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釜上海途 5時間目

関西弁は乱暴なように見えますが関西の人はとっても暖かいです。

 ドアの隙間から風が吹いてくる。

蛍光灯の鈍い光に目が慣れてくると、結人くんの落ち着いた、それでいて真剣な表情が見える。その視線の先には__

「はじめまして!愛菜ちゃんのお友達ー!」

あの人が立っていた。

水色の目、白く抜けた髪。

彼女はねっとりとした笑みを浮かべて、僕たちの方へ向き直った。

結人くんは表情を少し柔らかくして問いかける。

「はじめまして。僕は愛菜さんの友達で、結人っていうんだよ。あなたは?」

「みのり!栄実里だよ!」

「そう。こっちは海渡くん。あなたは歩美さんの友達?」

「うん!大親友!あっ、それでね……」

にかっと不気味な笑みを浮かべて、2歩窓側へ歩いた。

「愛菜ちゃんは元気だから安心して!」

じゃじゃーんと言いながら人影の方へ指を向ける。

そこには、

「来ないでって……来ないでって言ったはずなのに!なんで来てるのよ!」

体育座りの形の上から何重にもアクリル糸でぐるぐる巻きにされた愛菜さんがいた。顔はもうぐちゃぐちゃだった。肌に細い糸が食い込んでいるのにすら気に留めず、叫んだ。

「どうせあんたたちじゃ何にもできないんでしょ!そんなの誰だって分かる!あんたたちなんてあてにしてない!これ以上巻き込まれてほしくなかったのに!」

僕らだってわかってるよ。

誰だってわかるよ。そんなこと。

でもさ。……でもさ。

「友達を助けたくなるんは、頭のおかしい事なんか!?何の計画が立てられへんかったって、立ち向かっていきたくなるんはおかしいんか!?そうじゃないんやったら……


俺とお前は、友達じゃなかったんか!?」

「海渡、くん?」どんな表情で僕を見たかなんて知らない。

ただ、今、伝えなきゃって思った。

「実里!あんたは歩美さんの友達なんやろ!そうなんやったら、なんで歩美さんの友達をこんなことにするんや!俺にはわからへん……

俺はあの二人に何があったかなんて知らん、どうすればええかなんて知らん、でもな、これだけは知っとるで!」


息を思いっきり吸い込んだ。


「俺はなあ、愛菜さんと歩美さんと結人くんの友達や!」


「何、言って、るの……」

立ち尽くしていた実里にいつの間にか結人くんが近づき、

「辛かったんだね、分かるよ、でも楽になるからね。僕らはちゃんと友達のはずだからね」

と言って、実里の背中を撫でた。



今日覚えたこと。

正直、何やったか覚えてない。

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