栄 歩微 4時間目
給食の時間になると
どういうわけだか
「やったー!」ってなりますよね
小学生にとって、至福の時間。
一息つけて、なんてことない会話を交わせて、なんてことが確実にできる時間は、あの時しかない。
給食の時間。
食べ物は人を笑顔にさせる。そんな時間__
の、はずなのだ。実際、教室は笑い声と話し声で教室は明るい色に染められている。
たった一人の空間を除いては。
「ほんと、今日の給食好きなものばっかで、いい、わ……」
「……」
真顔で牛乳にストローをさし、真顔で飲む。「いただきます」からここまで、表情は変わらない。
いや、席替えを行ってから、一貫して表情は変化しない。眉一つ動かない。
3人はそろって眉が垂れ下がり、重い空気に押しつぶされそうになる。
「え、えっと、栄さんって、す、好きな食べ物とか、ある?」
それを打ち破ったのは、海渡だった。
歩美はストローから唇を話し、少し下を向いてから海渡を見た。
「……抹茶アイス」
自己紹介から約二週間ぶりの声だった。
「あ、抹茶アイスか!うん、うん、おいしいよね、ていうか、なんか、栄さんらしいよ、大人っぽい、し」
台本がどこかにあるような話し方に、より空気が重くなったのに対し、「あ、あと」と呟いた。少しだけ眉が上がった気がする。
「あと、なに?」
「あと___鰹節、好き」
空気が香ばしくなった。
それは袋詰めされていたフランスパンを結人が開けたからなのか、
それとも他に何か理由があったのかは誰も知らない。
B5のスケッチブックには、どういうわけだか鰹節が挟まっていた。
私事で大変恐縮ですが、学業に専念するため4月まで今作の更新が月1程度に落ち込みます。
本当にすみません。
また余裕ができ次第twitterや後書きでご報告させていただきます。