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釜上海途 3時間目

国語辞典を開くだけでも新しいことが知れて楽しいですよね

 時計は13時を指している。

窓の外は桜の花びらが散りきってピンクの絨毯のように道を埋め尽くし、心地よい日の光が教室の中へと差し込む。


僕と結人くんは机の上にノートを広げ、あれやこれやと考えていた。

「先生たちがここまでしているってことは、2人は見つかっていなくて、かつやばいと思うんだよね」

鉛筆をゆらゆらと動かしながら、ノートに目を落とす。

下手ながらに校舎の地図を描き、僕らのいる北校舎と中央校舎の渡り廊下のど真ん中にバツ印を入れる。

「ここが最後に海渡くんが見たところ。んで、歩美さんと愛菜さんは中央校舎の方に行ったんでしょ?」

すうっと中央校舎の方へ線を引く。

「うん、で、ええっと、1階の方へ降りて行ったよ」

バツ印と線を消し、一番西からまたバツをつける。

「ここの学校、校舎内には監視カメラ付いてるんだよね。で、1階についてるのは……

一番西、階段を降りたところの角から東側に向けて。

その反対側から西側に向けて。

北校舎と南校舎も同じ。んで、ここの学校の校舎は一直線にできてるから、殆どこれですべて見渡せるってことなんだよね」

隅っこに丸をつけ、カメラが映す範囲を囲む。

本当だ。廊下はもちろん、階段の反対側の壁についているから階段まで見渡せる。

あれ、でも、それじゃあすぐ見つかるんじゃないのか?

「監視カメラがあるなら、それを使えばすぐ見つかるんじゃ」

「でもね、」鉛筆の先をある一点に向けて刺した。


「ここ、渡り廊下とそれより東にある中庭は、監視カメラに映らないんだよね」


刺したところは、本当に囲まれていなかった。

この学校はここら辺でも指折りの大きな私立校で、僕らがいる初等部に加え、中等部と高等部がある。

そして、部活動用の建物が一棟、あったと思う。

「もしかして、あの建物って」

「限られた時間しか使わないだろうから、まあカメラはついていないんじゃない?朝から活動しているところもあるから鍵は開いているだろうね」


「……美術室」

「うん、歩美さんのことだから……そこだと思うよ

ただ、あの部屋には美術で使うカッターナイフやのこぎり、紐、金づちとか危ないものがいっぱいあるから、本当にそこだったら早く行った方がいいよね」

「先生に見つかったらそれこそ暴走しちゃいそうだよ……」


 怖い。恐い。

でも、最悪のことから逃れられることができたら。

そうすることができたら、もしかしたら僕は

少しだけ、ほんの少しだけ強くなれるかもしれない。


歩美さんの机の上には、一冊のスケッチブックが置かれている。

怖くて誰も触らず、誰ものぞかないので何が描かれているかなんて誰も知らない。

ゆっくりとそれをとり、ノートの上でゆっくりと、本当にゆっくりと大切に開いた。



 今日覚えたこと。

僕はなんにも知らない。

けれど、知ろうとすることはできる。

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