることしかできなかった。

怖くて、悔しかった。


 「海渡くんって、ビビり?前から思っていたんだけれど。」

「え、え?べ、別にビビりじゃないけど!ってなんで今」

いきなり後ろの結人くんから話しかけられて、背筋がビクッと震えた。

なんて質問だ。

「ふと思っただけ」

「びっくりした……」

相変わらず思っているところの読めないふわふわした話し方で、話を続ける。

「これって、愛菜さんと歩美さんの件でこうなってるんだよね」

「多分」

「歩美さんがやらかすなんて、珍しいね」

「うん」

「愛菜さんだってやらかすような人じゃないよね」

「うん」

「そもそも自習になるほどのことって今まで一度もなかったよね」

「うん」

「んでね……」

視線が下がり、少し僕に近づく。


「海渡くん、知ってるんでしょ?」


「え、え!?何を!?」

「何か」

真剣な顔で見てくる。エスパーか何かなのだろうか。

見たけども。見たけども僕は何も知らない。


「何を見たの?

ビビりじゃないなら、教えてよ

んで、行こうよ」


「どこに!?何をしに!?」

「ん?


歩美さんと愛菜さんの行った所に、

肝試しをしに」


「ふざけんな!」

結人くんは、真剣な顔で見てくる。



 今日覚えたこと。

僕はビビりで単純。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ